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Undream Undead≪死なない男は夢を見ない≫  作者: N-マイト
壱章 長閑なるは中世の
4/6

Hello New World

「昨夜はお楽しみでしたね」


「ッスーーー...」


新たな世界。

新たな星。

それは。新たなる旅立ちにして、俺の第二の人生の門出。


その最初のセリフは。そんな会話に消費された。


ええいクソ。

芋ジャージ女神のくせにあんなエロい顔するから!!


「最終的に”月”ちゃんも加わった3Pとか。初体験が女神二人とかたぶん前代未聞だよ。まあ私も初めてを人間に捧げた初めての神になっちゃったけど」


...月の女神は?


「あの子は一応バツイチってやつ。...まあ、もし会話する機会あっても聞かないで上げて。あの子も苦労してるから」


どうも結構ドロドロしてるらしい神様たちの事情。永劫触れたくねえ。


さて、今現在地だが。家の中である。


結構豪奢な造り...前の星基準で。黒ベース金などの装飾が施されたシックなデザインだが、ハイテク家具なんかも置いてあったりする。


中世と言っていたわりにはこんな現代的なものがあるのか...といえばそうでもない。いくつかある”持ち込み物”の一つがこれだった。


「これが...”拠点時空(ホーム)”ってことでいいのか」


「そだね。快適さは...持ってくるものを決めた後、もっかいアレしたからわかるでしょ?」


やかましいやい。

つか二回目に関してはお前が押し倒してきたじゃないか。


「いや思ったより相性よくてさー。まあおかげで本編開始冒頭から全裸なわけだけど」


おまけに臭い。時間いっぱい踊りやがって。

干乾びるかと思ったわ。お前に合うまで童貞だったんだぞこいつめ。


「まあ消臭は自動でやってくれるからシャワー浴びちゃおっか」



さっぱり。



「...さて、着替えも済ませたところで”外”に出てみよっか」


頷く。だが外に出る、といっても、この家の扉から外に出るわけではない。出ることもできるがな。しかしそれでは目的地にはたどり着かない。


出撃(ディスパッチ)!」


鍵言(キーワード)を唱えると。

俺は草原に立っていた。


つまりは、異次元にある拠点である。家、倉庫、修練場、そして研究所がそろった夢のマイホームだ。ホームとか言う規模じゃないが。


「おっけ、ちゃんと機能してるね」


「家から出るだけで”出撃”とか、ちっと引きこもり臭いがな...」


出る方は完全な音声認識だそうで、万が一にでも言い間違えないようにらしいから仕方ないが。


「んじゃ入ってみて」


拠点転送(ゲートオープン)


扉が出現する。中に入ると家の玄関。うむ。問題はなさそうだ。招き入れるときは俺の許可が必要で、出るときは勝手に出ていけ、と。


「”鍵”は配ることもできるけどね。今は君と私だけが鍵を持ってる感じ」


訂正。”鍵”を持っているヤツの許可が必要と。”鍵”といっても非実体だが。


「んじゃ、武器とか持ってきたら早速いこっか。新たなる冒険といえば、街に行くものだからね」


ふんす、と鼻を鳴らす。ナイトドレスに武器は似合わんだろうが...結局一着増えただけで芋ジャージ以外はこれしかないのだから仕方がない。


「ああ。...それで」


ふと思い出し。俺は女神を呼び止めた。


「なぁに?」


なんか、急に喋りが”女”になった気がする女神に俺は問う。


「名前なんだ?」


...。

........。

..................。


「アッ忘れてた」


おいこら。


「お前依り代に入ったら名前教えるとか言ってたじゃねえか」


「だって神界隈では名前とか使わないんだもん」


まあしょうがないか。


「改めまして、自己紹介だね。私の真名(なまえ)は”アシュリリム”。リリムちゃんって呼んでね!」


「アシュリリム、ね。ヲタクヒキニートにしちゃ可愛らしい名前じゃないか」


皮肉ったつもりがえへへと照れよるので、少々不貞腐れながら続ける。


「そういや、俺も名乗ってなかったな。...俺の名前は...名前は...あれ?」


思い出せない。


「あ、ごめん。言い忘れてた」


「まだなんかあったのかよ!駄女神って呼ぶぞ!」


「私髪青くないもん!...えっとね。前の名前はこっちじゃ使えないの」


何故。まあ前の名前に執着があるわけじゃないけども。


「なんていうか、住所変更みたいな。神々的には、名前には出身文明とかの情報も載るからね。一応はこっちの文明の所属になる以上、名前は変えてもらう必要があったんだ。...忘れてた」


ええ。そういうの早く言えよマジで...俺も悪いかもしれないな。ウン。ナニとは言わんが。


「今付けていいのか?」


「名無しだからね。自分でも付けられるよ」


「んじゃ...」


ふっと、思いついた名前を口にする。


「”アステリオス”。”アステリオス・ブリッツ”。それが俺の真名()だ」


「”星の稲妻”ってところかな?かっこいいじゃん」


「そうか?適当に語感で決めたから、意味とか分からんが」






「いやあ、長閑だねえ」


さく、さく。

草原の上を二人、のんびりと歩く。


ふわりと吹く風は爽やかで、長く見ていなかった自然を五感で味合わせてくれる。

ふわりと髪をかき上げるのはまさしく絶世の美女というべきか。まあ中身はちょっとアレだが。

視線に気づかれる前に逸らすと、ちょうどリリムも振り返った。


「先にこの世界についてレクチャーしておこう!チュートリアル妖精ってやつだね」


お前は妖精じゃなくて神だろうが。大分格下げだろそれ。


俺の内心の突っ込みもどこ吹く風、るんるんとスキップする。


「この世界は...前の世界と、そう変わらない...その認識でいいんだよな?」


「まあそうだね。林檎もなるしライオンもいるよ。この辺にはいないけど。というか、大体同じようにしか育たないよ。ちょっと種類が増えたり減ったりするくらい。...ああでも、今回は寿命の差がある程度大きくなるように調整してみたかな。アステリオス君...アッシュ君でいっか。アッシュ君がさみしくならないようにね」


調整、ね。

ああ、なんでも、俺は数万年以上寝ていたらしい。というのは二度目、押し倒される寸前に聞いた話だ。


主観ではちょっと昼寝して起きたらまた襲われたくらいの勢いだったが、あいつからしたら数万年単位の欲求不満だったというわけだ。それでもちょっと勘弁してほしいくらいだったが。この手のことナレーションで開示していいのかな...まいっか。


それくらいあれば生まれたばかりだった人類の、種族の調整くらいはお手の物というわけだ。


「エルフとか、獣人とかかな。君が知らないのは。ドワーフとかジャイアントはいたよね」


ああ。身長が1mちょっとの連中と3m以上ある連中な。わりと希少人種ではあったが、見ないほどではなかった。会うたびにビビるが。


「あ、魔物はヒト型でも意思はないから。人類判定じゃないよ。ゴブリンとかオークとかね」


そういうのもあるんだったな。


「まあ、基本はゲームでよくある感じだよ。冒険者ギルドとかね。レベル制もあるみたいだし」


「...どうやってんだ?」


「レベルというか...なんだろう。ある程度そういうの計れる魔術があるの」


前の世界では知らなかった魔術だな。もともとあったのか?


「ま、レベルとは言ってもいろいろな要素のレベルを出して、平均値で...みたいな。それもデジタルな数字で出るわけじゃないから大雑把な区分け。少年漫画的にいうと能力ランクみたいな?E(超ニガテ)~A(超スゴイ)...を数字でやるイメージでいいと思う」


まあ、大体わかった。


「あ、文字とか言葉は気にしないでいいよ。翻訳魔術が常に発動してる...みたいな感じになってるから」


そりゃ凄いな。リリムが発動してる感じなんだろうか。


「この辺は?...っつか、この星に名前はあるのか?」


「この辺は”オルディナ騎士国”の領地だね。一番長閑なところに落ちたはず。”最初の街”にふさわしいあたりにね。...ごめん、本体が縮尺小さすぎて困惑してる」


お前まさか惑星儀みて道案内してるんじゃないだろうな...?


「...ちょっと予定より遠いみたいだけど大丈夫でしょ。一応別の国...”レオリム王国”の属国に近い国だけど、政情は安定してる、と思う。ごめんこれは人間の尺度わかんないや。コロニーシミュ的なことを言うと割と民の幸福度は高いよ」


こいつ、いちいちゲームで例えてきやがるよな本当に。まあ、上位存在にとっちゃどっちも同じなんだろうけれども。


「ただまあ、わざわざ属国として別の国にしてるあたりは理由があるみたい。ここは騎士国の西側...王国に近い方なんだけど、東にある”大森林”ってとこからくる魔物の防波堤の役割をしてる感じ」


ふむ。大体はわかった。


「つまり、冒険者になって大森林でレベルを上げろと」


ピンポーン!とクイズ番組でよく聞く音がする。どっから出したその音。


「そゆことそゆこと。単純明快でしょ?私がいる以上、普通にはいかないだろうけど」


ギリシャ神話人生論だったか?ギリシャ神話が何かは知らないが。神に魅入られた英雄(ヒーロー)とか、まあ普通の進行は望むまい。


「人生長そうだからな。刺激があることはいいことかもしれん」


肩をすくめる。


「そう言ってくれると嬉しいかな。...っと、あと、この星は...この文明ではまだ名前ついてないね」


「え?...あー、天文学が発展してないとか?天丼がなんたらとかそれかそもそも平面だと思ってるとか?」


「歴史は詳しくなさそうだね、天動説だよ。...んーっと、そういうわけではないんだよねぇ」


んむむ、と唸るリリム。

そう、なのか?

確か中世はその天道総なんたらがどうたらとかいうのが席巻してたと聞いたんだが。


「この世界、技術の衰退があまり起きてないの。大体宗教が力を持つと科学系っていったん廃れるんだけどね。なんと魔法を使えないようにした星でもそうだったくらい。今回はかなり運がいい...というか珍しいかな。宗教の力は結構強いのに科学系の衰退が少ない。手が回らなくて宗教まわり弄ってないのに。...代わりに、発展もあまり早くはないけどね。天文学が例外なかんじ」


天文学は魔術との関わりも深いからな。発展がほかの科学系学問より早いのも仕方ない。


「だがその感じだとこの星が惑星ってことも判ってるんだろ。なんで名前つけないんだ」


「単純に”ついてないだけ”っぽい。ただ”惑星”っていえばこの星を指してる、みたいな」


なんだそれ不便だな。


「まー、君はそもそも異星人に当たるし、名前がないと面倒だよね。...そこで、実はこの星、名前あるんですよ~」


...今名前ついてないって言ってなかったか?

それとも神の間では名前があるとか?


...結論から言えば、この推測は半分正しくて、半分間違えていた、といったところだった。


「近くに昔文明があったんだよ。この星」


「...マジか」


「もともと使ったことのある星の近くで生命誕生の条件がそろうことって珍しいんだけどね...まああそこの人類滅んで何億年も立ってるからさもあらんというか。当時の人類、というか私の天使が驚いてひっくり返ってたよ。”俺の知ってるあの星は真っ赤だったのに”って」


見回す。うん、地平線までクソ緑だ。


「当時は星に落ちてなかった元素までいっぱいあるからね。ミスリルとか。ま、だから今はもう似つかないけど。この星の名前は...」


ゆっくりと。

リリムは腕を組んで...その名を告げた。


火星(Mars)。それがこの星の名前だよ」

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