↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱と呼ばれた〈氷雪士〉――その力は誰も知らない  作者: 鐘守偉俱
1章 最弱、冒険者になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/102

2章-15節 骸骨騎士団②

 一方で、俺も二体を相手取っていた。先ほどの無数の骸骨兵を相手にしたときのように揉みくちゃにはされないが、肌がひりつく緊張感がある。互いにゆっくりと円を描きながら間合いをはかる。

 骸骨兵と比べ、騎士の動きは機敏で隙が無い。兵はほとんど亡者で思考能力が無かったが、騎士は頭が回るらしい。

 槍と長剣の二体が油断なく、だが徐々に間合いを縮めながら、必殺の時を待っている。奴らも俺の隙を窺っているのだろう。眼窩の奥にある鬼火が収束している。

 静かな攻防。

 先ほどの氷棘鋼爆(クロセルス・コンボラ)によって凍りついた石畳が、薄く白い蒸気をあげるのみだ。だが、このままでは追いつめられる。俺から先に仕掛けるしかない。

 納刀からの接近。槍の騎士が間合いを詰めさせまいと一歩を踏み出し得物を薙いだが、そこに高速で生え伸びた氷が軌道を阻んだ。無詠唱で発動した氷刻厖掌(クロセルス・イヤッド)が槍を握り込んでいる。

 体勢を低く、刀を振り抜く。が、槍の骸骨騎士は得物を手放して後ろへと避けていた。合わせて、俺の背後から迫る長剣の騎士。だが、俯瞰視の魔眼によって見えている。

 氷刻厖掌(クロセルス・イヤッド)が奪い取った槍を振り回す。その動作に技量は全くないが、魔力出力を上げるだけで凄まじい膂力を発揮する。予想外の攻撃にあった長剣の騎士は力押しの槍に鎖骨を砕かれ、右腕もへし折れた。甚大な損傷に遁走を図った長剣騎士だったが、その背から二体目の氷刻厖掌が伸び、その胴を握り込む。同時に、俺自身は正面に向けて突進。槍を失い、盾を構える骸骨騎士を、その盾ごと斬りつける。魔力を通したガウフの刃は鋼鉄の盾などないもののように切り裂く。鳥肌が立つほどの切れ味。

 盾ごと尺骨が切り落とされた骸骨騎士はたじろいでいた。眼窩の鬼火が激しく揺めき明滅している。――俺自身驚きなのだから、相手の衝撃たるや想像を絶する。悪いが、混乱のうちに始末をつけさせてもらおう。

 刀を振り抜いた姿勢から大きく踏み出し、右腕を伸ばす。必殺の突きが骸骨の顎を抜け、後頭部から飛び出した。鬼火が消え、頭部が落ちると同時に魔石が石畳を転がった。

 刀を鞘に収め、もう一体の骸骨騎士を握り込んでいた氷刻厖掌に魔力を送る。骨は徐々に掌の内側に折り込まれ、やがて魔石となって消えた。


「さ、残りはあの二体ね」


 シアの言う通りだが、仲間がやられているのに一切手を出さなかったあの二体は不気味だ。

 片や、羽飾りのついた兜の骸骨騎士。長剣と盾を携え、眼窩には蒼い鬼火が静かに湛えられている。

 片や、鎧とマントを羽織った骸骨の指揮官。装備は腰の豪奢な鞘に収められた剣か。刀身は太く、しかし刃渡りは長くはない。特殊な形状、あるいは実戦用ではないのかもしれない。

 二体は君主と騎士長。あるいはそれに近い関係性なのだろう。物言わぬ屍の魔物だが、両者の間には信頼と自信が見て取れるようだった。


「二人でやってしまおう。あまり侮るのは危険だ」

「そうね。あっちもそのつもりみたいよ」


 騎士長が油断なく進み出て、君主が鷹揚な足取りで続く。どうやら俺たちを敵と認識したらしい。

 君主は腰の剣を抜いた。刀身はやはり短く太い。紫暗色の金属質。魔眼での材質判別は不明。だが並の物質でないことは分かった。

 武器としての性能は最低限で、むしろ触媒としての運用を想定しているのだろう。――それが分かったのは、刀身が黒色の輝きを発したと同時に、騎士長の剣盾鎧も同様に発光を始めたからだ。なんらかの魔法効果が付与されたらしいと知る。


「ネーヴが盾を両断したのを見ていたのね。物質強化や呪いの効果も付与されている。あの剣、掠っただけでも致命傷になると思った方がいいわ」


 魔眼に集中すると、剣に込められた魔法効果が看破され、視覚化できた。強靭化や硬質化、尖鋭化などの強化の他に【不死の呪い】という効果が確認できる。

 ……不死。一部の人間にとっては魅力的な響きのある言葉だが、攻撃に使ってくるとなると事情が違う。彼らの外見から考えて、骸骨の姿に堕とされることは目に見えている。その上で兵士として使われるのだろう。そんな転職は御免だ。

 シアに視線だけ向けると、蒼玉の瞳がこちらを見ていた。声に出さずとも通じ合っているという感覚。知覚が倍になったようにさえ思える。

 俺たちの意思は決まっていた。

 ――即ち、先手必勝!


「氷刻厖双(クロセルス・イエルス)!」


 先に発動した俺の魔法。氷棘鋼爆(クロセルス・コンボラ)によって辺りに広がった氷から巨腕が無数に生え伸びる。目的は拘束。二体の骸骨に向かって一斉に襲いかかるが、彼らも黙ってはいない。黒色光を放つ二つの剣が、魔力で強化された氷を次々に斬り伏せる。――拘束は不可能か。だが、退路は塞いだ。


「雷磁錬破砲《フルフェルデ・レガーノ》!」


 必殺の詠唱が耳に届く。

 一度目よりも速い発動。電磁加速された金属槍を砲弾とする超音速の砲撃魔法。まともに受けて無事なものはいないだろう。

 放たれた一発の砲弾は空気の壁を易々と切り裂き、その衝撃波によって中途にあった氷の腕たちも悉く蹂躙。一直線に骸骨騎士とその後ろの骸骨君主へと向かう。

 ――甲高い激突音。ついで、骸骨たちの遥か後方で爆煙が噴き上がる。


「逸らされたのか……!?」


 見れば、骸骨騎士長の盾がひしゃげている。音速を超えて飛来した弾体をあの盾で受け流したのだ。信じられない見切りに戦慄する。副次的に発生する空気の刃でも、黒色光の鎧には傷一つ付かず、骸骨たちは揺らぎもしない。


「あの盾、魔法攻撃を減衰するバフが掛かってるのかしら。弾体の金属槍は魔力で造ったものだから、そういうのに弱いのよね」


 吞気に頬をかいているが、その目には警戒の色が浮かんでいた。

 音速を超える運動エネルギーがあっても、それを伝える弾体そのものが消されてしまえば意味がない。それでも盾がひしゃげているのを見るに、減衰効果にも限界があるようだが。


「それじゃ、もう一発!」


 シアの正面に五つに連なった金属槍が浮かび上がる。骸骨たちはそれを視認して、さすがに五発は受け切れないと判断したのだろう。狙いを絞られないよう、左右に散る。――その瞬前、凍りついた床から生えた青白く輝く手が骸骨たちの足に纏わりついていた。無詠唱で放たれた氷刻厖双(クロセルス・イエルス)が、今度こそ二体を足止めする。せいぜい一瞬しか保たない拘束だが、今はそれで十分だ。


もし面白いと思っていただけたら、評価・感想・ブックマークをお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。