第495話 賑やかでいいじゃないの
「また何かが村に近づいてきた……?」
マップ機能からの通知を受け、すぐに確認する。
それは南の方角だけれど、スーノのときと同様、空からの接近だった。
「飛行系の魔物? ドラゴンじゃないよね? ……って、めちゃくちゃ大きくない?」
ドラゴンどころじゃない。
マップに表示されたその飛行物体のサイズに僕は唖然とする。
なにせこの村よりも遥かに大きいのだ。
慌てて宮殿のルーフバルコニーに飛び出した僕は、南の空にそれを見た。
「きょ、巨大な岩の塊が……空を飛んでる!?」
このルーフバルコニーから見ても、遥か上空に浮かんでいたのは岩の塊だ。
形状は円に近く、よく見ると断崖絶壁の所々から樹木が生えている。
「もしかして……島?」
山の断面のようにも見えて、岩というより島ではないかとの印象を受けた。
だけど本来なら海に浮かんでいるはずなのに、いかなる現象か、空中を浮遊しながらゆっくりとこっちに近づいてきているのだ。
「島が空を飛ぶなんて……」
「いや、あなたも都市ごと空に浮かせたことあるでしょ?」
愕然としていると、後ろからセレンが突っ込んできた。
言われてみたらそうだけど。
「ていうか、あれ、あなたの仕業じゃないのね」
「違うよ!」
地上を見ると、村人たちも空から近づいてくるそれに気づいた様子だけれど、そこまで驚いている感じじゃなかった。
僕のせいだと思っているのかもしれない。
「まさか、浮遊島ではないか?」
「知ってるの? フィリアさん」
「うむ。世界に数島ほど、あんなふうに空に浮かぶ島があるそうだ」
さすが百年以上も生きているエルフなだけあって、フィリアさんは物知りだ。
「だが私もこの目で見たのは初めてだ」
「ちょっと面白そうね! せっかくだし、上陸して見ましょうよ!」
「いいけど、危険な魔物とかいないかな?」
「いてもおかしくはないだろう。飛行系の生き物を除けば、完全に外界と遮断されているため、独自の魔物が繁殖している可能性もある」
というわけで、しっかり準備を整えてから上陸することにした。
いつもの精鋭メンバーをそろえ、公園に乗って出発だ。
「……空飛ぶ島の神秘性が、村長のせいで薄らいでいる気がする」
「それは言わないでよ、セリウスくん」
ちなみに今回のメンバーは、セレン、ゴリちゃん、セリウスくんとフィリアさん夫婦、サムライのアカネさん、ノエルくんとチェリュウさん夫婦。
そしてガオガルガさんにビビさんと、先日の遺跡調査のときとほぼ同じ面子である。
「あれ? 何か嫌な予感が……いや、気のせいだよね、うん」
幸い浮遊島の進む速度は非常にゆっくりで、簡単に公園を近づかせることができた。
同じ高度まで到達したけれど、島全体を見渡せるよう、いったんさらに上空まで移動させる。
「すごい、本当に島ね!」
「山に森、それにちょっとした湖まであるわねぇん」
「あそこ、何かが動いたでござる!」
「動物か魔物か知らねぇが、少なくとも生き物はいるみてぇだな」
島の広さとしては、村のある荒野の三分の一くらいはあるだろう。
とそこで、ノエルくんがあることに気づく。
「村長……見て……あの山の上に……建物が……」
島の中心にある小高い山。
なだらかな円錐形をしたその山の頂上付近に、確かに建物らしきものがあった。
公園を動かし、その山へと接近していく。
すると見えてきたのは、まるで要塞のような物々しい建造物だった。
「随分と古そうな建物ね」
「何かの遺跡かしらぁん?」
い、遺跡!
僕は言った。
「よし、帰ろう」
「「「え?」」」
みんなが唖然とする中、引き返そうとする。
「ちょっとルーク、何のつもりよ? せっかく楽しそうな遺跡を見つけたんだから、中に入ってみましょうよ!」
「そうねぇん。幻の浮遊島で見つけた謎の遺跡……考えただけでワクワクしちゃうわぁん♡」
「魔物の巣窟になってるかもしれねぇな! 腕が鳴るぜ!」
いやいや、楽しくなんてないから!
「このパターン、どう考えてもあいつらの仲間が封印されてるやつだよ! まさか向こうから村に近づいてくるなんて……っ!」
復活させてしまったら、きっとまたうちで昼間から飲んだくれるに違いない。
「別に、賑やかでいいじゃないの」
「よくないよ! ていうか、セレンは肯定派だったの!?」
セレンも一緒に住んでいるはずなのに、一室を占拠されていても何も言ってこないなと思ってはいたけど、まさか全然気にしてなかったなんて。
結局、戦い好きの面々に押されて、僕はその遺跡の近くに公園を着陸させた。
かなり立派な要塞だ。
周囲をぐるりと囲う外壁はうちの村の城壁に匹敵し、特殊な建材でできているのか風雨による劣化がほとんど見られない。
出入口は一か所しかなかった。
堅牢な二重の扉で守られているけれど、そのいずれもが開け放たれていた。
「どうやら私たちのことを歓迎してくれてるみたいよ」
「……ぜんぜん嬉しくないけど。でも、こんなことならカムルさんを連れてきた方が……いや、むしろ攻略できない方がいいから黙っておくべきか……だけど、そもそもこうなったら攻略されるのは遅かれ早かれだろうし……うーん」
「なにブツブツ言ってるのよ? 行くわよ」
そうして僕たちは浮遊島の要塞へと足を踏み入れたのだった。
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