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異世界デワ 、中村すずめはレベル999のメイドです  作者: 天村 秀明
第2章、第1部:地獄編 -はじまり-
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第16章:ようこそ、悪魔の国、地獄へ。

「まず第一ルール!」


胸を張りながら、ヴェルザリアは先頭を歩いていた。


腕を組み、いかにも“案内役です”と言わんばかりの誇らしげな表情。


その背中には妙な威厳があったが


周囲の景色がその威厳を全力で台無しにしていた。


「赤い円の上は踏むな!」


バッキーが足元を見る。


そして固まった。


「……いや、赤い円しかないんだけど!?」


地面一面に描かれている赤い魔法陣。


大きいもの、小さいもの、脈打つもの、煙を出しているもの、中には「WARNING -警告-」と光っているものまである。


まともに歩ける場所がほぼ存在しない。


ヴェルザリアは振り返りもせず、さらっと言った。


「そこは各自の努力で」


「クソガイドすぎるだろ……」


「地獄だからな!」


なぜか誇らしげだった。


リリスは深いため息を吐く。


「帰りたい……」


「まだ着いたばっかだぞ?」


「だから帰りたいのよ……」


その横で、雀は静かに周囲を観察していた。


黒く歪んだ城が遠くにそびえ立ち、巨大な骨の橋がマグマの川を渡っている。


空は赤黒く濁り、翼を持つ異形たちが飛び回っていた。


空気は熱く、重い。


鉄と硫黄と血の匂いが混ざり合っている。


そして


うるさい。


どこからか爆発音。


怒鳴り声。


悲鳴。


笑い声。


何かが潰れる音。


誰かが「税金上げるなァ!!」と叫んでいる。


雀の目が細くなる。


構造不安定。


衛生状態劣悪。


騒音過多。


公共秩序崩壊寸前。


結論


極めて深刻。


雀の脳内で静かに警報が鳴った。


ヴェルザリアはそんなことなど気にせず、両手を広げる。


「ようこそ! 栄光ある魔界へ!」


直後、背後で大爆発。


黒煙が空高く吹き上がった。


しかしヴェルザリアは一切振り返らない。


「地獄第三位の軍事国家!」


今度は別の建物が炎上した。


窓から悪魔が一人吹き飛び、地面に突き刺さる。


「人口八百万人を誇る大都市!」


「うわぁぁぁ!! 誰か止血!!」


「火ぃ消せ火ぃぃぃ!!」


「ちなみに水曜はもっと平和だぞ!」


妙な沈黙。


アーシェル卿は静かに周囲を見渡しながら呟いた。


「……ある意味、感動的ですね」


「だろう!?」


ヴェルザリアの目が輝く。


しかし次の瞬間。


「ここまで混沌が完成されているとは」


「…………」


致命傷。


ヴェルザリアは目に見えて落ち込んだ。


「お前ら、もっとこう……オブラートとか……」


「無理です」


雀が即答した。


「即答!?」


歩き続けるうちに、周囲の悪魔たちが次第に雀へ視線を向け始めた。


最初は一人。


次に二人。


気づけば通行人のほとんどが彼女を見ている。


「……おい」


「あれって……」


「人間のメイド……?」


「呪い消したっていう……?」


ざわざわと空気が揺れる。


雀は軽く首を傾げた。


「こんにちは」


その瞬間。


数人の悪魔がビクッと肩を震わせて後退した。


「しゃ、喋った……」


「圧がすごい……」


「なんでメイドなのに魔王より怖ぇんだよ……」


「おい」


ヴェルザリアがキレた。


「聞こえてるからな?」


悪魔たちは一斉に目を逸らした。


バッキーが雀にそっと近づく。


「……自覚あるか?」


「何がです?」


「お前、悪魔たちビビらせてる」


雀は少し考え、


「意図的ではありません」


「それが一番怖いんだよ……」


さらに奥へ進むと、巨大な広場へ辿り着いた。


そこだけ空気が違った。


重い。


淀んでいる。


広場の中央には


山。


巨大な黒い山。


壊れた武器。


砕けた鎧。


呪具。


腐った残骸。


何かの骨。


何かだったもの。


それらが積み重なり、巨大な廃棄物の塊となっていた。


黒い煙がゆっくりと立ち上っている。


雀は足を止めた。


沈黙。


視線が鋭くなる。


ヴェルザリアが気まずそうに頭を掻いた。


「あー……」


珍しく声が弱い。


「それ、“中央呪廃棄場”」


「中央?」


リリスが嫌な顔をした。


「他にもあるの?」


「いっぱいある」


全員が黙った。


雀は煙を見つめ続けていた。


悪魔たちはそこを避けるように歩いている。


鼻を押さえる者。


目を逸らす者。


だが、誰も片付けようとはしない。


アーシェル卿が静かに尋ねる。


「なぜ放置しているのです?」


ヴェルザリアは露骨に目を逸らした。


「……その……片付けようとすると……」


ゴゴゴ……と音が響いた。


山が動く。


次の瞬間。


ゴミの隙間から無数の目が開いた。


ぐちゃり、と肉のような音。


腕が伸びる。


口が裂ける。


黒い瘴気が噴き出した。


廃棄物の山そのものが、生きていた。


「…………」


「食うんだよ」


ヴェルザリアが小声で言った。


「掃除しようとした奴」


沈黙。


バッキーが静かに後退する。


リリスは既に雀の後ろへ避難済みだった。


「ちょ、リリス!?」


「前衛お願い」


「俺!?」


ヴェルザリアは急に元気を取り戻したように雀を指差す。


「でも今は問題なし!」


全員の視線が集まる。


彼女は満面の笑みだった。


「なぜなら、こっちには雀がいるから!」


「最低だこの魔王」


その瞬間。


怪物が咆哮した。


広場全体が揺れる。


ゴミの山が崩れ、無数の腕が飛び出す。


目玉がぎょろぎょろと動き、口という口から黒煙が溢れた。


周囲の悪魔たちが悲鳴を上げて逃げ出す。


「うわあああ!! 生ゴミ魔獣だァァ!!」


「逃げろぉぉ!!」


「起きやがった!!」


ヴェルザリアは即座に雀の後ろへ隠れた。


「健闘を祈る」


「お前、魔王だろうが!!」


「そして彼女はメイドだ!」


「説明になってねぇ!!」


地面が揺れる。


瘴気が渦を巻く。


巨大な腕が振り下ろされ、石畳を粉砕した。


しかし


雀は静かだった。


ただ一歩、前へ出る。


怪物を見上げる。


観察。


分析。


長期間放置。


呪的汚染深刻。


廃棄物蓄積過多。


衛生基準完全崩壊。


結論


大規模清掃が必要。


雀は静かに箒を握った。


その瞬間。


空気が変わる。


悪魔たちが凍りつく。


ヴェルザリアが青ざめた。


「あっ、これヤバいやつ……」


怪物が咆哮する。


黒煙が空を覆う。


広場が軋む。


だが雀は微動だにしない。


スッ――と重心を落とし、静かに構えた。


「清掃作業を開始します」


次の瞬間。


地獄そのものが震え上がるような、途方もない災害が始まろうとしていた。




さて、本編とは一切関係のない、作者の異世界サバイバル日記の続報です。


異世界における作者の日記²


正直に言います。ついにリリヤと初デート……いや、散歩に出かけたんです。目的地は彼女がおすすめしてくれた「エルフカフェ」。期待に胸を膨らませていたのですが、うわぁ……あそこはちょっと変でした。

出てきた料理が、まさかの「ネズミのボロネーゼ」。

見た瞬間に胃がひっくり返りそうになりましたよ。エルフってベジタリアンじゃなかったんですか? それともリリヤの味覚が独特なだけ? 吐き気を堪えるのに必死で、ロマンチックな雰囲気は一瞬で吹き飛びました(笑)。

でも、ただでは転びません。持ち前の(?)強運で、こちらの世界にいくつか「チートアイテム」や「バフ」を持ち込むことに成功しました!

なんと、この異世界でも「無制限のインターネット」「テレビ」「ストリーミング」が完備されています。さらには、現実世界の友達を召喚することだってできるんですよ。ヘヘヘ。

これさえあれば、リリヤの家で快適な引きこもり作家ライフが送れそうです。ネズミのパスタさえ出てこなければ、ですけど。

それでは、次のチャプターでお会いしましょう!


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