参話:伊木神
死ぬこと。それを告げられたときは佑は身動き一つ取れなかった。
「死ぬって、どういう事だよ」
「絶命するってことだ」
「その後どうすんだよ!」
語気が荒くなってくる。だんだん息づかいも粗々しくなってきた。サタンはその姿をしげしげと見ている。
「クソッ……なんで……裏切ったのか……?」
「裏切っていない。そのままでいろ。身体を傷つけると後で痛いぞ」
佑はその場に倒れ込み、絶命した。サタンは引きつった笑みを浮かべた。
「これで……」
サタンは佑の死体を抱え、消えた。
爆撃機に乗っている伊木神 羽駒はエースパイロットだった。お国の為に戦い、生き残ったのだ。未だ34歳という若者である。
ある日、
「迎撃部隊の出動だ。すぐに準備をするんだ」
と、上司の海藤 鎌に言われたとき、胸が凍り付くような悪寒に襲われた。ブリッジから見えるように、国会議事堂の上のUFOのようなものがこの国を襲おうとしているのは目に見えていた。勿論抵抗すれば死に至ることも。
「そんな……無理です。私はまだ……」
「私も無理だと言ったよ。しかし国民の被害がとても多い。自衛隊が動くしかあるまい」
海藤も同じ気持ちだと言うことは分かったがやはりまだ死にたくないのだった。
「君しかいないんだ」
「……」
海藤と伊木神の間に長い沈黙が降りた。そして数分が経ち、伊木神が口を開いた。
「分かりました。行ってきます」
「ああ、すまないな」
海藤は申し訳なさそうに項垂れ、海藤は伊木神の後ろ姿を見送った。




