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[不定期更新] 異世界デワ 、中村すずめはレベル999のメイドです  作者: 甘むら ひでアキ
第3章、第終部:ヤンデレとカレブの結婚式
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第34章:結婚(始)


カレブの帰還は、平穏をもたらさなかった。


 もたらしたのは


 計画だった。


 そしてそれは、平穏よりもずっと厄介なものだった。


 ヴェルザリアは巨大なボードを作り上げていた。


 壁を埋め尽くすほどの大きさだ。


 そこには矢印、図式、そして不穏な単語が並んでいる。


「結婚の可能性」「ルジアのリスク」「スズメのリスク」「世界規模の危機」


 バッキーはそれを見上げたまま、長い沈黙を落とした。


「……これ、もう戦争の作戦会議だろ」


 リリスは小さく息を吐く。


「……私はただ、静かに寝たかっただけなのに」


 エリスはそのボードをじっと見つめていた。


 まるで新しい宗教を前にした信者のように、微動だにしない。


 スズメは床を黙々と掃除している。


 いつも通り、何も変わらない。


 レディ・アルシエルは優雅に紅茶を口に運ぶ。


 それもまた、いつも通りの光景だった。


 だが、ルジアだけは違った。


 その場に立っているだけで、空気がわずかに変質している。


 完璧な姿勢のまま、静かに。


 けれど、明らかに以前とは違う。


 視線はスズメへ向けられていた。


 殺意も圧もない。


 ただ一つの感情だけがそこにあった。


 決意。


 カレブが最初に気づいた。


「……あいつ、雰囲気変わったな」


 バッキーは即座に答える。


「……それはむしろ悪化してる可能性がある」


 ルジアは一歩前に出た。


 足音は小さいのに、その場の空気が重くなる。


 そして静かに口を開く。


「……スズメ」


「はい」


 スズメは顔を上げずに返事をする。


 ルジアは一度だけ目を伏せ、深く息を吸った。


「……私は決めた」


 その瞬間、ヴェルザリアが即座にボードを掲げる。


【開始】


「いや、だからそれ上げるな!」


 バッキーが叫ぶ。


 ルジアは一瞬だけ視線を揺らし、それでも続けた。


「……私は、まだ結婚したい」


 空気が止まる。


 だが、以前のような混乱ではない。


 ただ全員の意識が一点に集中する。


「……だけど、あなたを完全に理解しないままでは進められない」


 ルジアはスズメを見つめ、それからカレブへ視線を移した。


「……だから、もう一度やり直す」


 カレブは固まった。


「……やり直す?」


「はい」


 短い間。


 そして静かに告げる。


「正式な、申し込みです」


 沈黙。


 ヴェルザリアが椅子から崩れ落ちた。


「進化型ヤンデレじゃないこれ!?」


 リリスは顔を覆う。


「……進化じゃない。危険の洗練よ、それ」


 エリスは首を傾げる。


「……体系化された求愛行動」


「勝手に正常扱いするな!」


 バッキーの声が響いた。


 ルジアはもう一度スズメへ向き直る。


 今度は剣も圧もない。


 ただ、真っ直ぐな視線だけ。


「……あなたと一緒にいたい」


 スズメはしばらく動きを止めた。


 そして静かに分析する。


(共同生活の申し出)


 結論はすぐに出る。


「許容範囲です」


 その一言。


 場が完全に止まる。


 カレブはその場に崩れ落ちた。


「……これ普通じゃないだろ」


 ヴェルザリアは笑い出した。


「はははははは!」


 ルジアは小さく頷く。


「……そう、これが答え」


 そしてカレブへ視線を向ける。


「……次はあなた」


「俺!?」


「はい」


「あなたも関係者です」


 沈黙。


 カレブは目を瞬かせる。


「……すみません、どういうこと?」


 ルジアは静かに歩み寄った。


 そして淡々と告げる。


「あなたは、スズメを理解するための補助をしてください」


 場が完全に静止する。


 バッキーはゆっくりと立ち上がった。


「……こいつ、恋愛コンサル扱いされてるぞ」


 リリスが小さく呟く。


「……本人の意思、完全に無視されてるわね」


 スズメは変わらず床を掃除している。


 淡々と、一定のリズムで。


 まるで世界の中心がどこにあるのかすら関係ないかのように。


(環境安定)


 結論。


(新たな循環、開始)


 ヴェルザリアはもう一枚ボードを掲げる。


【結婚:フェーズ1】


「だからやめろって!!」


 だが、もう遅かった。


 戦いとして始まったものは、


 いつの間にか奇妙な計画へと変わっていた。


 掃除と剣と、そして一人の困惑した男を巻き込んだ結婚準備。


 その中心で――


 スズメだけは、何も知らずに掃除を続けている。


 いつも通りに。


 世界が自分を中心に回り始めていることなど、気づきもしないまま。


急いで書いた章なのは分かっていますが、私も忙しい時期なので、仕方ないんです(笑)。

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