18回 冤罪かけられているので、父上に相談しよう
「蒼次郎、父である儂を裏切るとはどういうことだ!あれほど目をかけてやったというのに。」
家臣団に囲まれた俺を説教するダメ親(晴宗)が、俺を問い詰めている。彦太郎も母上も俺を蔑む目を向けている。彼女の傍には最上家の家臣らしき男。まさに追放イベントの真っただ中なわけだが、どうしてこうなったのかといえば…それは、昨日にさかのぼる
「伊達蒼次郎、謀反の疑いがある。晴宗様の御前に出頭せよ!」
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「…は?」
俺は、驚愕の一言を前に固まってしまった。束の間の静寂の後、我を取り戻した俺は、よく意味の分からないことを口走っているこの馬鹿な男に質問を投げかけてみた
「謀反と申されましたが、私が何をしたと?」
「何をしらばっくれておる。晴宗様を亡き者にするため、兵を募っていだろう?」
「は…?仮にあなたの予想が正しいとして、兵を募ろうにも私にはそのための資金がありませんが?」
「商人たちと良からぬことを企んでいるだろう。」
「民の暮らしを豊かにすることが謀反人のすることなのですか?」
「!?そ…それは。なら、一揆を先導していることはどう説明するのだ!」
「それもおかしいですよ。最近は、私の改革で以前と同様の税率でも農民たちが十分に豊かな暮らしができるようになったと家臣団の皆さんから聞いております。それにここ1年領内において一揆は発生していません。説明頂けますか、どこで一揆が発生しているのか。」
「それは…」
「おや?説明できないのですか?もしや、先程までのお話はあなたの作ったデタラメだったと?嫡男である私を騙したとなれば、たとえ家老のあなたと言え、ただではすみませんよ?」
「とにかく、出頭せよ。これは、晴宗様のご命令である。」
「では、支度をしたらこちらから出向きますので、皆さんはお帰りください。何、心配はいりません。私は、逃げも隠れもいたしません。」
「それは認めん。今すぐ来い。」
「断る。疑いすら不明確であるにもかかわらず、犯罪者扱いされては叶わん。せめて、身なりは整えさせてもらう。」
俺が屋敷の中に向かうと周りを足軽が4名で囲んだ。
「抵抗するようなら力づくで構わん殿より仰せつかっている。ケガしたくなければ、おとなしく従え。」
「君たちこそ、死にたくなかったら、回れ右して帰ることだね。」
俺が、気にも留めないように歩き出すと…
「やれ、多少痛めつけても構わん」
4人同時に斬りかかってきたが、こちとら4年間民の生活改善だけをしていたわけではない。信綱と卜伝には免許皆伝をもらい、奥義を教わっている。それに加え、かれらの流派に俺の我流を加え、人を殺すための剣術「斬殺剣」を磨き上げてきた。さらに、島清興・渡辺勘兵衛・加藤嘉明とも定期的に手合わせしているので、そこらの雑兵など相手にもならない。
俺は、足軽達の両手を切り飛ばした上で、庭へと蹴り飛ばした。叫び声を上げていたが、少し立つと出血多量でその声も消えた。
自分の予想外の事で焦った彼は、刀を抜いて、切りかかってきた。構えも刀の握り方もお粗末なものだ。型しか知らないのだろう。
俺は、彼の手から刀を巻き上げると、その刀を片手に持ち、彼の首に刃を当てた。
その時だった…
「そこまでだ、蒼次郎。」
声の主は、驚くべきことに、俺の父親である伊達晴宗その人であった。
「…父上?」
「何をやっておる。」
父は、俺に疑惑の目を向けている。これまでの一部始終を見ていない人間からしたら、俺が家老を手に掛けようとしているようにしか見えないからだ。
「この者が私を謀反人として、出頭を命じてきましたので、正装に着替えようとしたところ、斬りかかって参りましたので、護衛を討ち果たし、この者を今から殺そうとしている次第です。」
「私は、そのような命令は出しておらんが?」
「は?」
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父上と話し合ったことでようやく状況が見えてきた。何でも最近、葛西家と相馬家、芦名家が攻勢に出てきたらしく伊達家単独では撃退が難しく、最上家との共同戦線を敷くことになったらしい。そして、片倉は俺が家臣たちの信頼を得て、加えて家臣達が、俺を当主に据えることで彼を追い落とそうとしていると考えたようで、父上に何も言わずに俺の追放を画策したようであった。
「どうするつもりだ。片倉を謀反人として討ち果たすか?この状況を考えれば、流石の奴も言い逃れは出来んが。」
奴は、父上の姿を見た途端逃げていった。現行犯だった。その場にいたら、問答無用で打ち首になっていただろう。そこまで馬鹿ではなかったようだ。
「そんなことをすれば、伊達領内が割れますよ。私を押すものと、彦太郎を押すもの。これをご覧ください。」
俺は、父上の前に一通の文を取り出す。
「…こ、これは!?」
「はい、母上と最上家との密書です。」
俺は、伊賀衆を使って追放後の生活の保障と近隣大名の身辺調査、他家領内の地図の作成を命じていた。当時の忍は、泥をすするような貧しい生活をしていたが、俺は、改革が進み、土地や資金を父上から頂いて家臣たちに与えていた。それ以来丹波は、俺に絶対の忠誠を約束してくれていた。この文は、彼が母の密偵を殺めて手にしたものだった。最初は直接告発するつもりだったが、中身を見て考えを変えた。
「そなたの暗殺計画…。」
「伊達家を豊かにして領民から慕われる俺は、最上にとって邪魔な存在。最上にとっては、未熟な彦太郎に家督を継がせて傀儡にしたいのでしょう。そうなれば、伊達は、いずれ最上に飲み込まれる。」
「何ということだ…。なら、蒼次郎はどうする?」
「大人しく身を引きますよ。」
「死ぬつもり…か?」
「まさか、そんな愚かなことは致しません。」
「ならばどうする?」
「父上は、斯波家が南部家に臣従したことはご存じでしたか?」
「な…なに!?それは本当なのか?」
「ええ。」
「では、南部領内へ亡命するのか?だが、葛西はどうする?」
「極秘事項ではありますが、抜け道があります。それに亡命ではありません。形式上では、南部家に養子として入ることになります。南部本家には、私にとって都合のいいことに嫡男がおりません。私の忍びに以前から接触して頂いておりましてね。この4年間の成果と4年前の1件の話に興味を持っていただけたようで。」
「いつの間に、そのような…。」
「参考までにお聞きします。母上は、2年ほど前から最上との連絡を密にしておりましたが、お気づきでしたか?」
「…」
いやらしい質問だったか。彼が妻のかすかな変化に気付けるはずもない。彼は、小競り合いも含めて年がら年中戦ばかりに明け暮れるような戦人なのだ。悪い人ではないが、良い父親ではなかった。
「先方は、斯波・葛西家境界に兵を置き迎える準備は済んだと連絡がありました。」
「儂にできることはないか?」
「幾つか。まず、信綱や卜伝たちの居場所はわかりますか?」
「今朝のうちに宗秀の居城へと向かったようだ。片倉の手のものは、空になった屋敷に戸惑ったようだ。先んじて気づいておったのだろう。」
「次に、旅費として十分な金子と馬を私を含め、7名分お願いします。それと、鎧兜一式と刀と脇差を一振りずつ。こちらは5名分を願いします。」
「宗秀の下へ届けておけばよいか?」
「はい。」
「わかった。至急用意させよう。」
「最後に、」
「何だ?」
「一芝居打ってください。」
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「…は?」




