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[不定期更新] 異世界デワ 、中村すずめはレベル999のメイドです  作者: 甘むら ひでアキ
第3章、第1部:神剣の剣女 (戦いに飢えている)
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第29章:カレブ (新キャラクター)とシカバネメイド(エリス)が帰

 

 レディ•アルシエルの屋敷には、珍しく平和な朝が訪れていた。


 窓から差し込む柔らかな朝日。

 磨き上げられた床。

 静かに流れる紅茶の香り。


 そして、ヴェルザリアが、人生で初めてまともにタオルを畳めた。


「……できた」


 その声には、世界を救った英雄にも匹敵する達成感が滲んでいた。


 彼女は慎重に、丁寧に、両手で畳まれたタオルを掲げる。


「……私は進化したぞ!!!」


 感動のあまり、本人の目が少し潤んでいる。


 しかし。


 バッキーは無表情のまま、ぱち……ぱち……と乾いた拍手を送った。


「……おめでとう」


 棒読みだった。


 だがヴェルザリアは気にしない。


「ついに私は日常生活スキルを獲得した……!」


「レベル1だな」


「黙れ」


 その横では、リリスが椅子に座ったまま船を漕いでいた。


「すぅ……すぅ……」


 完全に寝ている。


 さらに廊下側では、スズメが窓を拭いていた。


 異様な集中力で。


 もはや暗殺任務でもしているかのような真剣さで。


 その様子を、ルジアが腕を組みながらじーっと見つめている。


「……綺麗」


「汚れが残っています」


「いやもう十分綺麗だと思うんだけど……」


 スズメは無言で再び窓を磨き始めた。


 レディ•アルシエルはそんな騒がしい朝の風景を眺めながら、優雅に紅茶を口へ運ぶ。


 平和だった。


 本当に平和だった。


 その瞬間までは。


 ドゴォォォォォン!!!!


 屋敷の正面扉が爆発した。


 木片が宙を舞い、衝撃で窓ガラスが震える。


 沈黙。


 数秒後。


 バッキーがゆっくり立ち上がった。


「……もう驚かねぇぞ、俺は」


 達観した目だった。


 白い煙がホールいっぱいに広がる。


 その奥から重い足音。


 ドン。


 ……ドン。


 ……ドン。


 まるで戦場帰りの怪物のような圧力。


 そして。


「ハハハハ!!」


 豪快な笑い声と共に、一人の大男が煙を突き破って現れた。


 燃えるような赤髪。


 所々砕けた鎧。


 背中には巨大すぎる大剣。


 そして何より、“脇役なのに主人公オーラが濃すぎる”。


 バッキーの目が見開かれる。


「……カレブ!?」


 男――カレブはニカッと笑った。


「よお!」


 妙に軽い。


 空気にまったく合っていない。


 彼は両手を広げ、高らかに宣言した。


「帰ってきたぜぇぇぇ!!」


 再び沈黙。


 その直後。


 コツ……


 軽い足音が続く。


 今度は静かだった。


 不気味なほどに。


 カレブの後ろから、一人の少女が姿を現す。


 黒いメイド服。


 異常なまでに白い肌。


 光を失った赤い瞳。


 そして、周囲の温度が下がったように錯覚するほど濃密な死霊の気配。


 エリス。


 屍メイド。


 彼女が現れた瞬間、リリスの眠気が吹き飛んだ。


「……うそ、そっちも帰ってきたの!?」


 エリスは小さく首を傾げる。


「……ただいま戻りました」


 静かな声。


 だが存在感が重すぎる。


 ヴェルザリアが二人を交互に見比べた。


「……なんで戦士の方がアンデッドより死にそうな顔してるんだ?」


「……長い話だ」


 カレブは即答した。


 目の下には濃い隈。


 鎧もボロボロ。


 どう見ても修羅場を潜ってきている。


 スズメが静かに前へ出る。


「お帰りなさい」


 その瞬間。


 エリスの視線がスズメへ固定された。


 じぃぃぃ……っと。


 長い。


 怖いくらい長い。


 そして。


 赤い瞳が、かすかに輝いた。


「……ご主人様」


 空気が凍った。


 バッキーは頭を抱える。


「……増えたぁ……」


 リリスも遠い目をした。


「スズメ、本人無自覚で信者増やしてない?」


 ルジアは不機嫌そうに腕を組む。


 理由は誰の目にも明らかだった。


 するとヴェルザリアがどこからともなく板を取り出し、高々と掲げる。


【恋愛レース参加者追加】


「しまえぇぇぇ!!」


 バッキーが全力でツッコんだ。


 その間にも、カレブは大量の荷物を運び込んでいた。


 だが。


 全部壊れている。


 鞄は裂け、箱は潰れ、布袋は半分燃えていた。


「……旅が色々ヤバくてな」


「何があったんですか?」


 スズメが聞く。


 カレブは遠い目をした。


「……途中でドラゴンに追われた」


 静寂。


 ヴェルザリアが瞬きをする。


「……生きてるじゃないか」


 すると。


 エリスが淡々と告げた。


「生き残ったのは私たちです」


「……?」


「ドラゴンは死にました」


 また沈黙。


 バッキーがゆっくり顔を背ける。


「……天気の話みたいに言うなよ……」


 怖い。


 普通に怖い。


 ようやくレディ•アルシエルが本を閉じた。


「それで?」


 彼女は静かにカレブを見る。


「なぜ戻ったのかしら?」


 その瞬間だけ。


 カレブは少しだけ緊張した顔になった。


 頭を掻きながら口を開く。


「……噂を聞いた」


 その一言で、リリスが嫌そうな顔をする。


「あー……嫌な予感」


 カレブは真っ直ぐスズメを指差した。


「魔王を倒したって聞いた」


 ヴェルザリアが手を挙げる。


「事実だな」


「地獄を掃除したとも聞いた」


「それも事実」


「神域の剣士を三十五秒で倒したって」


 ルジアが静かに手を挙げる。


「確認済み」


 沈黙。


 カレブは大きく息を吸った。


 そして、無駄に熱い顔で宣言する。


「だから俺ァ!! もっと強くなるために戻ってきた!!!」


 沈黙。


 バッキーは天井を見上げた。


「……知ってた」


 リリスは既に疲れた顔をしている。


「まだ何も始まってないのに疲れる……」


 ヴェルザリアは腹を抱えて笑い始めた。


「ははははは!! 絶対また問題起こすタイプだこいつ!!」


 一方で。


 エリスはずっとスズメを見つめていた。


 まるで飼い主を見つけたアンデッド犬みたいに。


 スズメは静かに分析する。


 問題人物、増加。


 危険度、上昇。


 必要対応 追加管理。


 その時。


 カレブがふとルジアを見た。


「……で、お前誰?」


 ルジアは一切迷わず答える。


「スズメの未来の妻候補」


 時間が止まった。


 バッキー、内心死亡。


 リリス、椅子から転落。


 ヴェルザリア、机を叩いて爆笑。


 そして。


 エリスが初めて。


 感情を見せた、赤い瞳が細くなる。


 ゆっくりと。


 冷たく。


「……敵性存在を確認」


「待て待て待て待て」


 バッキーが慌てて止めに入る。


 空気が物騒すぎる。


 カレブは周囲を見回した。


「……俺、帰ってくるタイミング間違えた?」


 全員が即答した。


「「「「「YES」」」」」


 その瞬間、ふわり、と。


 誰もいなかった空間に、黒髪で深緑の瞳をした小さな幽霊が現れた。


 サイズは子供くらい。


 半透明。


 しかも妙に軽いノリの顔をしている。


 全員の視線が集まる。


「……誰?」


 リリスが引きつった声で呟く。


 すると幽霊は頭をぽりぽり掻きながら、気まずそうに笑った。


「あー……えっと」


 軽い。


 空気が軽すぎる。


 そして彼はエリスへ向かって手を合わせた。


「メンゴメンゴ、エリス!第11章で完全に存在忘れてたわ。笑 今やっとおもいだした!つーわけで、彼女のキャラ設定やり直さなきゃいけなくなっちゃった。。」


 屋敷が静まり返る。


 エリスですら数秒停止した。


 バッキーが真顔で言う。


「……何言ってんだこいつ」


 ヴェルザリアは爆笑。


「ははははは!! メタ発言!? 急に!?」


 リリスは頭を抱えた。


「世界観が壊れる世界観だった……!」


 カレブは困惑している。


「いや誰だよマジで」


 ルジアは普通に警戒していた。


「……新種の霊体?」


 スズメだけは真顔だった。


「危険性、不明」


 すると幽霊は慌てて両手を振る。


「いやいや怖くないって! ただの作者だから!」


「もっと怖ぇよ!!」


 バッキーが即ツッコミした。


 幽霊、自称作者は満足そうに頷く。


「よし、謝ったし帰るか」


 誰も止める前に。


 すぅっ……と消えた。


 沈黙。


 しばらく誰も喋らなかった。


 そして。


 バッキーが疲れ切った声で呟く。


「……もうこの屋敷ダメだろ」


 誰も否定しなかった。


 こうして。


 レディ•アルシエルの屋敷は、再び騒乱の日常へと突入する。


 いつものように。


今夜まで章を投稿していなかったのは、今夜からです。理由は、理科の宿題と、くそったれな地理の課題があったからです。くそっ

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