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『魔王城のWi-Fiだけ異常に強い件』  作者: 断捨離


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第十二話 魔王軍、ついに「監視体制」を作る


 南部回線メンテは無事終了した。

 ……いや。

 正確には“だいたい無事”だった。


「爆発しました!」


「したのかよ!!」


 通信局員が泣きながら叫ぶ。


「でも想定範囲内です!」


「想定してたの!?」


「魔王様が“派手な方が盛り上がるかな”って出力を――」


「触るなって言ったよな!?」


 通信局が今日も平常運転だった。

 だが、一つだけ大きな変化があった。

 苦情が少ない。


「……本当に減ってる」


 レヴィアが不思議そうに呟く。


「事前告知しただけなのに」


「利用者って、“知らされない”のが一番ストレスなんですよ」


 俺は管理卓でログを確認しながら答えた。


「止まること自体より、“何が起きてるか分からない”方が怖いんです」


 通信局員たちが深く頷く。


「わかる……」


「突然落ちると心臓止まる……」


「障害か仕様か分からん時が一番怖い……」


 完全に運用保守の会話だった。

 その時。

 若い通信局員が走ってくる。


「大変です!」


「今日は何が落ちた」


「まだ落ちてません!」


「“まだ”って言ったな?」


 通信局員は管理水晶を指差した。


「負荷が上がってます!」


 見る。

 たしかに上昇している。

 だが。


「……これ、別に普通ですね」


「え?」


「利用者増加の範囲です」


 沈黙。

 通信局員たちが固まる。


「わ、分かるんですか?」


「予兆じゃないのか!?」


「今まで全部“なんかヤバそう”で判断してたので……」


「怖すぎる」


 俺は気づいた。

 この通信局、“監視”の概念が弱い。

 見てはいる。

 だが分析していない。


「監視体制作ります」


 その瞬間。

 通信局員たちがざわついた。


「また新システムだ……」


「次は何が始まるんだ……」


「普通の運用です」


 俺は黒板へ向かう。


【監視項目】

・負荷率

・接続数

・応答速度

・エラー率

・異常通信


「おお……」


「整理されてる……」


「見る場所が分かる……!」


 感動されるたびに不安になる。

 すると魔王が後ろから覗き込んだ。


「余、今まで“なんか重い”で判断してた」


「感覚で国家インフラ運営するな」


「でも結構当たるよ?」


「天才型の悪いところ出てるんですよ」


 レヴィアが深く頷いた。


「非常によく分かる」


 どうやら普段から被害を受けているらしい。

 俺はさらに続ける。


「あと、異常検知します」


「異常……?」


「危ない状態になったら通知飛ばすんです」


 沈黙。

 通信局員たちが目を見開いた。


「つまり……」


「?」


「爆発前に分かる!?」


「そこ基準なの?」


 だが彼らは本気だった。

 今までは、“爆発してから障害認定”だったらしい。

 怖い。


「しきい値決めます」


「しきい……?」


「“ここ超えたら危険”って線です」


「天才では?」


「普通です!!」


 その時だった。

 管理水晶が突然光る。


『警告』

『配信帯域上昇』

『危険域到達』


 通信局が凍る。


「えっ」


「もう反応した!?」


 全員が慌ててログを見る。

 原因。


【魔王様、配信開始】


「おい」


 ゆっくり全員が振り向く。

 魔王だった。


「…………」


「魔王様」


 レヴィアが低い声を出す。


「何をしている」


 魔王が小さく魔導端末を隠した。


「いやその……」


「配信禁止では?」


「“監視体制できました記念配信”を……」


「なんで障害フラグを自分で立てるんですか!?」


 通信局員たちが悲鳴を上げる。


「帯域が!」


「急増してる!」


「視聴者二十万超えました!!」


「人気だけはあるな、この魔王!」


 だが。

 その瞬間。

 管理水晶が再び光った。


『異常検知』

『外部高負荷通信』

『勇者軍アクセス増加』


 空気が変わる。

 俺はログを見る。


「……来たな」


 レヴィアが剣に手をかける。


「勇者軍か」


「たぶん、配信に合わせて攻撃しています」


 通信局員たちが青ざめる。


「また配信見られてる!」


「敵、絶対通知ONにしてるだろ!」


 すると魔王が小さく呟いた。


「……人気者では?」


「違います」


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