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黄昏バキューマーズ ~汲み取り屋の娘が社長になります。“当たり前”を守る大切な仕事です~  作者: トネガワ ワタル


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20/20

第20話 内側の仕事

「今日はこっちね」


 母の声。


 久しぶりに会社に来ている。


「無理しないでよ」


「分かってるって」


 椅子に座る。


 前より少しゆっくりした動き。


 でも。


(ちゃんとしてる)


「まずはこれ」


 通帳。


 帳簿。


 伝票。


(うわ……)


「嫌そうな顔しない」


「してない」


「してる」


 即バレる。


「経理はね」


 一拍。


「会社の“血”みたいなもん」


(血……)


「流れが止まったら終わり」


 軽く言う。


 でも。


(重い)


「お金がどう動いてるか」


「ちゃんと見て」


「分かって」


「守る」


 ゆっくり説明していく。


 売上。


 支払い。


 経費。


 数字が並ぶ。


(現場と全然違う)


「難しい?」


「……正直、はい」


「最初はみんなそう」


 少し笑う。


「でもね」


「これ分かると」


「会社の動きが見えるようになる」


(動き……)


 ノートに書く。


 聞く。


 頭が疲れる。


 ふと。


「この前さ」


「うん?」


「美咲さんのとこ行ってきた」


「江川さん?」


「知ってるの?」


「そりゃあね」


 一拍。


「いい会社でしょ」


「すごかった」


 思い出す。


 広い敷地。


 設備。


 人。


「全部揃ってて」


「24時間で回してて」


「……規模が違った」


「そうね」


 母は頷く。


「で?」


「え?」


「何か言われたんでしょ」


(鋭い)


「……経営者は会社を守るのが一番って」


 そのまま言う。


「ふふ」


 少し笑う。


「同じこと言うわね」


「え?」


「正解よ」


 迷いなく言う。


「どれだけ現場頑張っても」


「会社なくなったら終わりだから」


(……)


「でもね」


 一拍。


「一人じゃ守れないのよ」


「え?」


「会社って」


「人で出来てるから」


 ゆっくり。


「横の繋がりも大事」


「同業者も」


「仲間も」


「いざって時、助けてくれるのは人」


(……)


 美咲の顔が浮かぶ。


(繋がってる)


 内と外。


「だから大事にしなさい」


「その出会い」


「はい」


 自然と頷く。


「よし、今日はここまで」


「え、もう?」


「頭パンクしてる顔してる」


「バレた?」


「バレるわよ」


 笑う。


「次は配車」


「……来た」


 場所が変わる。


「はい、これ」


 篠塚さん。


 配車表。


「やってみな」


「え?」


「現場知ってるでしょ」


「はい」


「なら出来るよ」


(そんな簡単に言う?)


 見る。


 距離。


 時間。


 内容。


(これは……)


 考える。


「こう、ですか?」


「うん、悪くないね」


「ほんとですか」


「でもね」


 一拍。


「現実はそう簡単じゃないのよ」


(来た)


「自分の都合しか考えてない客もいる」


「え」


「今すぐ来いってね」


「予定関係なく」


(あるあるだ……)


「あと緊急対応が入った時だね」


「はい」


「全部ひっくり返るから」


(……)


「そのときどうするか」


 指でトントン叩く。


「そこが腕よ」


(腕……)


「まず全部守ろうとしない事」


「え?」


「無理だから」


 即答。


「優先順位つけるの」


「何を守るか」


「誰を守るか」


 真っ直ぐ見る。


「そこの判断が大事」


(判断……)


 さっきの言葉が重なる。


 母の言葉。


 美咲の言葉。


(会社を守る)


 配車表を見る。


 ただの紙じゃない。


(これ……)


 全部繋がってる。


 現場も。


 人も。


 お金も。


 そして。


(責任も)


「……やってみます」


「いい顔」


 篠塚さんが笑う。


「そのうち分かるわよ」


「全部繋がってるって」


(もう少しで分かりそう)


 ペンを持つ。


 初めて。


 “中”の仕事に向き合った気がした。


――黄昏バキューマーズ。

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