9回 城下へ
「兄上!早く起きてください。約束通り今日は私と遊んでいただきますよ!」
「ハイハイ。そんな大きな声を出すなよ。佐助…。厩に行って、私を含めた4人分の馬を連れてきてくれ。お前はいるか?」
「いえ、我々は、影ながら附いてまいります。」
そりゃそうか。忍・忍者集団だからな。忍は、情報収集を主な役割とし、忍者は、暗殺や警護を役割としている。因みに俺が持っている黒脛巾衆は、基本的に忍者が過半数を占めている。昨日から佐助に忍を増やして、領内の城や砦、伊達家に関わる全ての情報を手に入れるように指示を出した。出て行ったあとで、伊達家を奪う時に少しでも楽にしておくためだ。
「じゃあ、信綱と卜伝を呼んできてくれ。」
「かしこまりました。」
「彦太郎…。準備するから信綱の下へ先に行っててくれ。」
「…わかった。早く来てね。」
本当なら鬼庭左月斎も連れていきたかったのだけど、もし葛西の兵が予想以上に侵入していた時に援軍として来てもらうために人を集めて待機してもらうことになった。彼も伊達家の猛将だから来て欲しいが、背に腹は代えられない。援軍の話は彼から、母上に話を通して、承諾を得ている。100人をもし超えていたら呼ばざるをえないだろう。呼ばんと死ぬし。
俺は、準備を開始した。彦太郎は、昨日の母上の注意は既に忘れており、脇差だけ申し訳程度にさして来ていた。平和かぶれしている以上にまだ幼子だから仕方あるまい。でも、鎧をつけていくとさすがに邪魔だし、彦太郎にぶつくさ言われるから、肩衣袴の下に楔帷子を肌着の上から着込んだ。一応、東北の10月ごろなので意外に寒いんだ。元の世界で川崎に住んでいた俺には到底理解できない世界なのだ。要するに、寒いんだここ。
他としては、太刀は鬼丸国綱、脇差として雷切を持った。これなんとなくもらったけど、立花宗茂の愛刀でなかったか?まあ、いいや。これに加えて額当を懐に入れた。
もっと念入りに準備したいが、これ以上は彦太郎が五月蠅そうだから、我慢するとしよう。
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「やっと来た~。」
予想通り、待ちくたびれていたようだ。信綱等は、装備は俺と同じくらい。佐助は完全装備で同じ装いの忍者が4名。彦太郎を逃がすことと、援軍を呼びに行くには十分すぎる数だ。
俺は、彦太郎を宥めながら、馬に跨り城下へと向かった。
俺たちが暮らしている伊達家の居城である米沢城に関する知識は俺には特にない。そもそも、桶狭間以前の知識はほぼないが、俺の目の前に広がる城下は圧巻である。田舎で育ったとはいえ、これほど昔ながらの商屋や長屋が立ち並んでいる風景は、流石の一言である。俺が、伊達家の家紋が入った着物を着ていることから俺たちが伊達本家の男児であると理解した領民達は、土下座や礼を尽くしている。こんな感じは少し忌避感を感じる。四民平等の令和を生きる俺としてはこの環境には慣れない。
城を出てから1時間…
俺たちの目の前に収穫間近の稲穂が広がる金色の草原が現れた。俺たちは、村の入口の小川で遊び始め、疲れたころに昼食を取り、河川敷に横になり、昼寝をしていた。
…何も起きない。零は気を付けるようにと言ってたから、何かしら起きると思って準備してきたが、取り越し苦労だったのだろうか。そう早とちりをしてウトウトし始めた時、側近達と佐助が何かを感じたのか、刀に手をかけ戦闘態勢に入った。
「どうした…、彦太郎が怯えている。少し殺気が漏れているよ。」
「申し訳ございません、蒼次郎様。忍び衆、彦太郎様を城まで護衛せよ。そして鬼庭殿に御報告し、援軍を呼ぶのだ!」
「御意。では彦太郎様、参りましょう。」
「あ…兄上はどうするのです?」
「俺は、嫡男だ。見過ごすわけにもいかん。」
「で…でも。」
「俺の心配をしてくれるなら早く戻って鬼庭を連れてこい。母上にもお伝えし、父上に働きかぇてもらえ。」
「う…うん。」
護衛に連れてきていた黒脛巾衆達は、弟を馬に乗せると走り去っていった。これでもしもの場合が発生しても伊達本家の血縁が途絶えることはない。俺は、側近たちに目配せすると、額当てを付けた。彼らもすぐに戦えるように支度を整えた。俺たちは、馬に跨り、この匂いの発生源、戦場へと駆けた。
もうすぐ、俺の初戦がはじまる。俺は、馬上で武者震いを感じていた。
初戦について早く書きたかったので、今回は短くなってしまいました。彦太郎との直接的関りは、追放後からが多くなってくると予想されます。元々、不遇キャラと考えられますのでなんか申し訳ありません。




