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『魔王城のWi-Fiだけ異常に強い件』  作者: 断捨離


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第十話 魔王様、それは情報漏洩です


 通信局は重苦しい空気に包まれていた。


「……内通者」


 レヴィアが低く呟く。

 通信局員たちもざわついていた。


「勇者軍、情報早すぎません?」


「昨日の障害まで知ってたぞ……」


「内部しか知らない内容だ……」


 俺も同感だった。

 単なる推測ではない。

 内部構成。

 障害内容。

 運用状況。

 かなり正確に漏れている。


「……ログ見せてください」


 俺は管理卓へ向かった。

 通信履歴。

 接続先。

 外部アクセス。

 不審通信。

 だが――


「……ない」


「見つからんか?」


 レヴィアが聞く。


「外部送信形跡は薄いです」


「つまり?」


「もっと単純かもしれない」


 俺は少し考えた。

 そして。


「ちなみに」


「うん?」


 魔王を見る。


「配信って、コメント欄あります?」


「あるよ?」


「見せてください」


 その瞬間。

 通信局員たちが嫌そうな顔をした。


「……地獄ですよ」


「魔王様、レスバ始めるので」


「国のトップが何しているんですか」


 魔王が目を逸らす。


「だって煽られたし……」


「煽り耐性ゼロか」


 配信記録を開く。

 タイトル一覧。


【雑談】最近の通信障害について語る

【謝罪】第三区画が燃えました

【耐久】落ちるまで配信続ける


「なんで全部フラグなんですか?」


「盛り上がるかなって……」


 そして俺はコメント欄を開いた。

 数秒後。


「…………」


 頭を抱えた。


「なんです?」


 レヴィアが覗き込む。

 そこには魔王のコメント返信履歴が表示されていた。


【コメント】

「南部回線弱くね?」


【魔王】

「今そこ第七塔経由だからね〜」


【コメント】

「結界最近ラグくない?」


【魔王】

「中央制御いじったから!」


【コメント】

「今攻めたら勝てそう」


【魔王】

「北側落ちているだけだから大丈夫!」


「全部喋ってるーーーー!!」


 通信局が凍りつく。

 魔王が目を逸らした。


「いやその……」


「内通者じゃなくて実況解説者じゃねぇか!!」


 通信局員たちが崩れ落ちる。


「終わった……」


「情報戦負けてる……」


「原因トップだ……」


 レヴィアが額を押さえた。


「貴様……」


「ごめん」


「“ごめん”で済む内容ではない」


 俺は深呼吸した。

 なるほど。

 全部繋がった。


「勇者軍、内部侵入していません」


「え?」


「配信見ているだけです」


 沈黙。

 通信局員たちが固まる。


「……そんなアホな」


「いや普通に情報漏れています」


「全部!?」


「全部です」


 魔王が小さく手を挙げた。


「ちなみにスパチャも読んでた」


「やめろ!!」


「“回線頑張ってください”って応援されて嬉しくて……」


「敵だぞそれ!!」


 通信局員が震える声で言った。


「魔王様……」


「はい」


「敵の投げ銭に感謝してたんですか……?」


「うん……」


 場の空気が死んだ。

 だが。

 俺はふと思った。


「……待てよ」


「?」


「逆に使えるな」


 全員がこちらを見る。


「どういう意味だ?」


 レヴィアが聞く。


「向こう、配信情報かなり信用してるんですよね?」


「たぶんな」


「じゃあ――」


 俺は少し笑った。


「嘘流しましょう」


 沈黙。

 そして魔王が目を輝かせた。


「楽しそう!」


「そこでテンション上げないでください」


 だが通信局員たちも気づき始めていた。


「なるほど……」


「偽情報を流すのか」


「情報戦……!」


 俺は黒板へ向かう。


【作戦】

・偽障害情報

・偽回線構成

・偽メンテ時間

・偽弱点


「おお……」


「なんか悪の組織っぽい!」


「魔王軍ですからね?」


 すると魔王が勢いよく立ち上がった。


「よし!」


「なんです」


「タイトル考えた!」


 嫌な予感。


「『重大発表:北部回線、完全終了します』」


「釣りサムネやめろ!!」


「じゃあ“号泣謝罪”入れる?」


「配信者脳が強すぎる!」


 その時。

 通信局員が管理画面を見て叫んだ。


「勇者軍、配信始めました!」


「早っ!?」


「タイトルは――」


 通信局員が引きつった顔で読む。


「『魔王、また喋る』です」


 魔王が小さく胸を張った。


「人気者では?」


「カモにされてるんですよ」


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