14回 予期せぬ来訪者と勧誘 ②
剣術大会当日…
側近たちに書状を出させて、ちょうど1ヶ月。言い出したら全く聞き耳を持たない伊達家当主、伊達晴宗。仕方がないので、総当たり戦を実施し、最後まで残った者は俺と戦う形式をとることに納得させた。これで、最悪の事態は避けられるだろう。最悪の事態が何って?無能な二世がコネでねじ込まれる可能性だ。
参加者たちに労いの言葉をかけねばならないと、大会会場に向かうと(会場言っても何にもないが。)、既に腕に覚えのあるやつらが集まってきていた。それぞれが目をギラギラさせている。…が、期待できそうな奴らは、いな…い?いや!いた!!それぞれの集団に闘志を内に燃え滾らせている武者が数名。俺が、彼らの方をうかがっていたら、信綱と卜伝が近づいてきた。剣豪の登場に参加者たちは、驚きの表情を浮かべている。
「不安ではありましたが、何とか間に合ったようですな。」
「ほんに、良かったわい。」
「彼らは、2人が呼んだ者たちか?明らかに他の連中と違うようだが?」
「「浪人ですが、腕は確かです。」」
信綱が呼んだのは、まず島清興。島左近の方が聞きなれてるかもしれない。筒井順慶の家臣として松永久秀との筒井城の戦いを通して世に出た男である。しかし、48歳の頃、次の当主であった筒井定次の非道な政治に絶望し、浪人生活を送った。後に石田三成の右腕として、関ヶ原に散った猛将である。そんな男が何故か、ここにいる。そもそも、俺と同い年なはずだが、信綱が言うには、今年が元服の歳らしく。時代錯誤が明確に発生している。まぁ、有能なやつだし、実力は歴史が証明しているからこいつは決まりだろう。
次に、渡辺勘兵衛…。彼のことは知ってる人間の方が少ないのではないだろうか。彼は、主を変えに変えた武将であるが、織田信長や石田三成、藤堂高虎といったそうそうたる戦国武将たちからその武勇を称えられた。知名度は低いものの、槍の使い手としては有名だ。ただ、主君の命でも自分の考えは変えない。頑固者であるため、扱いには十分気を付けなければならない。
続いて卜伝だが、彼は、1人だけのようだ。十分過ぎるが…。
加藤嘉明は、豊臣秀吉の子飼衆で、賤ヶ岳の七本槍・七将の一人。伊予松山藩および陸奥会津藩初代藩主になった人物である。そもそも、この時代には存在しない人物だが、海戦でも地上戦でも奮戦した猛将である。大変有難い。この時点で史実を思いっきり書き換えているわけである。
何だろう…、槍の使い手ばかりだ。俺、槍全く使えないのだけれども。ギリギリ薙刀使えるぐらいだもの。渡辺勘兵衛も弱いわけではないが、2人が異常すぎるんだろう…。
「信綱、勘兵衛殿に勧誘は確定していることを伝えて、止めてここに連れてきてくれ。彼が下がったのちに2人と手合わせをしよう。」
「かしこまりました。」
信綱の言葉を聞いて、何か訴えているようだったが、信綱に指南を受けていたのだろう。諭され、何とか納得したようだった。がっかりした様子でこちらに近づき、膝をついた。
「若君。拙者、渡辺勘兵衛と申します。拙い戦いぶり申し訳がございませぬ。」
「勘兵衛。」
「何でございましょう。」
「刀が苦手なのではないか?」
「どう意味でしょう?」
「伊達家の家臣団にも得物を槍とし、刀を疎かにするものが少なからずいる。あそこの2人もそなたも他のものと比べれば、優秀であるものの、信綱や卜伝が連れてくるものにしては何か足りぬものを感じた。どうだ、私の考えは間違っておるか?」
信綱も卜伝も驚いたような様子で俺の方を掴むと尋ねてきた。木刀を向け合っていた残りの2人も手を止め、耳を傾けている。
「確かにこ奴らは、刀より槍の方が上手く感じていましたが、どうしてそう思ったのです?」
「なに、そう難しいことではない。この者らは、刀の間合いの取り方をしたいなかっただけだ。」
「間合い?」
「ああ。槍の間合いになれている奴は、ついつい癖で相手に対して距離を取ろうとする。槍の長所は、得物の長さにある。これを最大限に有効活用するには、距離を取らねばならん。ただし、刀の場合は逆だ。敵の懐に入らねば、決定打を与えることはできん。その矛盾が、この者らの戦闘には、明確に表れていた。だから、得物が違うのではないかと思ったのだ。」
「「凄い…。」」
「ん?」
「素晴らしいご慧眼です。蒼次郎様!」
「そうだろう、そうだろう。」
卜伝と信綱が俺を持ち上げて(物理的に)褒めてくるので、多少照れはあるものの、嬉しさが勝った俺の鼻は、伸び続けた。
そうこうしていると、島清興と加藤嘉明が俺に向かって、足早に近づいてきた。その異様な雰囲気に危険な香りを察した両剣豪が俺の前に進み出ると、膝をつき、叫んだ。
「「拙者を御傍においてくだされぇぇぇぇー!!!」」
…怖いわ!
予期せぬ来訪者は次回出てくる…と思われます。




