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11回 初戦②

始まったといったが、俺は、時間をかけずに片を付けるつもりでいた。柏山明国の剣の振り方は、明らかに大振りで避けるのは、簡単であろうが、俺は10歳で筋力も体力も元服している奴には到底及ばない。一撃で決めるつもりでいた。だからこそ、奴の自尊心を徹底的に攻めてがむしゃらに斬りかかってくるように仕向けたわけだ。


「死ねええええぇぇぇぇーーーー!!!」


奴が大振りをした瞬間、零からもらった能力の一つ、『見切り』を発動した。何だろうこれは、時間がゆっくりになったように感じた。俺は、奴が刀を振り切った状態にその刀を思いっきり踏みしめ、奴が前のめりになった所を左下から右上へ斬り上げた。


その瞬間…能力を停止させた。


周囲が静まり返っている。葛西の兵は現実から目を背け、信綱と卜伝は、俺の時の声を待っているようだ。佐助に至っては、敵を殺しながら顔だけはこちらに向けている。(怖…)

俺は、奴の髪を掴み胴体から離れた頭を掲げ、腹の底からうなるように吠えた。


「伊達家嫡男…、伊達蒼次郎が、柏山明国を討ち取ったあああぁぁぁー!!」


俺の側近らは、相手をしているものを切り伏せると、俺に駆け寄ってきた。寄って集って俺に労いの言葉をかけてくる。対して、葛西…いや、柏山の兵は、負けるはずがないと確信していたのか、それとも若子に自分たちの大将があっさりと切り伏せられたことが理解できないのか、崩れ落ちたまま動けなくなっていた。


結局俺たち4人だけで、50人強を討ち取ったことになる。信綱と卜伝、佐助だけならもっと倒せたかもしれないが、俺を庇いながら戦っていたから仕方なかったのかもしれない。

伊達家の10歳の嫡男が、葛西家の有力氏族の嫡男を破ったこの戦は、その地の名前から

久留米山の戦いとして、近隣の村伝えに全国に広まっていくこととなる。


そんなことを露にも気にしない俺たちは、鬼庭が到着するまで、少し待つことになった。

…ん?俺は何かを忘れてはいないだろうか。俺がここに来た理由は…、あ…!?

妻帯イベント…、というか、女の子を守るイベントだった気がするのだが、一度も出てこなかった気がする…?もしかして、零も一撃で終わると思っていなかったとか?


『そうだよ!まさか、能力つかって一撃で終わらせるなんて考えてもなかったよ。』


差も当たり前のように、時を止めてぶつくさ言い出す神を名乗るこの男。というか、紙ならこの展開が起きる可能性も予想できたはずだが…。やっぱり偽物なのか?まあ、今はそんなこと考えている場合ではないし、こんなところでこいつと喧嘩している暇はないので、聞いてみることにしよう。


「それで?対象者は一体どこにいるんだい?」


『君の後ろにある納屋だよ。幼い弟と一緒に隠れている。当分は正体を明かさないほうがいいと思うよ。一応助けたとはいえ、彼女たちの両親は殺されているからね。恩人と思うには、時間がかかるんではないか?』


「…わかった。当分は、屋敷で女中として、雇うことにしよう。弟は、小姓として雇えばよいだろう?」


『うん。念を押しとくけど、可愛いからって今は手を出しちゃだめだぞ。』


「五月蠅い。さっさと帰れ。」


『はーい。』


ようやく消えた。時が動き出し、俺は、少し考えた。いきなり、彼女たちを見つけたら、どう考えてもおかしいだろうし、変に思われるだろう。やはりここは…


「佐助。」


「どうしましたか、蒼次郎様。」


「農民の死体が年配者ばかりというのは、おかしくはないか。」


「そういえば…、子供らの姿が見えません。」


「敵兵は、二人が見張っておる。とすると…」


「どこかに隠れておるのでは?」


「我らで探すとしよう。子供だけでは生きてはいけん。世話してやらねば…」

「良いお考えかと存じますが、鬼庭殿にもお手伝い頂いてはどうでしょうか?」


佐助が俺の後方に視線を向けながら、そういうので振り返れば、鬼庭左月斎が100名強の兵を率いて近づいてきた。俺のそばに柏山家の家紋をつけた陣羽織を着た奴、柏山明国の死体と首を見つけ、満面の笑みを浮かべた。信綱が近寄り、何かを伝えると、鬼庭は、後方を振り返り兵たちに叫んだ。


「若君が、柏山家の柏山明国を討ち取られたぞー!!」


兵たちは、驚きから一瞬静まり返ったが、事実を飲み込んだものから称賛の声が上がり始めた。まあ、中には、ボソボソなんか言ってるやつもいるが…。でもこれで、奴を討ち取ったという事実が明るみに出たといえる。伊達蒼次郎としての俺の存在も。俺は、鬼庭に近づき、先程、佐助に伝えたことと同様の話をした。


「確かに、お話は納得いたしました。しかし、蒼次郎様は、お疲れでしょう。初戦だったのです。今連れてきた兵の何名かに探させましょう。」


「…わかった。ただし、乱暴してはならぬ、仕方がなかったとはいえ、親を亡くしたのだ。私の屋敷で従者として雇い、養うつもりだ。」


「わかりました。では、そのようにさせます。後のことは、私が請け負いますので、若様はお城にお戻りください。晴宗様も奥方様も彦太郎様、家臣団の皆様も米沢城で戦果をお待ちしております。若君の御口でお伝えください。」


「では、そうさせてもらおう。佐助!信綱!卜伝!帰城するぞ。」


「「「御意」」」


俺たちは、城へと帰城した。道中、鬼庭がいつの間にか広めていた戦果を聞きつけた領民から感謝や畏敬の言葉をかけられたが、城に着いたとき泣きながら飛びついてきた彦太郎を見たら、俺も泣いてしまった。


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