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『魔王城のWi-Fiだけ異常に強い件』  作者: 断捨離


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20/26

第二十話 魔王様、コメント欄が無法地帯です


 魔王がコメント制限された翌日。

 通信局は妙な静けさに包まれていた。


「……平和だ」


「コメント欄が荒れてない……」


「魔王様が喋れないだけでこんなに……」


 通信局員たちがしみじみしていた。

 魔王は隅で膝を抱えている。


「余、配信向いてない?」


「むしろ今までよく炎上だけで済んでいましたね」


 俺はログを見ながら答えた。

 実際、コメント負荷は大幅減少していた。

 原因の八割くらい魔王だった。

 その時。

 若い通信局員が慌てて駆け込んできた。


「大変です!!」


「今日は何です」


「コメント欄に変なのいます!!」


「いつもでは?」


「今回はもっと変です!」


 管理画面を見る。

 コメント欄。


【魔王しね】

【回線落ちろ】

【ドラゴン鍋まずそう】


「最後は好みだろ」


 だが。

 問題はそこではなかった。

 同じアカウント。

 異常な速度。

 連投。


「……荒らしですね」


「またか!」


「スパム突破してる!」


 しかも。

 投稿内容がどんどん悪化していた。


【魔王城爆破予告】

【南部回線弱点知ってる】

【次落とす】

 

通信局の空気が変わる。

 レヴィアが剣へ手をかけた。


「敵か」


「たぶん愉快犯ですね」


「ゆかい……?」


「面白半分の迷惑行為です」


「最低だな」


 その時。

 魔王が小さく言った。


「余、ちょっと返信したい」


「絶対ダメです」


「でも煽られてるし……」


「レスバするトップやめてください」


 俺はログを確認した。

 接続元変更。

 複数アカウント。

 高速切り替え。


「……あー」


「どうした」


「アカウントを作り直しています」


 通信局員たちが青ざめる。


「無限復活!?」


「ゾンビか!?」


「SNSって怖ぇ……」


 俺は少し考えた。

 そして。


「BANします」


 沈黙。


「ばん?」


「利用停止です」


 通信局員たちがざわつく。


「そんなことできるのか!?」


「できます」


「異世界人すげぇ……」


 最近もう様式美だった。

 俺は黒板へ向かう。


【BAN対象】

・荒らし

・脅迫

・迷惑行為

・過度な連投


「おお……」


「治安がある……!」


「文明だ……!」


 すると魔王が手を挙げた。


「質問」


「はい」


「余もBANされる可能性ある?」


「かなりあります」


「なんで!?」


 通信局員全員が頷いた。


「レスバするので……」


「深夜テンション投稿するし……」


「不正投票したし……」


 前科が多かった。

 だが。

 問題は別にあった。


「……ん?」


「どうした」


「この荒らし、普通のBAN効いてない」


 通信局が凍る。


「え?」


「なんで!?」


 ログを見る。

 接続遮断。

 即再接続。

 また遮断。

 また復活。


「うわぁ……」


「しつこい……」


 すると若い通信局員が震える声で言った。


「魔王様みたいだ……」


「やめろ傷つくだろ」


 魔王が地味にショック受けていた。

 俺は設定を確認する。

 そして気づいた。


「……あ」


「何かわかったか?」


「ゲスト接続許可したままだ」


 沈黙。

 通信局員たちが固まる。


「つまり?」


「アカウント作り放題です」


「終わってる!!」


 すると全員の視線が、

ゆっくり魔王へ向く。


「…………」


 魔王が目を逸らした。


「いやその……」


「魔王様?」


 レヴィアの声が低い。


「説明を」


「“誰でも歓迎!”って感じで……」


「配信サイト運営するな!!」


 通信局が崩壊した。


「セキュリティ!!」


「また入口開いてる!!」


「この城ずっと玄関開いてんな!?」


 だが。

 俺は設定を変更する。

 認証追加。

 接続制限。

 荒らし遮断。

 そして。


『対象アカウント BAN完了』


 通信局員たちが歓声を上げた。


「消えた!」


「平和だ!」


「コメント欄が静か!」


 だがその瞬間。

 新アカウント出現。


【真・魔王アンチ】


「増えたぁぁぁ!!」


 通信局が絶叫する。

 コメント欄。


【BANされてて草】

【また来た】

【しぶとい】


 すると魔王が小さく呟いた。


「……なんか人気配信者っぽくなってきた」


「そこだけ前向きになるな」


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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