四話:わずかな試練
佑の体を運び去ったサタンは聖地クローディア・イリシスに姿を現した。この聖地は北アメリカ大陸の北東にある小さな島だった。ここには魂の祠と呼ばれる魔法が通用する場所があった。
佑を魂の祠の中の地面に寝せ、体の回りに円型の魔法陣を描いた。そして手を合わせ、呪文を唱えた。
「エガァ……ベァェホア……ヴァイタル……」
すると佑の指先がぴくりと動いた。サタンは笑みを浮かべ、さらに唱えた。背後に迫るアースマンに気づかず。
サタンは呪文を唱え終わり、佑の胸に手を当て低く唸るとともに佑の目が開いた。
「生きて……る?」
「ああ、そうだ。生きてるんだ」
佑の顔には笑みが広がっていた。
「なんで、あのとき俺を……?」
「仕方がなかった。あのとき脱出する術が無かった。だからつれさったっんだ。生きてると人間は運べないからな」
佑はもう一度笑顔を作って見せ、立ち上がった。それと同時にサタンの背後に迫るアースマンに気づき、とっさにサタンに叫ぶ。
「サタン。アースマンだ」
サタンはとっさに振り向いたが遅かった。サタンの胸にアースマンの手に持っていた武器のようなモノが貫く。しかしサタンは抵抗もせずにその場に倒れた。それと同時にサタンの姿は消えた。
サタンは消えてしまい、アースマンと一騎打ちになってしまった。幸い仲間はいないようだ。
アースマンの体は薄緑色をしていて頭部に角のようなものが生えている。人間離れしたその姿はエイリアンに似ていた。ひどく気持ち悪い。右手には弧状をした長い物体を持っている。これでサタンを刺したようだ。
「サタン!いるなら返事をしてくれよ。おい」
上に向かって叫んだが何も聞こえてこない。サタンの倒れた場所に目を落とすと前に渡された蛇彫刻の槍があった。まるで自分を試すかのように。
佑はすぐさま飛びつこうとしたが、サタンに「魂を抜き取られる」と言われていたので警戒をした。じりじりと相手の様子を伺う。アースマンは角を振り上げて威嚇しているかのようだ。目が向き出しになっている。
佑がしゃがむとアースマンは目で追う。
「よし」
独り言のような小さな声で呟き、地面にあった砂を鷲掴みにした。
「目が気持ち悪いんだよ!」
そう言い捨て、砂をアースマンに向かって、思い切り放った。思惑どうり、アースマンは目を押さえてうめいている。その隙に、槍を掴み、迅速に心臓を刺した。するとアースマンの身体がどろどろと崩れさり、薄緑色の山ができた。すぐに槍を抜き、山を蹴った。ざらざらとした砂の感触が靴の上からでも分かった。
「あっけねえ」
佑はその場に座り込んだ。
「倒したみたいだな」
いきなり後ろから声をかけられ振り返るとサタンが立っていた。
「てめっ、生きてたのか」
「腕を拝見した。悪くない。だが、上位アースマンには敵わないな」
佑は項垂れ、地面に置いていた槍を掴んだ。
「その槍は悪しき魂を無に変える。善には利かない」
サタンの説明を訝しげに聞く。
「ところでエンシェント・クライシスってなんだ?」
佑が沈黙を破って言う。サタンは顔色一つ変えない。
「対機動要塞艦隊の事だ」
「対機動要塞!?そんなもん、どこにあるんだ?」
サタンは一瞬微笑したがすぐに真顔に戻った。
「海底神殿だ」
佑の目は大きく見開かれ、数秒何も言えなくなった。




