伍話:突っ込み
エースパイロット、伊木神は出撃を任じられた。仕方なく、愛用のM19に乗り込んだ。
「伊木神、すまん。しかし、国の為だ」
「いえ……大丈夫です。覚悟はできてます」
海藤の声が無線機から聞こえなくなった時、伊木神は国会議事堂に向けて、飛び立った。
そのころ佑とサタンは海底神殿があるという太平洋上空に向かって、盗んだ自家用飛行機でフライトしていた。
「こんな遅くて大丈夫なのか?セスナだぜ?」
サタンは何も言わず、ただ操縦桿を握っていた。
伊木神がオーストラリア空軍基地から飛び立ってから数時間。身元不明機をレーダーで感知した。海藤に連絡しようと無線機に口を近付けた。
「海藤さん、聞こえますか?」
「……どうした」
ノイズ混じりの海藤の声はちゃんと判別できた。
「身元不明機を発見しました。呼びかけますか?危険ですし……」
「分かった。呼びかけてくれ」
「了解」
伊木神は海藤との交信を断ち、身元不明機”セスナ”に交信をした。
「こちら空軍、こちら空軍。今すぐ戻るんだ。さもないと命の保証はないぞ。聞こえてるなら応答しろ……」
機体が日本に吸い寄せられていく危機感を感じ、焦った。
しばらくフライトをしていると空軍からの交信があった。
「おい、空軍からだって。どうする?」
「適当に応答しとけ」
横から吐き捨てるようにサタンが言う。渋々佑は無線機で応答する。
「こちらセスナ。良い天気ですね」
”そんな事を言ってる場合じゃない。はやく引き返せ”
怒鳴る寸前の声が聞こえる。歳は20代だろうか。
「え?何だって?よく聞こえんなぁ」
”セスナ機、二人乗ってるな?機関銃で撃ち落とそうか?”
横でサタンが聞いてたらしく、無線機を貸せと言ってくる。大きく目を見開いている。
「おまえ、俺が見えるのか?」
”は?なに言ってるんだ?距離が近いんだから当たり前だろ”
すでにM19とセスナとの距離は数十メートルに縮まっていた。サタンは額に汗をかいている。ここまで動揺したところを見たのは初めてだ。
「どうやら、もう一人いたらしい」
サタンは無線機を取り落とした。佑はサタンが言ってることを理解できず、首を傾げた。
「俺らについてこい」
サタンは急に無線機に向かって言った。
”何言ってんだ?お前らがついてこ……」
相手が言い終わる前にサタンは操縦桿をグンと下げた。
「おい、何すんだよ」
佑が嘆く。しかしサタンは何も言わない。無視タイムが始まった。
”おい、どこへ行くんだ?海につっこむ気か?”
すでにセスナの機体は海と直角になっていた。
「おい、サタン。やべぇって。死んじまうよ」
”何をする気だ?”
「いいからついてこい。怖いのか?」
無視をされた佑はムッとして黙り込んだ。
”わかった。ついていってやる”
「それで良い」
サタンは突然無線機を投げ出し、交信を断った。
「行くぞ小僧。楽しいパーティーの始まりだ」
「助けてくれぇぇ」
サタンの目は海面に向かっていた。どんどん速度を上げ、急降下をする。佑はおびえきって、震えている。M19は後ろにつき、速度を上げている。
「ミルト……レバァド」
海面にぶつかる瞬間にサタンはまた呪文を唱えた。どんな意味かは分からないが。
次の瞬間、セスナとM19は海面につっこみ、粉々になった。




