16回 民の暮らしを考えてください
「蒼次郎様!井戸になんてことをしているのです!若だけが使うのではありませんぞ。」
「喚くなよ。使い方は今から教えるから。絶対今までの暮らしよりは、楽になるから。」
怒られている俺の前にあるのは、田舎の家でならみたことがあるであろう。ポンプ式の井戸。
なんでこんなものをつけたのかといえば、井戸の水を滑車で汲み上げるのは、大変なうえ面倒くさい限りであるからだ。それにこのタイプの井戸ならば、じいちゃんの家で壊れたやつとか見せてくれたから、内部構造についても大体知っていた。そのため、側近らにも伝えずに内々に城内に雇っている工匠に、設計図を見せたうえで頼み込んで作ってもらったのだ。
「やってみろよ。そうすれば、考えも変わるから。」
ぶつくさ言いながらも、鬼庭は井戸を使ってみた。
「な…なんと!これは、大変楽ですな。…、味も悪くない。これは、革命ですぞ、若!」
「俺は、半刻前からそう言っていたがな。」
俺の独り言なんて意にも返さず、奴は他の者どもにも井戸を使うように勧めた。使ったものはその有用性に驚愕し、俺に近寄ってきては、称賛の言葉をかけてくれた。いつも思うのだが、こいつら側近のくせに俺のこと疑いすぎじゃね?
数刻後…
俺の屋敷には、伊達の家臣団一行や父上、彦太郎、母上がそろって訪れていた。まぁ、うちの奴らが俺が指示してもいないのに、良かれと思って呼び集めてきたようであった。有難迷惑である。この結末は、容易に予想ができる。こいつらまさかとは思うが、10歳の子供に付けて回れなんて言わないよな?流石にそこまで愚かではないだろう。
しかし、これはフラグを立ててしまったようで…
「蒼次郎。これは、素晴らしいものですよ。女中たちも仕事が随分と楽になるでしょう。それだけではありません。民たちの生活も助けることになります。お手柄ですよ、流石は、私の息子です。」
別にあんたは関係ないだろう。でも、これが民の生活の助けになるのは確実だろう。滑車式の井戸は汲み上げるだけでも重労働だが、これならその苦労は省くことが出来る。まだまだ、序の口だが、とりあえずは成功と考えておこう。そう思っていたところへ、戦バカの父上がありえないことを口走った。
「この技術を他国に売れば、相当潤うのではないか?」
でたよ、アホな考え。そんなことしたらこの井戸の有用性が一瞬のうちに消失するでしょうが。しかし、愚かだとしてもこいつは伊達家の棟梁。こう言った途端、周りにいた家臣たちが…
「ぜひ、そういたしましょう。」
「これは高く売れますぞ!」
「流石は、蒼次郎様。」
だが俺としては、いずれ追い出される身としてこんな奴に搾取される通りはないので、抵抗することにした。そもそもこの伊達家は、晴宗が丸森伊達家から独立し、武力政治を始めたことで成り立っているのだが、こいつがもう少し伊達植直と仲良くしていたら、その後の時代も変わってきたのではないかと思う。
「盛り上がっているところ、申し訳ありませぬが、その技術は提供するべきではないかと具申いたします。」
俺の前にそういったのは、伊達家の古参氏族である小梁川である。戦でも常に伊達家の先頭に立ち、勝利を勝ち取ってきた勇将である。
「どういうことだ、わしの命令に背くつもりか?」
「殿の誤った考えを正し、正しき道へ導くことが、私の役目であります。それに、若様は、民のことを考えこれを作ったものと私は考えております。それをたやすく他国に売りさばき、若様の功績を薄めてしまうのはどうかと思いまする。」
最高だ、彼こそ忠臣だよね。伊達政宗で言う片倉小十郎ってとこかな?彼も小十郎の提言によって豊臣に従ったんだよね。そうしなかったら未来はなかったわけだけど。
「私も同じ思いです、父上。」
「何故か訳を儂が納得できるように話せるのであろうな?」
「私が生み出したかったのは、井戸だけではありません。これは、われら伊達家の発展の始まりです。私が元服するまで、技術の他国への転売はお待ちいただけないでしょうか?」
「どうするというのだ?」
「6年間で民の暮らしを一変させて見せます。」
「できなければ?」
「どんな罰でもお受けいたします。」
「それほど自信があるのか?」
「私が今考えていることが、現実に起こすことが出来れば、民の暮らしは一変し、伊達家を潤すことが出来ます。お家の将来のためにも、私に時間をいただきたい。認めていただけませんか、父上。」
「やってみよ。ただし、これほどの啖呵を儂だけでなく、家臣の皆の前で罵ったのだ。お前の技術で何も変革を起こせなかったときは、そなたを後継者から外す。それだけの覚悟を持ってやるのだ。できるか?」
“零”のいうことによれば、俺がこれで失敗したとしても、成功したとしても、俺は伊達家から追い出されることになる。ただ、無能とレッテルを張られて追い出されるのと、自分から身を引くのでは、この世での俺の沽券のかかわる。俺の意思は、彼の言葉を聞くまでもなく、決まっていた。
「無論です!」
「まぁ、そういうことになったから、伊達家の未来と俺の嫡男としての地位のためにも、皆の力を俺に貸してくれ。」
「それは勿論なのですが…」
そういう佐助含め側近らが、呆然としているのは、小梁川宗秀が堂々と俺のそばに控えているからであろう。嫡男とはいえ、10歳の少年に古参の有力氏族の当主が仕えるというのは、現実的にはありえないわけなのであるが、相互に損得感情を持っているので問題もない。
「晴宗様から城下にある村を1つ丸ごと改革のために使って良いと文を頂きましたので、存分におやり下さい。この結果は私の将来もかかっているので、どうかお願い致しまする。」
「じゃあ、丹波」
「はっ!!」
「ここの村周辺の見取り図を早急に作って。詳細に、河川や村の位置、作っている作物の種類や最近の収穫高まで一通りね。」
「畏まりました。では、失礼いたします。」
丹波は、そういうと颯爽と部屋を出ていった。仲間たちを呼ぶ声が聞こえるので、これは大丈夫だろう。
「つぎに信綱と卜伝は、弟子たちを連れてここに記してある材木等の資材を見繕ってきて。それらは、村に運び込んで。」
俺は、信綱に資材を記した文を渡した。俺のやることには、大量の資材が必要なため、2人では対処できる量ではないのだ。
「畏まりました。量が量ですので、われらもこれで失礼いたしまする。」
信綱たちは、俺に礼をとると、そそくさと部屋を出て厩のほうへ向かった。これで、地図と材料は整った。残すは…
「次は、私ですよね?」
「そうだ、佐助。腕の良い木工士と大工を集めておいてくれ。俺の名を使っていいから、伊達家名義で。」
「畏まりました、すぐに行動に移ります。」
「小梁川と鬼庭は、家臣団や父上たちの横やりが入らないように、口添えと見張りを頼む。自分で言うのもあれだが、私の考案した技術は確実に農業に革命を起こすことになるだろう。それを横から奪われたくないのでな。」
「畏まりました。そのように儂等は、影ながら動きましょう。」
さぁ、革命の時間だ!!
たぶん、元服後の主人公の名前が変わります。劉斎ってなんかキモイ。
それと、アイドルを助けたって言ってんのに、一度も登場させられなくてすみません。
今後、展開が激しくなるので、もう少しお待ちください。
それ以前に、現役のアイドルをモチーフにしているのですが、名前が微妙に決まりません。案がありましたら、お聞かせ願いたいです。




