第499話 このなんとも恥ずかしい種族たちは
悪酔いしまくったヒルダさんは、エミリナさんとの「やきゅうけん」対決で連敗を喫し、ついに下着まで脱ぎ捨て、生まれたままの姿になってしまった。
「ああっ! 暑かったのでちょうどいいですぅっ! とぉっても気持ちいいいいいいいいっ!」
「ちょうどよくないです! 早く服を着て! って、窓枠に足をかけて何してるんですかっ!?」
「ちょっと夜風に当たってきますぅ!」
そう告げて、ヒルダさんは裸のまま窓の外へと身を投げた。
「うああああああああああっ!? 飛び降りたああああああああっ!?」
「ぎゃはははっ、心配は要らねぇよ。この程度の高さで死ぬようなタマじゃねぇからな」
「あ、そうなんですね? じゃあ、大丈夫か……って、ぜんぜん大丈夫じゃない! あんな格好で村の中を徘徊されたら堪ったものじゃない! 瞬間移動!」
僕は慌てて地上へと瞬間移動する。
直後、全裸のヒルダさんが宮殿の外壁を駆け下りてきた。
「ヒルダさんっ、止まって!」
「ひゃっほおおおおおおおおおおっ!」
「おい止まれえええええええっ!」
必死に制止を呼びかけたけれど、謎の奇声を響かせながら僕を無視して走り続けるヒルダさん。
そのままこの時間でもまだ活気に溢れる村の繁華街へと駆けていく。
「な、何だ!?」
「裸の女!?」
「おいおいおいおい!」
異変に気づいた村人たちの注目が集まる。
「みんな、彼女を止めてっ!」
「え、すげぇ美人なんだが」
「ほう、これはこれは……」
「……素晴らしい」
「見惚れてないで止めてってば!」
ダメだ!
男たちは大喜びでガン見しているだけで何の役にも立たない!
だけどそのときだった。
村人の一人が、あることに気づいて怪訝な顔をする。
「ちょっと待て……よく見たら……ついてないか……?」
ん? どういうこと?
「いやいやいや、あんなかわいい子についてるわけ……って、ほんとだ!?」
「マジでついてる!」
「よく見たら胸もないぞ!?」
繁華街がざわつき出す中、たまたま近くを巡回していた僕そっくりの巨人兵――スーパー村長と遭遇する。
「おおおおっ!? 何ですかこれはっ!?」
驚いて足を止めるヒルダさん。
スーパー村長は目の部分が明るい光を放っているため、お陰で彼女の裸がライトアップされてしまった。
胸は完全な絶壁。
そして股の間にぶら下がるアレ。
一瞬露出狂をどうにかすることを忘れ、僕は思わず呟いてしまう。
「ほんとだ……ついてる……」
どうやらヒルダさん、ああ見えて男性だったらしい。
「面目ありません」
翌日、すっかり酔いが醒めたヒルダさんは、昨晩の痴態について知るや五体投地で謝罪してきた。
「久しぶりのお酒で、完全に油断していました。多大なご迷惑をおかけしたこと、心からお詫びいたします」
「う、うん……反省は大事ですね……」
何の反省もないミランダさんとは大違いだ。
ただ、やらかした内容としては、基本家で飲んでいるだけのミランダさんとは大違いで。
「子供たちがほとんど出歩いていない時間帯だったのが、不幸中の幸いですけど、全裸で外を走り回るなんて完全に犯罪です」
「……はい」
ちなみに昨日の痴態を目撃した村の男たちは、
「普通に眼福でした」
「てか、別についてても全然いいよな」
「あれだけ美人なら……」
「むしろ美人な上についてるとか、お得じゃね?」
などと訳の分からないことを言っていた。
一方、同じくアレを見せられた女性たちはというと、
「別に大して気にならなかったわ」
「汚いおっさんのち〇こならあれだけど……」
「奇麗なち〇こだったし大丈夫よ」
「あれはもう女性枠な気がします」
そんな感じの反応だった。
なお、それを聞いたマンタさんが「俺が丸出しにしてたら確実に袋叩きなのにこの違いは何だ!?」と怒っていたけど、マンタさんは汚いから仕方ない。
「邪神討伐を果たすまでは、絶対にお酒を口にしないと誓います」
「邪神討伐云々はともかく、そこまで思い詰まなくても」
「いえ、酒に飲まれるというのは心の弱さが原因です。そしてそのような脆弱な精神性を、邪神に突かれてしまうやもしれません」
「……な、なるほど」
割と本気で邪神との戦いをシミュレートしているみたいだ。
「そういうことなら、お酒を断ってもらっても構いませんが……実はこの村には、他にも似たような酒癖を持つ連中がいるんですよね」
「……へ?」
普段はとても寡黙で大人しいのに、お酒を飲むと我を忘れ、裸になって踊りまくってしまう人たち。
彼らは地下の居住空間でしか、お酒を飲むことが許されていない。
そう。
ドワーフたちだ。
「うぅ……頭が痛いべ……」
「昨晩も、飲み過ぎたみたいだべ……」
「水……誰か……水を……」
彼らの居住区に行ってみると、ちょうど昨晩、酒盛りをしたようで、死屍累々といった有様で地面に転がっている様子を見ることができた。
まぁ昨晩に限らず、しょっちゅうやってるみたいだけど。
「あれ、村長……? 何か御用でやすか……?」
「ドランさん、まずは服を着てください」
「っ!? こ、これは、恥ずかしいところを見られたべっ……」
「もう何度も見てますけどね」
慌ててその辺に転がっていた服を身に着けるドランさん。
「ルートさん、このなんとも恥ずかしい種族たちは?」
「ルークです。あと、辛辣なこと言ってますけど、ヒルダさんと同じですからね? こんな感じで彼らもお酒が入ると悪酔いしちゃって、よく裸になってしまうようなんです。だからこの地下でしかお酒を飲めないルールにしているんですが、ここであればヒルダさんも好きなときにお酒を飲んでいただいても構いませんよ。もちろんさっき仰ったように、完全にお酒を断ってしまってもいいですけど――」
「いえ、これからここで飲むことにします」
即答だった。
もうちょっと迷ってもいいと思うけど!?
この日以来、ドワーフたちの酒盛りに、新しい仲間が加わることになったのだった。
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。





