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3回 戦の準備①

ようやく、気持ちを伝える

今の時間は、辰の刻(8時)であって、戦の亥の刻(20時)までは、半日あるわけで、強気で言ってみたんだけど、できるか微妙な気分でいる。でも、できないと子供だと思われるだろうし、逆に成功すれば、嫡男に向けて大きく前進するわけで、成功させなければならない。



「というわけで、丹波。」



「何でしょう?」



「伊賀の忍びは、近辺に何人潜ませている?」



「迎えに来ていたもの等も、情報収集に向かわせておりますから、すぐに動けるのは、200名くらいでしょうか。」



「十分すぎるな。お前も向かい、花巻城周辺の正確な地図を作れ。」



「わかりました。いつごろまでに用意すればよいでしょうか?」


「とりあえず、昼飯に合わせて帰ってこい。昼食ってから、地図を作ってくれ。」



「わかりました。では、私はここで失礼いたします。」



丹波は、襖から出ると颯爽と城壁を鉤縄を使って飛び越えていった。規格外すぎる。仮に鉤縄を使ったとしても、越えるのは苦労するだろうに。



そう俺が、思っていると、察したのか佐助が、



「お気になさらず、あの人は、常人ではありませんので。」



「そうなのか?」



「そうでないと、伊賀の忍びは纏められません。皆、化け物のような連中ですので、それくらいじゃないと彼等は付いてきません。」



「そ…そうか。」



「それで我々は、どうしますか?」



「まあ、やることは特にないんだけど。佐助以外の面々は、武具の確認を済ませ、馬の世話でもしていろ。それと、例の豚が俺の居ない間に菜々に手を出さぬように、対策を講じろ。そもそも稗貫家には、武将と呼べる奴は、当主と隠居した稗貫晴家を含めても、4名しかおらん。」



「何というやつらです?」



「確か、亀ヶ森光広と和賀義勝だったはずだ。」



「調略せずともよろしいのですか?」



「戦乱の世で自分の立場を理解せず、勝てぬ戦に向かっていくような馬鹿を味方に迎えることは、身を滅ぼす。よく覚えておけ。」



「失礼しました。」



「佐助や黒葉佩衆は、一応戦が第一だが、いずれは調略や謀略のような仕事も任せることになるんだ。状況や敵将を正確に分析できるように、丹波やもしくは良直でもいいから、教えてもらえ。」



「…分かりました。すみません。」



「さて、作業を昼までに終わらせろ。」



「よし、始めるぞ!」



「よし、俺もやるぞ。」


「いえ、蒼次郎様は、ゆっくりなさっていてください。」


そう言い残すと、佐助以下8名はそそくさと大広間から出ていった。俺だけ残されてしまった。

一人残された俺は、やることも特にないので、素振りしたり、ランニングしたり、筋トレしたりと色々やっていたが、2刻もするとそれにも飽きて、菜奈に入れてもらったお茶を飲みながら軒下に座り、のんびりしていた。菜奈も横に座り、時折心がすくような清純な笑顔を向けてくれる。本当に幸せな時間だ。


だが、そもそも、花巻城の夜討ちは史実では今から46年後の1600年に起きた南部家と稗貫家との戦で、立場が見事に真逆である。どういうわけかと言えば、約1000人の稗貫の兵から南部信直の忠臣であった北信愛が、十数名の兵で城を守りぬいた。まあ、火縄銃に弾を込めずに絶え間なく撃つことで、兵力差を誤解させ、その間に援軍を集め、撃退した戦である。普通に考えて、稗貫って馬鹿なの?って思うところだが、単純に兵の質という問題点もあったが、まあ、その程度の相手なのだ。



俺は、あくびをしながら寝転がった。



「蒼次郎様、そのようにのんびりしていて大丈夫なのですか?」



「俺には、優秀過ぎる家臣達に囲まれているからな。俺は、ここでゆっくり休んで生気を養っておけばいい。」



「そうかもしれませんが…」



菜奈が心配そうに声をかけてきた。菜奈のほうを向くと、怖がっているようだ。まあ、戦でこの世界での両親を亡くしているんだ。仕方ないと言えば仕方ないのだう。“零”から伊達家の農業改革中に聞いたのだが、農民や商人の子供としてこの世界にきた人は、赤ん坊として来るようで本当の親のように思うのだろう。



俺は、ゆっくり起きると座ったまま、隣にいる彼女を抱き寄せた。



「そ…蒼次郎様!?」



「心配せずとも菜奈を一人にはしないよ。」



「でも、もしものことがあったら…」



「寂しいな。」



「え…?」



「菜奈は、俺のことを信じてくれないのかい?なんと、寂しいことだ。俺は、菜奈にとってそんなに頼りのない男男に見えているのかい?」



「そんなことありません!蒼次郎様は、私の命の恩人で…その…」



「その?」



「あ…憧れです。」



「憧れか…、もう一歩足りないな。」



「足りないとは?」



「俺のことを好いていてくれていないのかい?」



「ほぇ…!それは…その…」



「なんと、俺は片思いだったのか…。俺は、菜々を救った4年前から菜奈のことを好いているのに。」



「そんなこと、思ってもみませんでした。蒼次郎様は、家族をなくした私を憐れんでくださっていたものとばかり。」



「そうか…。では、今後は、私が菜々の事を好いているという事を心に留めておいてくれ。」



「は…はい。」

言った。言ってしまった。元の世界でも告白なんてしたことのないのに、そのうえ滅茶苦茶格好つけて。今も心臓がドクドクいってる。ヤバイ!



だけど、告白したあとの菜々の顔…可愛かったなぁ。流石は現役のアイドル。いずれ絶対、付き合って見せる。



そうこうしていると、昼時となり、佐助に呼ばれた。丹波たちも戻ってきているようだ。俺は、鼓動が収まるのを待って、大広間に向かった。


女性の耐性がないので、恐らく今後も滅茶苦茶奥手の男です。かくいう私も俗にいう草食男子なので、夢でもそこは変えられないのです。

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