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黄昏バキューマーズ ~汲み取り屋の娘が社長になります。“当たり前”を守る大切な仕事です~  作者: トネガワ ワタル


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第5話 ヒデさん

 現場五日目。


(この人、何考えてるんだろ)


 ヒデさんの背中を見ながら、毎回思う。


 無駄がない。


 動きに迷いがない。


 でも、それ以上に。


(静かすぎる)


 必要なことしか喋らない。


「……」


 今日も無言で蓋を開ける。


 覗く。


 数秒。


「ここんちは吐き出しかけるぞ」


 それだけ。


(なんで分かるの)


「理由、聞いてもいいですか」


 思い切って聞く。


「見りゃ分かる」


(出たそれ)


「いや、それが分からなくて」


「見てねぇからだ」


(厳しい)


 でも、間違ってない。


 作業を見続ける。


 動き。


 タイミング。


 視線。


(どこ見てる?)


 ヒデさんの目を追う。


 流れ。


 泡。


 音。


(あ……)


 少しだけ。


 “見てるもの”が分かった気がした。


「……そこ」


 思わず口に出る。


「ろ材、詰まり気味ですよね」


 一瞬の沈黙。


「……ああ」


 短い肯定。


(合ってた)


 少しだけ嬉しい。


 そのまま作業が進む。


 問題なく終了。


「ありがとうございました」


 帰りの車。


「彩乃」


「はい」


「今の、よく見てたな」


(え)


「……少しだけ」


「それでいい」


 短い。


 でも。


 ちゃんと見てくれてた。


(この人、ちゃんと見てるんだ)


 言わないだけで。


 全部。


 会社に戻る。


「おかえりー」


 スミちゃん。


「今日どうだった?」


「ちょっと褒められました」


「マジで?」


「ヒデさんに?」


 ハラちゃんが食いつく。


「うん」


「それレアっすよ!」


「俺、半年かかりました」


「そんなに?」


「俺なんか一年だぞ」


 スミちゃん。


「それは遅いだけじゃないですか?」


「うるせぇ」


 笑いが起きる。


(なんかいいな、これ)


 奥から声。


「仕事終わってるなら片付けなさい!」


 篠塚さん。


「はーい」


 全員、動き出す。


 その中で。


 ヒデさんだけが、いつも通り淡々としていた。


 帰り際。


「彩乃」


「はい」


「明日も来い」


(当たり前なんだけど)


 少しだけ、嬉しかった。


 外に出る。


 夕焼け。


(前より、嫌じゃない)


 そんなことを思う。


 その時。


「おーい彩乃さーん!」


 後ろから声。


 ハラちゃん。


「服、後ろついてます!」


「え」


 慌てて見る。


(……付いてる)


「うわっ!」


「だから言ったじゃないですか〜!」


「言ってない!」


「さっき心の中で!」


「分かるか!」


 後ろでスミちゃんが笑ってる。


「気づかないのが一番キツいよな〜」


「ほんとそれっす」


(最悪だ……)


 でも。


 笑い声の中で。


 少しだけ。


 自分も笑っていた。


(……まあ、いっか)


 夕焼けが、ゆっくり沈んでいく。


 その中で。


 今日も一日が終わる。


 ちょっとだけ、前に進みながら。


――黄昏バキューマーズ。

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