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『魔王城のWi-Fiだけ異常に強い件』  作者: 断捨離


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第二十一話 勇者軍、魔王飯配信に視聴者を取られる


 勇者軍本部。

 空気は重かった。


「……また減ってる」


 勇者が静かに呟く。

 目の前の魔導モニター。


【同時接続数】


 右肩下がり。

 じわじわ減っている。

 その横で、金髪の勇者が頭を抱えていた。


「なんでだよ……!」


 さらにその隣で、黒髪の青年が無表情にログを見ている。

 勇者軍通信技術顧問、相馬カイ。

 主人公と同じ転移者だった。


「原因は明確です」


「なに!?」


「魔王飯配信です」


 沈黙。

 勇者軍会議室が静まり返る。

 勇者が震える声で言った。


「……また飯?」


「また飯です」


 モニターには現在配信中の魔王チャンネル。

【深夜限定! 超巨大プリン作る】

 同時接続。

 八十万。


「化け物か!?」


 勇者軍広報担当が泣きそうだった。


「うちの“勇者、伝説の剣を抜く”より伸びてます!」


「なんでだよ!!」


 コメント欄。


【飯きた】

【また夜中に見るんじゃなかった】

【勇者軍から来ました】

【もう戦争やめて料理対決しろ】


 勇者が机に突っ伏した。


「もう嫌だ……」


 カイは冷静だった。


「分析します」


「頼む!」


 カイはモニターを操作する。


「魔王配信の強みは三つ」


「おお」


「まず、“事故率”」


「事故率?」


「何か起きそう感です」


 沈黙。


「たしかに……」


「毎回なんか燃えるし……」


 勇者軍技術者たちが頷く。

 カイは続けた。


「次に、“コメント欄のライブ感”」


「なるほど……」


「そして最後に――」


 モニターへ映る魔王。

 巨大プリンの前でドヤ顔している。


「“なんか放っておけない感”です」


 勇者軍が静まり返った。

 勇者が小さく呟く。


「マスコットか?」


「かなり近いです」


 その時。

 勇者軍通信兵が飛び込んできた。


「大変です!」


「今度は何だ!」


「魔王軍、“プリン揺らしたら崩れるか検証”始めました!」


「始めるな!!」


 モニターを見る。

 コメント欄大盛り上がり。


【やめろ】

【絶対崩れる】

【フラグ】

【回線も崩れそう】


 勇者軍側でもコメント監視してるのか。

 カイが静かに言った。


「……強い」


「何が」


「“見届けたくなる配信”になっています」


 勇者が頭を抱える。


「こっちは世界救ってるのに……」


「視聴者はプリン見てます」


「なんで!?」


 その時。

 魔王側配信。

 巨大プリン崩壊。

 コメント欄爆速。


【うわぁぁぁ】

【やっぱり】

【草】

【床いった】


 同時接続。

 九十万突破。

 勇者軍会議室が死んだ。


「……負けた」


 勇者が遠い目をする。


「我々はプリンに負けた」


 するとカイが小さく言った。


「対抗策があります」


 全員が顔を上げる。


「本当か!?」


「はい」


 カイは静かにモニターを切り替えた。


【企画案】

『勇者、初めて料理する』

 沈黙。

 勇者が固まる。


「……え?」


「視聴者は“完璧な勇者”より、“失敗する人”を見たがります」


「嫌な分析するな!?」


「あと勇者様、包丁使えませんよね」


「なんで知っている!?」


 カイが真顔で答える。


「以前、“リンゴ剥き耐久配信”で炎上したので」


「黒歴史掘り返すな!!」


 その時。

 通信兵が再び叫ぶ。


「大変です!」


「まだあるの!?」


「魔王軍、次回予告出しました!」


 嫌な予感しかしない。

 モニター表示。


【次回】

『魔王城巨大プリン、なぜか爆発する』


 勇者軍が静まり返る。

 そしてカイが小さく呟いた。


「……配信屋の発想だな」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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