第491話 もしかして君の友達
「それよりルーク! 八十階層より先はどんなフロアにしたらいいのか、何かアイデアが欲しいんですケド!」
新たにSランクを設ける傍ら、僕はアリーからそんな要求を受けていた。
「うーん、そう言われてもなぁ……もう色んなパターンを出し尽くしちゃって、全然何も浮かばないや」
五階層ごとにフロアの様相を一変させるというルールでやってきたせいで、ここまで本当に様々なアイデアを出してきたのだ。
お陰でもはや何も思いつかない。
「こんなに増えるなら、十階層ごとにすればよかった……」
「今さら言っても後の祭りなんですケド!」
まぁ五階層ごとにしたお陰で多彩な素材やアイテムが入手できるようになり、冒険者がたくさん集まってくれるようになったわけで、十階層ごとだと魅力は半減していただろう。
「……そうだ。ダンジョンのレベルアップで獲得してきた新しい機能の中に、何か面白いものでもないかな?」
「面白い機能……そういえば最近、変な土管を設置できるようになったんですケド!」
「変な土管?」
「潜ったら別の場所にある土管にワープできるんですケド!」
「せめて土管じゃなかったらよかったのに!」
「ちなみになぜか色は緑なんですケド!」
これは使ったら怒られそうな気がするからやめておこう。
「他には何かないの?」
「空中に虹色の道を敷けるようにもなったんですケド!」
「それもダメなやつ!」
特に背景を宇宙色にしたりしては絶対にいけない。
そんな感じで喧々諤々。
僕とアリーは激論を交わしながら(?)、必死に新階層の方向性を煮詰めていくのだった。
「それにしても、このりんご飴というやつは本当に美味いのじゃ! ワイバーンの肉に匹敵するかもしれぬ!」
バリバリシャリシャリという音を響かせながら、赤い髪の幼女が嬉しそうにりんご飴を頬張っている。
あの花火大会の日に食べて以来、ドーラはすっかりハマってしまったらしく、それ目当てに頻繁に村にやってきていた。
……ドナが花火と一緒に打ち上げた大砲にびっくりして「もう二度とこんな危険な村には来ぬのじゃ!」とか言ってたのになぁ。
と、そのとき、僕のマップ機能からとある通知があった。
「敵対的な存在がこっちに近づいてきてる?」
山脈のある方角からだ。
しかもかなりの速度で、表示されている高度の数値から考えて空を飛んでいるようだった。
「またワイバーンかな?」
以前にも一度、山脈に棲息しているワイバーンが、うちの村の動物たちを狙ってやってきたことがあったっけ。
この村の動物たちが強すぎて返り討ちにされてたけど。
通常よりも遥かに大きく成長し、魔物と変わらないようなサイズの動物たちばかりだからね。
やがて宮殿の最上階にあるルーフバルコニーからも、その姿が肉眼でとらえられるようになってきた。
「ワイバーンにしては……大きくない?」
「ですね。鱗の色もワイバーンのそれとは違うように見受けられます」
「ドラゴンかもしれないわね。しかも真っすぐこの宮殿に向かってきてるわ」
ただのワイバーンなら対処は簡単だけど、ドラゴンとなると話は別だ。
すぐに村の精鋭たちに集合を呼びかけようとしたところで、
「って、ドラゴンならここにもいるんだった?」
「む?」
相変わらずりんご飴を頬張り続けているドーラが、僕の視線に気づいて顔を上げる。
「ねぇ、向こうから向かってきてるのはドラゴンだよね?」
僕が指をさした方向を見たドーラは、りんご飴を食べる手を止めた。
「っ……あやつはっ」
「え? もしかして君の友達?」
「あんなやつ、友達なんてものではないのじゃ!」
そうこうしているうちに、そのドラゴンが猛スピードで近づいてきて、やがてこのバルコニーのすぐ手前で急停止した。
猛烈な風が吹き荒れ、吹き飛ばされそうになってしまう。
ワイバーンの数倍もの大きさを持つ、蒼氷のような色合いの鱗のドラゴンだった。
吐息そのものが極寒のようで、周囲の気温がガクッと下がる。
その青いドラゴンと、ドーラがしばし睨み合う。
恐らく念話で何かを言い合っているのだろう。
やがてドーラが深々と溜息を吐いて、
「まったく、何度も言っておるじゃろうが。貴様とやり合う気なんてさらさらないとな」
「どういう関係なの?」
「昔から幾度となくこやつがわらわに一方的に喧嘩を売ってくるのじゃ。前回は百年ほど前のことじゃったかの。仕方なく戦いに応じてやって、返り討ちにしてやったのじゃが、どうやら全然懲りておらぬらしい」
やれやれと面倒そうに肩をすくめるドーラ。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
一方の青いドラゴンは雄叫びを轟かせ、今にもブレスの一つでも放ってきそうな雰囲気だ。
「何かめちゃくちゃ怒ってるけど?」
「言ってやったのじゃ。わらわはこの村の料理を食べるのに忙しいから、お主の相手をしている暇などないとな」
「うん、それ、この村に敵意が向けられちゃわない?」
青いドラゴンは翼をはためかせると、いったん上空へ。
そうして村の上を旋回しつつ、大きく口を開けた。
「やっぱりブレスがきそう!」
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