第26章:神剣の剣女 ルジア
問題が起きたのは、屋敷の正門だった。
もっと正確に言えば
最近のこの屋敷では、だいたい問題は門からやって来る。
昼下がりの穏やかな時間。
庭には柔らかな風が吹き、白い洗濯物が静かに揺れていた。
スズメは淡々と洗濯を終えたシーツを運び、完璧な手つきで畳んでいく。
その隣では、ヴェルザリアが真剣な顔でシーツと格闘していた。
「……なぜだ!? どうして上手く折れない!?」
彼女はまるで魔術式でも解析するかのような顔で布を睨む。
しかし次の瞬間
ボッ。
シーツの端が黒く焦げ、じゅわりと溶け落ちた。
スズメが静かに視線を向ける。
「力が強すぎます」
「またか……」
ヴェルザリアは絶望した顔で崩れ落ちた。
「私はただ畳みたいだけなのに……!」
バッキーは深いため息を吐きながら指を折る。
「これで八枚目だぞ……」
少し離れた場所では、レディ•アルシエルが優雅に紅茶を飲み、リリスは氷水を片手に精神的疲労を癒していた。
平和だった。
少なくとも その瞬間までは。
ガァン――……
突如、屋敷の外から重い金属音が響いた。
空気が止まる。
鳥の鳴き声すら消えた。
そして次の瞬間。
圧力。
重く、鋭く、冷たい。
まるで世界そのものの喉元に剣が突きつけられたような威圧感。
レディ•アルシエルは静かに本を閉じた。
「……来客ね」
誰も冗談を言わなかった。
正門の前。
そこに、一人の女が立っていた。
銀色の長髪。
黄金の瞳。
白い外套が風に揺れ、その姿はまるで戦場に舞い降りた白銀の戦乙女。
そして腰には異常な数の剣。
一本ではない、二本でもない。
まるで “武器庫” そのものを身につけているようだった。
彼女の周囲だけ、空気が裂けているように見える。
バッキーの目が大きく見開かれた。
「……嘘だろ」
リリスも息を呑む。
「まさか……本物……?」
女はゆっくりと一歩前へ出た。
その瞬間、圧力がさらに増す。
地面がミシリと鳴った。
「私はルジア」
静かな声。
だが、それだけで空気が震える。
「神剣の担い手」
沈黙。
完全な沈黙だった。
さっきまで騒いでいたヴェルザリアですら言葉を失う。
その名は有名すぎた。
大陸最強クラスの剣士。
生ける英雄。
単独で古龍を討伐した女。
そして
一度も敗北したことがない存在。
黄金の瞳がゆっくりと動く。
そして。
スズメの前で止まった。
長い沈黙。
異様なほど長い静寂。
風だけが庭を吹き抜ける。
やがてルジアは小さく呟いた。
「……ようやく見つけた」
その瞬間、バッキーは全てを察した。
「あっ、終わった」
ルジアの手が剣の柄に触れる。
「魔族の魔力を斬ったメイド」
「七歳でSSS級魔物を討伐した少女」
「魔王を蹴り飛ばした使用人」
ヴェルザリアが即座に手を挙げる。
「ちなみにあの蹴り、すごく綺麗に入ったぞ」
「今それ言うな!!」
バッキーが全力で叫んだ。
だがルジアはまるで聞いていない。
彼女の視線は、最初からずっとスズメだけを見ていた。
鋭い。
まるで魂へ直接突きつけられた剣。
「……私と戦え」
絶対零度のような静寂。
スズメは少しだけ首を傾げた。
「なぜですか?」
ルジアは即答した。
「お前が強そうだからだ」
リリスが頭を抱える。
「うわぁ……本当に脳筋剣士だ……」
ヴェルザリアはこっそりバッキーに近づいた。
「どれくらいで返り討ちになると思う?」
「五分」
「私は三分に賭ける」
レディ•アルシエルが紅茶を飲みながら呟く。
「二分ね」
スズメは少し考え込んだ。
決闘。
被害予測。
屋敷修繕費。
掃除予定。
脳内で高速計算が行われる。
そして結論。
「お断りします」
沈黙。
全員が固まった。
ルジアが初めて瞬きをした。
「……断る?」
「はい」
「……私との決闘を?」
「はい」
「理由は」
スズメは真顔で答える。
「十五時から掃除がありますので」
空気が止まった。
バッキーは肩を震わせながら顔を逸らす。
笑ったら終わる。
リリスはその場に座り込んだ。
ヴェルザリアは腹を押さえて悶絶している。
ルジアだけが動かなかった。
まるで脳が処理を拒否しているようだった。
「……お前は」
長い沈黙。
「……掃除のために私を断ったのか?」
「はい」
即答だった。
風が庭を吹き抜ける。
妙に劇的だった。
そして。
ルジアの口元がゆっくり歪む。
最初は小さく。
だが次第に。
彼女は笑い始めた。
低く。
静かに。
しかし心の底から愉快そうに。
「……面白い」
殺気が少しだけ薄れる。
彼女は剣から手を離した。
「ならば短時間で終わらせる」
スズメは冷静に分析する。
高い執着。
戦闘回避困難。
結論。
戦闘不可避。
ヴェルザリアが歓声を上げた。
「始まるぞォォォ!!」
「屋敷が壊れる……!」
バッキーは頭を抱えた。
レディ•アルシエルは静かに紅茶を飲む。
「たぶん半壊で済めば幸運ね」
ルジアはゆっくりと一本の神剣を抜いた。
刃が鞘から現れた瞬間
空が変わる。
雲が裂けた。
空気が震え、大地が低く唸る。
さすがのヴェルザリアも表情を引き締める。
「……あの剣、危険だな」
スズメは静かにルジアを見つめていた。
無言。
静寂。
次の瞬間。
すずめは箒を手に取った。
その瞬間だった。
神剣が震えた。
まるで恐怖したかのように。
空気が揺らぐ。
ルジアの黄金の瞳が大きく見開かれる。
だが直後。
彼女はさらに嬉しそうに笑った。
戦士として。
剣士として。
初めて“求めていた存在”を見つけたように。
「……最高だ」
庭に張り詰めた空気が爆ぜる。
そして
決闘が始まろうとしていた。
実は私、ウェブラジオを聴くのが大好きなんです。
最近は本当に質の高いラジオ局がたくさんありますよね(笑)。物語の世界観に浸りながら聴くのもいいですし、逆に全く関係ない雑談系を流しておくのも、程よいノイズになって集中できるものです。
執筆中や、あるいは皆さんが勉強や仕事に打ち込んでいる時に、これらのウェブラジオを聴くのは本当におすすめですよ。静かすぎると逆に集中できない……なんてタイプの人には、まさに「救いの神」的な存在になるはずです。
……まあ、たまにラジオのトークが面白すぎて、ペンを止めて爆笑してしまうのが唯一の難点なのですが(笑)。
皆さんも「このラジオ局が最高だよ!」というおすすめがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。ネタ集め……いえ、純粋な趣味としてチェックさせていただきます。
それでは、良いラジオライフと、次回の更新をお楽しみに。
ここにはいくつかウェブラジオがあります:
J1FM
湘南ビーチFM
FM Gig 81.8




