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黄昏バキューマーズ 〜20代の娘がいきなり汲み取り屋の社長になる!。“当たり前”を守る大切な仕事です~  作者: トネガワ ワタル


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第21話 エース(自称)の日常

 朝5時。


 目覚ましより先に目が覚める。


「……ふぁ」


 体を起こす。


 年のせいか、自然と早く起きる。


「起きたの?」


 台所から声。


「おう」


 いい匂い。


(今日も当たりだな)


 テーブルに弁当が置かれる。


「ありがとな」


「はいはい」


 当たり前みたいに渡される。


(こういうのがいいんだよな)



 俺の名前は角美佐男。


 中畑清掃のバキュームドライバーだ。


 54歳、勤続26年。


 社内ではエース級の活躍をしている。


(あくまでも自称エースだがな)



 なぜか俺はモテる。


 バツ3だが、現在も同棲している彼女がいる。


(不思議なもんだ)



 最初の妻との間に娘がいる。


 これがまた、女優級の美人でな。


 その娘も、今じゃ建設会社の経営者と結婚してる。


 6歳と3歳の孫もいる。


(これがまた可愛い)


 目に入れても痛くないとはこのことだ。


 離婚した俺にも、頻繁に会いに来てくれる。


 ありがたい話だ。



 だが問題がある。


 会うたびに小遣いをあげてしまう。


 結果。


 俺はいつも金欠だ。


(計画性<感情派)



 車に乗り込む。


 エンジンをかける。


「よし、行くか」


 出勤。


 会社に着くと――


「おはようございます!」


 元気な声。


「おう」


 こいつの名前は原高徳。


 仕事の相棒だ。


 ハラとは親子ほど歳が離れている。


 だが。


 俺を慕ってくれる、可愛い後輩だ。


「今日もよろしくお願いします!」


「おう、任せとけ」


(まぁ大体、俺が教えてるからな)


「スミさん昨日また飲んだんすか?」


「飲むだろ普通」


「普通じゃないっす」


「うっせーなぁ」


 いつものやり取り。



 段取りをして、出発。


 道中。


「昨日彼女さんと何食べたんすか?」


「肉」


「いいっすねぇ」


「お前も結婚すれば分かる」


「もうしてます」


「そうだった」


(こいつも早いんだよな)


「娘さんの子供たちどうなんすか?」


「可愛いぞ」


「いいっすねぇ」


「でもな」


「金が飛ぶぞ」


「それはもう感じてます」


 笑う。


 現場に着く。


「よし、やるか」


 仕事は真面目に。


 ホースを引く。


 吸う。


 確認する。


「スミさんそこ!」


「分かってるって」


 たまに怒られる。


(まぁそれも仕事だ)



 昼。


 弁当を開ける。


(やっぱうまい)


「いいっすねぇ手作り」


「だろ?」


 少しだけ自慢する。


 午後も回る。


 いつも通り。


 変わらない日常。


 でも。


(悪くない)


 仕事が終わる。


「おつかれっす!」


「おう」


 会社に戻る。



 そして帰宅。


「ただいま」


「おかえり」


 テーブルに並ぶ料理。


「うまそうだな」


「でしょ」


 ビールを開ける。


 プシュッ


 この音がいい。


 一口。


「……っはぁ」


(これだよ)


 体に染みる。


 飯を食う。


 笑う。


 どうでもいい話をする。


 それが、いい。


 俺の毎日の楽しみ。


 それは、帰ってからの晩酌だ。


 今は彼女と同棲しているから家飲みだが。


 独り身の時は外に飲みに行っていた。


 そこで、いつのまにか彼女が出来る。


 だが。


 よくフラれる。


(理由は分からん)


「何ニヤニヤしてんの」


「いや別に」


 誤魔化す。


 グラスを傾ける。


(まぁいいか)


 今が楽しければ。


 それでいい。


 中畑清掃で働き、過ごす日々。


 それは――


 俺にとって。


 幸せな時間だ。


――黄昏バキューマーズ。

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