第十二話 王国騎士団長カイの帰還
王城で戦勝の報告会が行われ、第二王子レオンハルトの婚約者として、クローデリアも同席した。
そこには戦場で負った重傷から回復したユリウスと、王国騎士団長カイの姿もあった。
クローデリアはカイの姿を再び見られたことに感激して涙をこぼし、隣にいたレオンハルトがそのことに気づいた。
「本当に兄上が助かってよかったな。戦争も終わって、僕もほっとしたよ」
レオンハルトはクローデリアがユリウスのために泣いたのだと思っていたようだった。クローデリアは何も言わず、涙を拭わぬまま頷いた。
報告会が終わり、クローデリアは王城を去る前に、騎士団の詰所に立ち寄った。
カイも報告会から戻ったところだった。
クローデリアはカイを抱きしめたい想いを抑え、その手だけを取った。
婚約者のいる貴族の女性がはしたないと思いながらも、どうしても、少しでもカイに触れたかった。子供の頃は手を握ることなど何でもなかったのに、と昔を懐かしく思った。
「よく無事で帰ってきてくれたわね……」
そう言いながら強くカイの手を握りしめて、離した。
カイは照れくさそうに微笑んだ。
「厳しい戦いだったよ。王都からの援軍がなければ危うかった」
「聖女エリシアのおかげね。あなたも王都に戻ってきて気づいたでしょう?」
「ああ、王都に入った途端、疲れも取れて力がみなぎってくるのを感じた。驚いたよ」
「聖女の守護結界の効果よ。重傷のユリウス殿下も救って、王都での聖女人気はすごいのよ」
するとカイの表情が曇った。
「どうかしたの?」
クローデリアはカイが凱旋してきた騎士団の中で、ひとり浮かない顔をしていたのを思い出していた。
「ユリウス殿下のことなんだが……俺がお守りすると言ったのにあんなことになってしまって……戦いが苛烈で対応がしきれなかった。殿下が傷を負ってから、クローデリアの言っていたことを思い出したんだ。いや、言い訳だな」
「それは仕方ないわ。ユリウス殿下もあなたも、今ここで生きて元気でいるんだからいいじゃない」
「それはそうなんだが……」
「何か気になることでもあるの?」
「俺が油断していたことは否定できない。だけど、ユリウス殿下ほどの騎士が、あんなに簡単に致命傷になりかねない一撃を受けてしまったことが信じられなくて……」
「戦場ではそんなの当たり前じゃない。敵だって命懸けで攻撃してくるのでしょう?」
「それはそうなんだが……」
カイはどうしても納得がいかない様子であった。しかしそのときのクローデリアは、カイが無事であることの事実を噛みしめ、先ほど握った手の感触に幸せを感じていた。




