第十八話 魔王様、視聴者参加型企画を思いつく
飯テロ配信は、大成功だった。
いや。
大成功しすぎた。
「同時接続、五十万突破しました!」
「増えすぎ!!」
通信局が悲鳴を上げる。
コメント欄は完全に祭り状態だった。
【デスドラゴン鍋うまそう】
【レシピ教えろ】
【勇者軍だけど通うわ】
【戦争やめて食堂行きたい】
「価値観どうなってるんだこの世界」
しかも。
魔王城食堂の前に、
実際に行列ができ始めていた。
「なんで!?」
レヴィアが窓の外を見る。
「人族まで並んでいるぞ」
「配信見て来たらしいです」
「敵国だぞ!?」
もはや国境が配信に負けていた。
その時。
魔王が机を叩いた。
「よし!」
「嫌な予感」
「次は視聴者参加型だ!」
「やめろ」
だがもう遅い。
魔王の目が、完全にバズを覚えた配信者の目になっていた。
「コメントでメニュー決める!」
「インフラ担当が泣くやつだ」
通信局員たちも青ざめている。
「絶対コメント荒れる……」
「“激辛入れろ”が来るぞ……」
「また回線死ぬ……」
だが魔王は止まらない。
「さらに!」
「まだあるの!?」
「投票機能!」
通信局が凍った。
「……とうひょう?」
「視聴者がボタン押して決める!」
「待ってください」
俺は嫌な予感しかしなかった。
「何人参加想定です?」
「全員」
「死ぬ!!」
通信局員たちが絶叫する。
「五十万人同時投票は無理!!」
「コメント欄でさえ重いのに!!」
だが魔王は不満そうだった。
「でも勇者軍、この前アンケートやっていた」
「対抗心で本番環境を壊すな」
すると若い通信局員が震える声で言った。
「ちなみに勇者軍、その時落ちました」
「でしょうね!!」
だが。
その瞬間。
俺は少し考えた。
「……いや」
「ん?」
「簡易投票ならいけるか」
通信局員たちがこちらを見る。
「本当ですか!?」
「コメント全文処理じゃなくて、番号選択だけなら」
「おお……!」
「負荷減る……!」
魔王が目を輝かせた。
「できる!?」
「できます」
「異世界人すげぇ……」
最近定着してきたなこの反応。
俺は黒板へ向かう。
【投票方式】
1:激辛
2:超激辛
3:もっと激辛
「選択肢終わってる!!」
通信局員が叫ぶ。
魔王は真顔だった。
「飯テロ回だから」
「辛さで世界取ろうとするな」
だが配信は始まった。
【視聴者参加型! 魔王飯決定戦!】
コメント欄爆速。
【きた】
【待ってた】
【また夜中に飯テロ】
【太る】
投票開始。
通信局員たちが固唾を呑んで見守る。
「負荷は!?」
「耐えてます!」
「応答正常!」
「いけるぞ!」
だがその瞬間。
管理水晶が赤く点滅した。
『警告』
『異常投票検知』
「は?」
ログを見る。
そして固まった。
「……なんだこれ」
「どうした!?」
「同一接続から十万票入ってる」
沈黙。
通信局が凍る。
「不正投票!?」
「勇者軍か!?」
さらにログ確認。
接続元。
【魔王城内部】
「…………」
ゆっくり振り向く。
魔王が目を逸らした。
「魔王様?」
レヴィアの声が低い。
「説明を」
魔王が小さく言った。
「……3番食べたかった」
「自作自演するなぁぁぁ!!」
通信局が崩壊した。
「投票の意味!!」
「公平性!!」
「民主主義が死んだ!!」
魔王は慌てて言い訳する。
「だ、だって負けそうだったし!」
「国のトップが不正投票するな!!」
その時。
コメント欄がさらに加速した。
【魔王、不正してて草】
【リアルタイムでバレるな】
【勇者軍より敵っぽい】
「完全に配信のおもちゃになっている……」
通信局員が真顔で言った。
「魔王様」
「なに」
「次から投票権剥奪します」
「独裁国家なのに!?」




