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12回 無能家老

「本当なのか?儂にはわからぬ。信仲がどうして、高信への謀反に加担するのだ?あの者の南部家への忠誠は本物だ。」


「高信殿には心当たりがあるはずです。」


「どうなのだ?高信。」


「昨年の年末に筆頭家老をやめるように迫ったことを言っているのですか?」


「その話か。確か、安東家との戦での失策を理由に殿から筆頭家老をやめるように言われたのでしたな。」


「ああ。高信からの進言もあったが、あの者の戦略によって無駄に多くの兵を死なせてしまった。それも、責任は高信にあると言い訳をした。信仲とは、幼馴染みと言ってもおかしくないほど長年の付き合いだが、自分の失態を他人のせいにする行いは許せなかった。確かにあれ以来、信仲の南部家における信頼は失墜し、他の家臣らから陰で”無能家老”と蔑まれていたようだ。なるほどな。その時の失策や責任を放棄し、他人へ押し付ける行為を理由に、家老をやめさせたのだが、それを恨んでいるわけか。」


「ええ。」


「だが、それならば、恨みは、儂に向かうのではないのか?」


「まあ、これは単なる勝手な逆恨みですので。彼も自分が悪いことぐらい理解しているのでしょう。それに、晴政様への忠誠は本物のようですので、晴政様に恨みは向けられない。ただ、自尊心が強いがゆえに自分自身を否定しきれない。その不満をその一連の発端となった高信殿に向けたと言ったところでしょうか。」


「だが、この件に加担していたのならば、御家を狙った謀反なのでは?」


「それは無理でしょう。」


「どうして?」


「事前に調べさせましたが、彼は民の信頼も完全になくしているようです。隠しているようですが、農民が年々他の城下へ流出しているようで、収穫量が減少しているようです。記録係に金を渡して数字を改竄しているようですが。改竄は列記とした反逆行為であり、民にもこの事実は知られているようです。謀反を起こそうにも、兵が集まらない。南部家の家老としての名前だけで成り立っているような状況なのです。」


「では、もし謀反への加担が知られれば、それも引き合いに出されて、余計に不利になるのでは?」


「ご自分の御家と南部家との関係性に自信があるのでしょう。九戸家は、古くから南部家に仕えてきたと聞いております。加えて、忠誠を捧げている。そのような忠臣を排しはしないだろうという思いがあるではないのでしょうか。」


「愚かな。これは、儂が当たった方が良いだろうな。奴にとって悪い方向に進むにせよ、儂の言葉なら聞くだろう。それに奴の妻には面識がある。良識ある人物であったはず。何とか、説き伏せて見せよう。」


「どのように罰されるのですか?」


「それは、やつにあって決める。心配はいらん。奴とは、先にも言ったが旧友だ。儂から言えば、やつも聞きいれよう。」


「では、信愛。徴兵が完了次第、小野寺と戸沢領に攻め込むのだ。1500も集めれば可能であろう。理由は、信仲と為信の謀反に加担した罪だ。」


「あちらの国人衆には既に話をしてありますので、ご対応も頼みます。浅利家にも話は通してあります。向こうに、私の忍び衆を待機させております。遊軍としてお使いください。」


「蒼次郎様、有難く使わせて頂きます。殿、徴兵の件、承知いたしました。」


「では、行って来い。朗報を期待しておる。」


「承知致しました」


信愛どのが部屋を出ていくと、入れ替わりに佐助と丹波が入室してきた。


「殿、お呼びになるだろうと思い、先んじて参上仕りました。」


「ああ。」


「次は何だ?」


「内政をいじっていこうと思いまして。」



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