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黄昏バキューマーズ ~汲み取り屋の娘が社長になります。“当たり前”を守る大切な仕事です~  作者: トネガワ ワタル


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13/19

第13話 現場は今日も平和です(たぶん)

「今日はあっち組だな」


 ヒデさんが言う。


「あっち?」


「スミとハラ」


(あっちか……)


 なんとなく、察する。


「おはようございまーす!」


 元気な声。


 ハラちゃんだ。


「おはようございます!」


 続いてスミちゃん。



「今日は彩乃ちゃん、うちらとだってよ」


「マジっすか!?」


 ハラちゃんの目が輝く。


「見せてやりますよ、俺たちの仕事!」


(不安しかない)


 現場に向かう車内。


「スミさん昨日飲みすぎじゃないっすか?」


「そんなに飲んでねえよ」


「顔むくんでますよ」


「元からだ」


(この会話ずっと続くのかな)


 一軒目。


「よし、やるぞ」


 スミちゃんがホースを持つ。


「ハラ、引け」


「はい!」


 ぐいっと引く。


「おい逆だ」


「え?」


「逆」


「あ、ほんとだ」


(ほんとだじゃない)


 二人の動きは、どこか噛み合ってない。


 でも。


 なぜか作業は進む。


(なんで回ってるのこれ)


「そこ踏むな!」


「え、どこっすか!?」


「そこだよ!」


「ここっすか!?」


「違うそこじゃねえ!」


(どこだよ)


 気づけば。


 口元が緩んでいた。


(……なんか、面白い)


 二軒目。


「スミさんこれ重くないっすか?」


「お前が非力なんだよ」


「いやいや絶対重いっすって!」


「じゃあ俺がやるから見てろ」


 ひょいっと持ち上げる。


(軽そう……)


「……腰やったかも」


「やってるじゃないっすか!」


(やっぱり)


 三軒目。


「お、ここいいな」


「何がですか?」


「日当たり」


(仕事関係ない)


 気づけば。


 完全に力が抜けていた。


(昨日まであんなにピリピリしてたのに)


 そして。


 四軒目のあと。


「……っはは」


 思わず、声が出た。


「え?」


 ハラちゃんが振り向く。


「いや……なんか」


 言葉が出ない。


「楽しそうだなって」


 一瞬、間。


「楽しいっすよ!」


 ハラちゃんが即答する。


「だな」


 スミちゃんも頷く。


「大変だけどな」


「でもさ」


 一拍。


「終わったあと飲む酒がうまいんだよ」


(結局それか)


「あと孫に小遣いやるときな」


(いい人だな、この人)


「金はねえけど」


(ダメじゃん)


 夕方。


 作業も終盤。


「彩乃ちゃん」


 スミちゃんが言う。


「はい?」


「この仕事な」


 珍しく、真面目な声。


「楽じゃねえし、汚ぇし」


「いいことばっかじゃねえ」


 一拍。


「でもまあ」


「悪くねえだろ?」


(……)


 少し考える。


 今日一日。


 バタバタして。


 笑って。


 怒って。


 でも。


「……はい」


 自然に答えていた。


「悪くないです」


 スミちゃんが笑う。


「だろ?」


 その横で。


「スミさん、ホース忘れてます」


「マジかよ!」


(最後までこれか)


 夕焼け。


 今日も同じ色。


 でも。


 昨日より少しだけ。


 笑えることが増えた気がした。


――黄昏バキューマーズ。

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