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黄昏バキューマーズ ~汲み取り屋の娘が社長になります。“当たり前”を守る大切な仕事です~  作者: トネガワ ワタル


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第4話 初失敗

 現場四日目。



 今日の一件目は中型浄化槽。


 スミちゃん・ハラちゃんコンビと


 2台で行く。




(今日はやれる気がする)


 根拠はない。


 でも、昨日よりは動ける気がした。



「今日はちょっとやらせるぞ」


 ヒデさんが言う。


(来た)


「ホース任せる」


「……はい!」


 持つ。


 重い。


 でも、昨日よりマシ。


(いける)


 差し込む。


 ズブッ


 感触には、もう少し慣れた。


(大丈夫)


 吸い始める。


 順調。


(いけてる……!)


 その時。


「彩乃さん、いい感じっす!」


 ハラちゃん。


(今話しかける!?)


 一瞬、意識がそっちに向く。


 その隙。


 ズルッ


「え」


 ホースがずれる。


 バランスが崩れる。


「うわっ!」


 持ち直そうとして――


 ブワッ


「ぎゃっ!?」


 吸いかけてたモノが落ちた。


 跳ねた。


 しっかり跳ねた。


 しかも顔の近く。


(終わった)


「だから言ったろ〜」


 スミちゃんの声。


「余所見すんなって」


「す、すみません!」


 慌てて立て直す。


 でも。


 もう一回ずれる。


「うわっ!」


 また跳ねる。


「二連発はすげぇな」


 スミちゃん、ちょっと笑ってる。


「笑ってる場合じゃないっすよ!」


 ハラちゃんが焦る。


「いやお前もさっきやってただろ」


「俺は一回っす!」


(そこ張り合うとこ!?)


 完全にカオス。


「集中しろ」


 ヒデさん。


 一瞬で空気が締まる。


「……はい」


 深呼吸。


 ホースを見る。


 動き。


 位置。


 流れ。


(さっき何がダメだった)


 考える。


(意識がそれた)


(押しが甘い)


(位置が浅い)


 もう一度。


 差し込む。


 押す。


 固定する。


 今度はブレない。


 吸う。


 安定する。


(いける)


 そのまま続ける。


 最後まで、崩れなかった。


 作業終了。


「……はぁ」


 力が抜ける。


「ナイスリカバリーっす!」


 ハラちゃん。


「最初はああなるんだよな〜」


 スミちゃん。


「二連発はなかなか見ねぇけどな」


(言わないで)


「すみませんでした……」


 素直に頭を下げる。


「いい」


 ヒデさん。


「一回で済んだ」


(……え)


「二回だけどな」


 スミちゃんがすかさず言う。


「うるさい」


 ヒデさん、即切り。


 少しだけ、空気が緩む。


「最初は失敗するもんだ」


「……はい」


「大事なのは」


 一拍。


「同じことやらないことだ」


 短い。


 でも、重い。


(……はい)




 1日の作業が終わり会社に戻る。


「でも顔は守ったっすね」


 ハラちゃん。


「俺、初めてのとき真正面で食らいました」


「聞きたくない」


「三日くらい匂い取れなかったっす」


「やめて」


「服も全部ダメになって――」


「やめてってば!」


 社内に笑いが広がる。


(……)


 さっきまで落ち込んでたのに。


 少しだけ。


 楽になっていた。


 外を見る。


 夕焼け。


(今日もやらかしたな)


 でも。


(少しはできた)


 失敗した。


 でも、立て直した。


 それだけで。


 昨日より、少し前に進んでいる気がした。


「……明日もあるか」


 小さく呟く。


 ため息は出なかった。


――黄昏バキューマーズ。

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