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幕間:怪物を倒した後

 静寂は、すぐには消えなかった。


 空が明るくなってからも

 空気が元に戻ってからも


 誰もが「今、息をしていいのか」すら分からないままだった。


「……終わったのか?」


「……終わった……のか……」


 村は、ついさっきまで混乱と恐怖に飲み込まれていたはずなのに、今はまるで時間が止まったみたいに静かだった。


 何をすればいいのか、誰も思い出せないような空気。


 冒険者の一人が、その場に崩れ落ちた。


「俺たちは……生き残ったのか……?」


 別の男は、自分の腕や胸を見下ろしていた。まるでそこに傷があるはずだと信じているかのように。


「いや……こんな……ありえない……」


 警告を届けに来た男は、まだ震えていた。


「俺は見たんだ……村が、町が……一瞬で消えていくのを……」


 視線はどこにも定まらない。


 ただ恐怖だけが、記憶として焼き付いている。


「何も残らない……絶対に、何も残らないはずだった……」


 だが、そこにある現実は違っていた。


 家は崩れていない。


 人は生きている。


 風は静かで、空はただ青い。


 そして あの“怪物”は。


 まるで最初から存在しなかったかのように、跡形もなく消えていた。


「……あれ、あの子だ」


 誰かが呟いた。


 かすれるような声で、恐れと困惑が混じっていた。


「……あの女の子……」


 視線がゆっくりと集まっていく。


 まるで触れてはいけないものを見るように。


 スズメはそこにいた。


 しゃがみ込んでいる。


 手にはいつものほうき。


「……」


 彼女は何も気にしていない様子で、地面の埃を集めていた。


 小さな山を作り、それを整え、左右のバランスまで確認している。


 どこか几帳面で、異様なほど落ち着いていた。


「スズメ……?」


 母親が恐る恐る近づいた。


 声が少し震えている。


「さっきの……あれは、あなたが……?」


 スズメは動きを止めた。


 少しだけ考えるように首を傾げる。


「ゴミがありました」


 一瞬、場の空気が止まった。


「……ゴミ?」


「はい。環境が適切ではなかったので」


 そう言うと、彼女は再びほうきを動かし始める。


 まるで日常の続きのように。


「だから、掃除しました」


 誰もすぐには言葉を返せなかった。


 冒険者の一人が、乾いた笑いを漏らす。


 笑っているのに、まったく面白くはなさそうだった。


「……SSSランクって、こういう意味だったのか?」


 別の男は顔を覆った。


「ギルド全体が……何もできなかったのに……」


「……あの子が掃除しただけ?」


 沈黙。


「これ、報告しないとまずいだろ」


「報告って何をだよ!」


「俺に分かるわけないだろ!」


「子供だぞ?」


「異常だろ」


「いや……むしろ奇跡じゃないのか?」


 誰の言葉も、正解に届かなかった。


 傷ついた男が、じっとスズメを見つめていた。


 長い時間、瞬きもせずに。


「……本人、何も分かってないな」


「そこが一番怖いんだよ」


 遠くでは、ようやく人々の感情が崩れ始めていた。


 泣く者。


 笑い出す者。


 その場に座り込んで動けなくなる者。


 張り詰めていた糸が、ようやく切れ始めていた。


 家の中では、静かな日常が戻りつつあった。


「準備できました」


 スズメは最後の器をテーブルに並べた。


 すべてが均等に揃えられている。


 角度も位置も、まるで計算されたように正確だった。


「環境は正常です」


 そして両親を見た。


「座ってください」


 二人はすぐには動けなかった。


 まだ現実を飲み込めていない。


「スズメ……」


「はい」


 少し長い沈黙のあと、母親は小さく息を吐いた。


「……ありがとう」


 スズメはほんの少しだけ首を傾けた。


「どういたしまして」


 彼女にとっては、それだけのことだった。


 特別でも異常でもない。


 ただ、乱れたものを整えただけ。


 しかし外ではすでに、噂が生まれ始めていた。


「子供が」


「ほうきで」


「怪物が消えた」


 誰もが話し、誰もが困惑し、そして誰もが理解できないまま広がっていく。


 そして遠く離れた場所。


「……SSS級、消失?」


「戦闘記録なし?」


「何が起きた?」


 その問いだけが、静かに世界へと広がっていった。


 答えは、どこにもない。


 ただ一人。


 七歳の少女だけが。


 それを“掃除しただけ”だと思っていた。



ここで、皆さんに正直に告白しなければならないことがあります。

私がこの世で本当に、心の底から愛しているもの。それは「長い週末(三連休)」です。

考えてもみてください。金曜の夜から月曜の終わりまで、誰にも邪魔されずにアニメを観て、ゲームをして、たまに執筆の現実逃避をする……これ以上の至福があるでしょうか?

「休みがあるから頑張れる」のではありません。「休むために、今この修羅場(執筆)を乗り越えている」のです。本末転倒な気もしますが、これが私の原動力なんです。

皆さんも、仕事や学校で「あぁ、もう無理だ」と思ったら、私のこの不真面目なあとがきを思い出して「作者も休みたがってるしな」と鼻で笑ってやってください。

それでは、次のチャプターでお会いしましょう。願わくば、次の連休がすぐそこに来ていますように。

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