第十九話 魔王軍、ついに「レート制限」を導入する
不正投票炎上事件の翌日。
魔王城は妙な空気に包まれていた。
コメント欄。
大荒れ。
【魔王に投票権なし】
【民主主義を返せ】
【独裁飯テロ国家】
「世界観どうなっているんだ……」
俺は管理卓でログを見ながら頭を抱えた。
隣でレヴィアが真顔で聞く。
「“炎上”とは戦争か?」
「だいたい精神的な戦争です」
「怖い文化だな」
しかも。
問題はコメントだけじゃなかった。
「……あれ?」
「どうした」
「接続数おかしい」
急激に増えている。
しかも同じ接続元が異常に多い。
通信局員も気づいた。
「なんだこれ!?」
「同じやつが何百回も接続してる!」
「攻撃か!?」
ログを確認。
コメント。
【魔王に投票させろ】
【投票権を返せ】
【自由を】
「めちゃくちゃ抗議されている……」
しかも、一人で数百回送信している。
「スパムですね」
「すぱ……?」
「同じ内容を大量送信する迷惑行為です」
通信局員たちが青ざめる。
「怖っ」
「コメント欄壊れるぞ!」
「回線も重い!」
だが。
俺は少し考えた。
「……これ、逆にちょうどいいか」
「何がだ?」
「レート制限入れます」
沈黙。
「れーと?」
「連続投稿制限です」
通信局員たちがざわつく。
「そんなことできるのか!?」
「できます」
「異世界人すげぇ……」
最近完全に定着していた。
俺は黒板へ向かう。
【レート制限】
・短時間連投禁止
・同時接続制限
・異常投稿遮断
「おお……」
「スパム止まりそう!」
「平和になる!」
すると魔王が手を挙げた。
「質問」
「はい」
「余も制限される?」
「特にされます」
「なんで!?」
通信局員全員が頷いた。
「配信中、百回くらいコメント返すので……」
「レスバ始めるし……」
「感情で投稿するし……」
信用がなかった。
だがその時。
若い通信局員が青ざめる。
「大変です!」
「今度はなんだ」
「勇者軍側、“魔王言論統制事件”って騒いでいます!」
「配信者文化怖ぇぇ!!」
コメント欄を見る。
【自由を奪うな】
【検閲だ】
【魔王軍ひどい】
「完全にSNS炎上じゃねぇか!」
魔王が慌てる。
「ち、違うよ!?」
「余、別に独裁したいわけじゃ……」
「お前、魔王だろ」
「ハッ」
通信局が静まり返った。
魔王が固まる。
「……そうだった」
「忘れるな、自分の立場」
だが。
俺は設定を続けた。
投稿間隔制御。
接続上限制御。
異常連投遮断。
すると――
『負荷低下』
『スパム遮断完了』
通信局員たちが歓声を上げる。
「静かになった!」
「コメント欄まともだ!」
「平和だ……!」
だが。
その瞬間。
管理水晶が赤く点滅した。
『警告』
『遮断数急増』
「……ん?」
ログを見る。
そして固まった。
「…………」
「どうした?」
「一番遮断されてるの、魔王様です」
沈黙。
ゆっくり全員が振り向く。
魔王が魔導端末を隠した。
「魔王様?」
レヴィアの声が低い。
「何をしている」
「いやその……」
「はい」
「コメント返そうとしたら“投稿制限中”って……」
「自分で引っかかってる!!」
通信局が崩壊した。
「ダメだ、このトップ!」
「一番制御必要じゃねぇか!」
「もう専用制限つけよう!」
魔王がショックを受けていた。
「余、荒らし判定された……」
「システムは正直なんですよ」
その時。
コメント欄が流れる。
【魔王、BANされてて草】
【自分の城なのに】
【運営に負ける魔王】
通信局員が真顔で言った。
「魔王様」
「なに」
「次からコメントは一分に一回までです」
「権力弱くない!?」
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