17回 俺が謀反人?
あれから4年がたち、俺は、14歳になった。俺が始めた農業改革は、順調に進み、伊達領内に住まう民の顔には喜び満ちている。小さな村から始めた改革は、1年目の結果から領内全体へと広がった。1年で前年度と比較して2倍の収穫量を挙げ、伊達晴宗の名を借りて、領内に新しい農業の技術を広めた。父上の名を使ったが、実行したのは俺、蒼次郎であって、武家の棟梁にもかかわらず、農民に交じって改革を進めた俺は、風雲児、うつけ者など様々に呼ばれたが、農民たちからの評判は高く、俺の屋敷には頻繁に彼らが出入りするようになった。
それだけではない。俺は新規事業として真珠の養殖を始めた。その売り上げは、中々のものでうわさを聞き付けた領内の大商人と密約を交わし、養殖の権利を譲渡した。その条件とは
1、商家の護衛or労働力として黒葉佩衆を置き、他国の情報や領内の情報を俺の下へ、
定期的に届けること。
2、養殖の利益の3割を俺の下へ届けること。
3、養殖の提案をしたのは、俺ではなく、小梁川宗秀とすること。
4、養殖の技術を他家に流さず、秘伝とすること。
以上の4つである。向こうとしても、大した負担にはならなかったので、即座に了承をもらった。俺が何をしたかったと言えば、本拠に黒葉佩衆の拠点を設けて、俺が追放されてからも、情報を手に入れやすくすること。そして、小梁川の立場を回復させ、有力な味方を増やすことだった。勿論、農村にも俺の手の者を潜ませているので、領内の情報や情勢は、どこにいても手に取るにように分かる。最初は数名だった黒葉佩衆も今や、100名を超える大所帯となっている。そのうちの精鋭12名が俺の護衛兼側仕えとして、屋敷に住んでいる。因みにこの中には佐助が連れてきた伊賀者は含まれていない。彼らには別の重大な役を任せていて、皆領内にいない。
以前、農村から助け出した少女は奈央と呼ばれていたらしく、俺の屋敷で女中見習いをしている。
この4年間で俺は内密に味方を増やしてきた。
遠藤基信
桑折貞長
牧野久仲
富塚宗綱
浜田宗景
以上の5名である。
なぜ彼らかといえば、後に伊達輝宗に殺される運命にあるものの、優秀な家臣達であるからだ。特に桑折、牧野、浜田は伊達家代々の宿老であり、彼らは勇将であった。しかし、宗秀同様に片倉に追い落とされ、影響力が低下している。そこで、父上に不満を持つ民が増えてきたことを伝え、宿老として返り咲かせる代わりに俺の後押しを約束させたわけである。
他の二名は、没落家の再興を願っていて、後に輝宗に拾われるのであるが、先に拾ったわけである。農民たちを先導しているのは、勿論俺であるが、実行しているのは、佐助と丹波なので、心配はしていなかったが…。
しかし、人生とは思いもしないことが、当たり前のように起きるのである。
何時ものように、屋敷の軒下で奈央の出す茶を飲んでいると、騎馬が駆ける音が聞こえた。それも一騎ではない。複数の騎馬が駆ける音である。近隣の村でまた小競り合いでもしているんだろうか?でも、そんな話はうちの連中からも聞かなかったし、小梁川からもそんな報告は入ってない。そもそも、今日は朝から屋敷の女中もそわそわしてるし、側近連中に至っては、顔も見ていない。
そうこうしているうちに、騎馬の音はどうしてか俺のいるこの屋敷に近づいてきた。そして、彼らは俺の屋敷の前で止まると、馬から降りて俺に近づいてきた。
見たところ、片倉家の片倉景時のようだ。宗秀から家老の座を奪った男。剣の腕はそこそこだけど、智謀に優れていて、最上家との関係を盤石にしているって、佐助がいってたな。
彼は、悪魔のような笑みを浮かべると俺に近づき、言い放った。
「伊達蒼次郎、謀反の疑いがある。晴宗様の御前に出頭せよ!」
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「…は?」




