10回 初戦①
馬で駆けて15分ほど経った時、俺の視界には地獄絵図のような光景が広がった。刀傷によって打ち捨てられた農民の死体があちらこちらに点在している。吐き気がもようしたが、
ギリギリのところで耐えきった。信綱は俺のそばで心配そうに見つめてきた。
「大したものですよ」
「何がだ…?」
「吐かないことがですよ。誰しもこういう光景を初めてみた時は、吐いてしまうものですからね。耐えただけでも、他の連中よりも肝が座っておられます。」
「世辞は、後にしろ。我が民たちにかような姿に変えた者らを許すわけにはいかん。皆、手加減する必要はない。手柄を譲る必要もない。伊達家嫡男の側近として相応しい戦いをせよ」
「「「承知!」」」
俺たちは、袴の裾をたくし上げ、馬に飛び乗り駆けた。少し走ると正に農民を切り伏せようとしている集団を見つけた。俺は、馬から飛び降りると農民とその兵との間に入り、切り伏せた。三つ柏で知られる葛西家の旗が転がっている点からこいつらが葛西家の兵であることは疑いようがない。数は、確認できるだけでも2~30はいる。剣豪を連れているとはいえ、気を引き締めなければならない状況である。柏山家の家紋もある。葛西随一の大勢力である。とは言え、こんなところにいる位だから、元服したてか、ただの能無しかそんなところだろう。俺は、体の奥底から叫んだ。
「伊達家嫡男、伊達蒼次郎がここにおるぞ!私に立ち向かえる武士はいないか。葛西の大勢力の柏山家も能無しの集まりか。恥さらしどもが、さあ、出てこい!」
無論、煽りである。大将を獲ればこっちのもの。あとは烏合の衆だ。何とでもなる。鬼庭がくるまでの時間を稼げればいいのだ。そういいながらも、俺たちは、葛西の兵を切り伏せていく。そうすること、10分後…、4人で最初の集団を切り伏せ終わったとき、
「なかなかやるではないか、伊達家の若造が。」
葛西の兵に囲まれた傲慢そうな青年が、近づいてくる。馬上からさも見下すかのような雰囲気を醸し出しているが、当時の平均身長は、154㎝であり、彼は、150弱であろうか。俺は、元の世界では、190あったから滅茶苦茶低く感じるし、10歳でありながら身長はそう変わらない。あいつとの大きな差は、戦場を軽んじているかどうかと、民を大切にしているかどうかであろう。
それ以上に、通常の刀の1.5倍近くの長尺の大太刀を使っているようだ。ただ、これは馬鹿のことこの上ない。大太刀は、朝倉家の猛将である真柄直隆ぐらいの大柄な豪傑でなければ、扱うことなんかできない。
「葛西の重臣である柏家の方としては、ずいぶんと情けない姿ですね。」
「な…何を!?」
「柏山家の方ともあろう方が、伊達家の若造相手に兵に守ってもらわなければ話すことも出来ないのですか?」
プライドが予想以上に高い様子で、見る見るうちにトマトのように顔を真っ赤に染めた。馬から降りると大太刀を抜き去り、大股で近づいてきた。
「来てやったぞ、このクソガキが…。お前のような奴は、柏山家の嫡男である、この柏山明国が成敗してくれるわ!何をしておる、貴様らはそこの雑兵どもをさっさと片付けよ!」
そう言うと、柏山明国は、上段に構えた。普通では一騎打ちする時に、上段構えをすることは、自殺行為だ。相手が、自分よりも格下ならともかく、相手の力量がわからない状態で、使うのは馬鹿のやること、つまり、彼は、能無しで大正解であったわけだ。
この能無しに対し、俺は、露の構えを執った。これは、大した意味はないけど、昔から不良に絡まれたりするとこの構えで潰してきた。近くに不良のたまり場があって、弱いくせに絡んでくるんだあの馬鹿どもは…。まあ、俺は一応、剣道全国大会優勝経験者。向こうは、イキったチンピラみたいな男、何かこんな奴が初戦とは納得いかないけど、奴が斬りかかってきたことで俺の初戦は始まった。
戦闘の前と後で分けることにしました。時間のこともあるし…。
それと、今更だけど、長男なのに蒼次郎。次郎ってなんか変な気がする。本当に今更なんだが。
直せばいいと思うかもしれないが、ここを変えるとイメージ変わっちゃうから変えられないんだよね。




