第496話 手応えあり、でござる
浮遊島に発見した要塞。
僕たちはその内部へと足を踏み入れたのだけれど、そこには侵入者を排除するため様々な仕掛けが待ち構えていた。
とはいえ、こちらはセレンやゴリちゃんを筆頭とする、村の精鋭チームだ。
それらの仕掛けなど、余裕で突破していく――
「天井が落ちてくるわ!?」
「ああんっ、落とし穴よぉおおおおおおん!?」
「み、水攻めだ!」
――と思いきや、割と苦戦させられていた。
「あの塔のときは、先導役のリンダさんや『迷宮探索』のカムルさんがいたからね……」
今日のメンバーは全員が戦闘特化タイプだからなぁ。
「嗅覚には自信があるんだが、トラップはあまりニオイが分からず……」
「生憎と私の黒魔法も探索にはあまり役立たぬのだ……」
ガオガルガさんとビビさんが申し訳なさそうに言う。
もちろん要塞内には魔物もいた。
「「「グルアアアアアッ!!」」」
「ガーゴイルよ!」
一見すると彫刻にしか見えない翼を有する怪物が、いきなり動き出して襲いかかってくるのだ。
石のように硬い身体は防御力が非常に高そうだけれど、
「「「ギャッ!?」」」
あっさり瞬殺された。
うん、魔物相手にはめっぽう強いメンバーだからね。
さらに要塞内には鍵のかかった扉がたくさんあって、特別な仕掛けを解除しなければ、扉が開かないようになっていた。
頭を使う謎解き要素のある仕掛けで、これにも苦戦させられることに。
例えば光の反射パズルなどだ。
天井から差し込む光を、設置されている鏡を駆使することで反射を繰り返し、特定の場所に光を当てるといったものである。
「分かったでござる! この鏡をすべて壊せば扉が開くのでござるな!」
「やめて絶対壊さないで!?」
「むしろ面倒だし、扉ごと壊してしまおうぜ!」
「チェリュウさん!?」
「おらあああああああああっ!」
ドオオオオオオオオオンッ!!
「ちっ、思ったより硬ぇな。だが何度かやってれば――」
パカッ。
「――へ? ぬおおおおおおおっ!?」
「チェリュウさんが落とし穴にいいいいいいいっ!?」
どうやら強引に突破しようとしたらトラップが発動するらしい。
「思ったより高難度の遺跡ね!」
「そうねぇん。魔物は弱いけれど。あ、またガーゴイルよぉん。ふんっ!」
僕たちはなかなか前に進むことができなかった。
落とし穴に落ちて戻されたり、天井が迫ってきて一時撤退したりと、何度も同じ場所を行ったり来たりしているのだ。
「えーと、僕のマップ機能でだいたい内部構造が把握できたし、瞬間移動を駆使してゴールまで行ってしまってもいいけど」
とはいえ、もうこうなったら攻略は遅かれ早かれなので、僕はそんな提案をする。
「何言ってるのよ! そんなつまらない方法で攻略したって、面白くないでしょ!」
……怒られた。
「でも今日のところはいったん村に帰りましょう。瞬間移動を使えば、すぐにこの場所に戻ってこれるわよね?」
「う、うん、できるけど……そこは瞬間移動に頼るんだ」
だいぶ日が暮れてしまったので、僕たちは一度、村に戻るのだった。
何度もトラップに引っかかりつつも、地道に攻略を続けること、数日。
ようやく要塞の最奥へと辿り着いていた。
広大な空間に場違いのような檻が置かれていて、その中に人影があった。
「っ……人がいるわ!」
「若い女性のようねぇん」
「こんな場所にでござるか……?」
みんな驚いてるけど、完全に予想通りだよね。
金色の髪の美女だ。
すぐ傍に突き刺さった剣は見事な意匠が施され、その身を包む鎧は神聖な騎士のようだ。
「見た感じ、とても真面目そうだけど……」
ミランダさんは一番のトラブルメーカーだと断定していたけど、そんなふうには思えなかった。
と、そのときだ。
高い天井から巨大な何かが降ってきた。
「「グルアアアアアアアアアアアアアアッ!!」」
ガーゴイルだ。
ただし、これまでに遭遇してきた個体とはサイズが段違いで、全長五メートルはあるだろうか。
頭部が二つあり、背中の翼は三対六枚、さらに臀部からは尾が三本も伸びている。
「ただのガーゴイルじゃなさそうねぇん!」
「ツインヘッドのガーゴイル、面白そうじゃねぇか!」
「気を付けろ。恐らくこれまでのガーゴイルとは桁違いの強さだ」
ゴリちゃんが筋肉を膨れ上がらせながら構え、チェリュウさんが獰猛に嗤い、ビビさんが注意を促す。
一方の双頭のガーゴイルは、左右そろって口を大きく開けた。
「「「ブレス!?」」」
ゴオオオオオオオオオオオッ!!
吐き出されたのは炎と冷気、二種類のブレスだった。
みんなが慌てて回避する中、双頭のガーゴイルは六枚の翼をはためかせて猛スピードで躍りかかってくる。
真っ先にターゲットになったのは、アカネさんだ。
「ふんっ! 拙者を狙ったのが運の尽きでござるな! 返り討ちでござるよ!」
アカネさんは意気揚々とそう宣言すると、迫りくるガーゴイルを前に自らも距離を詰めていく。
だ、大丈夫かな?
「せえええええええええいっ!」
裂帛の気合と共に刀を振るい、ガーゴイルと交錯する。
「手応えあり、でござる」
アカネさんが呟いた直後、ガーゴイルの巨体に一本の線が走ったかと思うと、ゆっくりと双頭が左右にズレていく。
ずうううううんっ!
やがて真っ二つになると、盛大な音を響かせながら倒れ込んだ。
「アカネさんが……活躍した!?」
「いえ、違うわ」
「え、違うの?」
首を振るセレンの視線を追った先。
そこにいたのは、先ほどまで檻の中にいたはずの金髪女性だった。
「危ないところでしたね」
どうやらガーゴイルを一刀両断したのは、彼女の方だったらしい。
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。





