2話-3
「雪溶かし競争」
舞咲さんがめくったカードには、そう書かれていた。
「これは……なんですかね」チョコが呆れた表情になる。確かに、よく分からないな。カードを握っている舞咲さんの方を見ても、彼女は全く動じていない。おどおどしてた先程と違い、まるで運命を受け入れたかの様にしっかりとした視線でカードを見ている。
古都会長が首を伸ばしてこちらを覗いてきた。「なんだ……ほぉ、『雪溶かし競争』か。これは面白くなりそうだな」
「当たりですか?」私に勝てるチャンスはあるのかどうか。
「大当たりだ。勝負の内容は、こうだ。雪の塊をそれぞれに用意して、それをどんな手を使っても構わないので先に溶かしたものが勝利だ。──君たち、雪国に行ったことは?」
「ありません。地元も故郷も籍もこちらです」私。
「田舎が秋田です。」チョコ。
「スキーで何回かは。ですが、住んだことはありません」舞咲さん。
「そうか。雪国の雪は強烈でな。一日雪かきを怠ると、翌日もう溶けない。玄関から出られなくなる」
東京では雪といえばロマンチックの代名詞で、初雪といえば尚更だ。しかも、雪自体年に数回降るか降らないかだ。時々テレビで映る映像に、大雪の中屋根に登って雪を降ろす人を見かけたり、玄関前で雪かきをする人を見かけたが、何故そんなに慌ててするのか分からなかった。そうか、雪かきを怠ると、玄関から出られなくなるのか。
「雪国は雪の対策に特化した作りになっている。信号は縦型が多く、除雪車が常に動き回り、場所によっては地面にパイプが通っており、パイプから湧き出る水の温度差で雪を溶かす。雪国の朝は雪かきから始まる。雪国の大変さを知る為に、俺が思いつきで考えた。どうだ、大当たりだろう」
私は開いた口が塞がらなかった。会長は今なんと云った?「もしかして、対戦内容って昔から決められているのではなく」
「生徒会の思いつきで内容を決定する。なので、その年その年でバラエティに富んだ性格になる。楽しいだろう?」
まるでクラス内で受けたからってプロの世界に持ち込んでみた、素人考えの漫才をお金を払って見せられた様な気分だった。研ぎ澄まされて精度を上げに上げた対戦方法ではなく、チラシの裏に殴り書きをしたようなお手軽な対戦方法だった。
(確かに、「障害物競走」の時から全然障害物じゃないじゃん、アスレチックじゃんと突っ込んだよ)私の生徒会に対する神聖な雰囲気がガラガラと音を立てて崩れ去った。




