2回 南部晴政
「面を上げられよ、今後はそなたも南部家の一門。そんなに礼を尽くされては、儂が話しにくい。ほれ、良いから面をあげよ」
随分、気さくな方だ。丹波から話は聞いていたが、本当に壁を作らない方のようだ。この時代の武将としては珍しいものだ。
俺が顔を上げて、彼の方を見ると、変顔をした彼の顔がすぐ近くにあった。上座から降りて俺たちの目の前まで来ていたのだ。俺は、驚き以上に予想以上に面白い顔にこらえきれず…
「…プッ」
「お!ようやく笑ったの。」
「私を笑わせるためにこのようなことを?」
「そうよ。そなたの身の上は、丹波からよく聞いておる。そなたの考えた農法は、南部家の家臣達から好評なのよ。このようなことを考える者とは、どんな奴なのかと家臣達と予想しておったのだが、外れたようだ。」
「そうでしょうか?」
「もっと、堅物のような男と思っていたのだが、優しそうな面構えをしておるな。そなた戦の経験は?」
「小競り合いならば」
「蒼次郎様、あれは戦ではございません。」
「小競り合いとは?」
信綱は、4年前の出来事を簡潔に晴政殿に伝えた。彼は、聞き上手であった。戦闘の話に入ると、一喜一憂し、話し手である信綱が気分良く話せているのがよく分かる。俺と柏山明国との一戦には、より一層興奮したように聞いていた。
「そうか…、つまり!剣の腕は、相当のものだということだな?」
「え…それは…。」
「「「「「「「間違いございません!!」」」」」」」
「あはは、家臣に慕われておるようだな。そのうえ、剣豪と名高いご両名が認めているのであれば、確実であろう?特に塚原殿から長期間に渡って教えを与えられておるとは、羨ましい限りよ。」
「それは…そうですね。良い家臣に恵まれております。」
「ならば、その実力みせてほしい。」
「はい?」
「兵は、儂が連れてきた1000名を使え。」
「そもそも、どこを攻めるのでしょうか?」
「む?斯波から聞いておらんか?」
俺は、信綱と卜伝を見る。二人とも首を横に振っている。それならばと丹波と佐助にふるが、二人とも知らないようだ。その後、詮真殿を見るといつの間にか居なくなっていた。言い忘れたことで叱責されると思い、逃げたのだろう。
「聞いていないようですね。」
「まぁ、いい。奴には後ほど儂から言っておく。」
「それで、何処を…?」
「花巻城だ。」
「花巻城ということは、相手は、稗貫輝時ということでしょうか?」
「ぬ?知っておったのか?」
「奥州の大名や名のある武将のことは、大体頭に入っております。」
「忍の力か…。よし、それがわかっているなら、話が早い。奴らは、我らの勧告に何も返答もしておらん。それどころか、使者を殺しおった。もう、我慢ならん。」
「確か、斯波家は、同じことをして、いくつかの砦を落とされ、従属を約束したのでしたね。」
「そうだ。本当によく知っているな。」
「今回は、どのように?」
「どこまでできる?あそこはそれでも堅城だぞ?」
「落城させよと命じられれば、そのようにいたします。」
「できるのか?」
「私の配下は、ここにいる8名だけではありません。近くに待機している忍び衆に招集をかければ、500程度は集まります。」
「そんなにか!では、わしの兵はどうする?」
「正面から奴らの気を引いていただけますか?その間に城内に侵入し、敵将を討ち取ってまいります。」
「よかろう。では、亥の刻に始める。それまでに支度しておくのだ。」
マジかよ、晴政殿に出会ってからたったの2-30分で初戦の予定が決まってしまった。
すみません。今回は、短めです。みなさん、良いお年を!




