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かれはロリコンですか?

ブクマありがとうございます!

「本当に、こんな作戦でうまく行くのでしょうか……」


 職員室(という名の薄暗い事務所)で待機していたシャーロットが、不安げに俺に尋ねた。

 しかし、彼女にそう問われても、「大丈夫」と頷くことはできなかった。

 現に俺が不安だし。

 だから、回答もあいまいにならざるを得ない。


「分からん、だが……まき直しは利くと思うし、やってみる価値はあると思う」

「その言葉、信じますからね……?」


 シャーロットはなおも俺の作戦に懐疑的だったが、批判している態度は見受けられなかった。

 きっと、彼女もどうにかしたかったんだろう、この状況を。


 そんなこんなで、児童の登校時間が近づいて来た。

 職員室の窓から、校庭(といっても駅前の広場程度の広さだが……)にチラホラと児童が見えた。

 一人、二人、と児童が校舎の中へと入ってくる。

 俺とシャーロットは時を見計らって、機を待つことにした。

 次第に、教室の方で、ガヤガヤとした声が聞こえてくるようになる。

 どうやら、作戦の第一段階は成功しているようだった。



「うっわ、なにこれ、くっせえ!」

「うわー、先生そーじサボってるー!」

「おい当番だれだよー」

「ねえ、どうするの、先生きちゃうよー!」

「えー、でも、どうすんのー?」


 授業をするための教室から、悲鳴とも怒号ともいえる声がチラホラ聞こえた。

 俺はニヤリと口角を上げる。


「やはりな、シャロ。あいつら、お前が教室を掃除するもんだとばかり思ってたらしいぞ」

「そうですね……、ちょっと忍びないというか……心が痛みますが」

「まあまあ、自分たちで蒔いた火種だしぃ? 子供ってのは痛い目みないと分かんないからなァ?」

「言ってることは正しいはずなのにあなたのゲス顔を見るともの凄く間違ったことをしている気になるんですが……」


 うっせ、生まれつきだ。

 そんな軽口を叩きつつ、狭い廊下を渡り、教室へと入る。

 ガチャッ、と重いドアを開けた瞬間、教室の空気が停止した。


「おはようございまー……って、アレレ?」


 俺は、わざとらしく驚いて見せる。


「なんだこれは……たまげたなあ」


 その言葉に、児童の顔が曇る。

 俺は、さも「どうしようもない事態」に立ち会ったかのような、悲観的な雰囲気を作り出した。


「どうしようか……、もう授業が始まるまで時間が無いぞ……?」

「そうですね、さすがにこれだけの汚れ、私一人では手に負えかねます。汚した子が責任をもって掃除をするべきなのですが……」


 ……チラッ、チラ。

 落胆しているフリをして、薄目を開けて、児童たちを見る。

 生徒たちは、こそこそと話をし始め、目配せで意思疎通をして……。


「……せんせー」


 ――やがて、一人の児童が、俺とシャーロットの前に現れる。

 その児童――黒髪に、犬耳が生えた少年――は、申し訳なさそうに俯いていた。


「……サッジ、あなたが首謀者なのですか?」

「……うん」


 申し訳なさそうに俯く、サッジ少年。

 その沈痛な面持ちに、シャーロットは心打たれたようだ。

 シャーロットは膝屈みになり、その少年を優しく諭す。


「……悪いことをしているのは、分かりますね?」


 慈愛にあふれたシャーロットの表情に、少年は再度、「うん」と頷いた。


「もう、このようなイタズラはしないと、誓えますか?」

「……」


 少年は、俯いていた顔を上げ、シャーロットを見つめた。

 それから、ひとこと。


「隙ありッ‼」


 スポッ、……と、前かがみになっていたシャーロットの股の間を潜り抜けた。

 なんだあのエロガキ⁉(驚愕)

 シャーロットは、笑顔のまま、表情をこわばらせる。

 そして、次の瞬間。


『休みだああああああああああああああああああああああああああ‼』


 ……と、児童は叫び、いっせいに教室の後ろの窓から去っていった。

 一瞬の出来事だった。

 気づけば、教室はもぬけの殻となっていた。


「……」

「……」


 ……後に残される、俺とシャーロット。

 口も開けないまま、二人で茫然と立ち尽くす。


 ……いやあ、まあ、なんか、その。

 ぶっちゃけ甘く見てました、すみません。


「……ウィル?」

「……はい」

「……やっぱり帰っちゃったじゃないですか(呆れ)」

「許してください! なんでもしますから!」

「ん? いま何でもって言いましたね?」

「え、それは……」


 後じさりする俺に、シャーロットは詰め寄ってくる。

 顔が暗い……ってか、相当病んだ表情で俺のことをねめつける。

 なんか「あは、あはは……」ってうわごとのように笑ってるし。

 二次元だと萌えるんだけど現実でやられると超怖い。


「どうするんですかこれぇ……こっから巻き返し効くんですか……?」

「えー、えっと……」


 シャーロットが俺の頬を両手でつかむ。

 ギチギチと嫌な音がした。

 さらにシャーロットは俺に顔を近づける。

 吐息、鼻息が顔にかかる。

 涙目でシャーロットは俺に訴える。


「わたしこれで失職したらあなたに永久就職しますからね……? 養ってくださいね……?」

「も、もうちょっとその……ほら、まだなんとかなるかもしれなくもないこともないじゃん……?」

「あ、あの……せんせー」

「すみません、いま真剣な話をしてるので後にしてください……」

「そ、そうだぞ! ここから先いろんな意味でR-18になりそうだからな! いい子はお(うち)にかえ――ん?」


 刺激的な光景(婉曲表現)を見せまいと手を振ったが、しかし、違和感に気づく。

 見れば、扉の隙間から、そっとこちらを見つめる少女が居た。

 俺は思わず、病み切ったシャーロットを現実へと引き戻す。


「シャロ、おい、あの子」

「なんですか……? こんな不甲斐ない教師にいったいなに――を?」


 シャーロットは俺を突き倒し(痛い)、扉の隙間からこちらを覗いている少女の元に駆け寄った。


「あなたは……」

「……お、おはようございます」


 ぺこり、と顔をわずかに傾ける少女。

 俺たちの作戦は、まだ終わっていなかった。



「クラリス=アトランタ、です……。8さいです」


 お行儀よくちょこんと椅子に座った少女は、そう名乗った。

 農家が多いアルマダの村で、珍しく、都市との貿易によって利益を上げている「アトランタ一家」の子女らしい。

 俺も彼女にならい、礼儀正しく挨拶する。


「どうも……ウィリアム=カーティスです。さんじゅうよ……22歳です」

「いまサラッと年齢詐称しようとしましたね?」


 むしろ22歳の方が詐称してるんですがそれは。

 まあね、この世界では肉体ごと新しくなってるらしいからね、仕方ないね。

 クラリスは、周りをキョロキョロと見まわしたのち、遠慮気味に尋ねた。


「あの……ほかのみんなは?」

「ああ、その……帰っちまった。『こんな教室にいられるか!』って言って」

「え、でも……よごしたのみんなだけど……」

「それな」


 なんというか、さっきから非常識な児童にばかり遭っていてたので、こういう常識的な思考回路を持つ子に出会うと、なんだかホッとする。

 それに……この子、可愛い。

 艶やかなクリームブロンドに、あどけない無垢な瞳。

 今は緊張で顔が強張っているが、きっと笑顔はそうとう眩しいのだろう。

 俺のソウル○ェムが洗われそうでなによりだ。


「……ウィル、いやらしい顔をしてます」

「ば、ばっかお前……教師が子供好きでなくてどうすんだよ!」

「ウィルの言う子供好きはロリコン的ななにかではないですか……?」


 シャーロットが、俺に懐疑的な視線を送った。

 まあ、なんというか、図星であった。

 シャーロットも、なんならあのクソ幼女……じゃなかった、フィオナ校長も、外見だけ見ればかなりの美貌を誇るのだが、残念ながら俺のエクスカリバーはエレクチオンしなかった。


 しかし、この少女は別格だった。

 いや、格別と言ってもいい。

 俺が父親だった毎日ギューってしちゃうレベル。

 もうね、うん、最高(満面の笑み)。


「その気持ち悪い笑みを止めないと喉元を切り裂きますよ」

「ば、バカ、それはマズいだろ!」

「え、あの、その、真面目に受け取らないでほしいのですが……」

「こんないたいけな幼女にそんなスプラッタ見せるわけにはいかないだろ!」

「ああ、どうしよう、ツッコみたいのに言ってることが一応マトモだからツッコめない……!」


 シャーロットの苦悩を尻目に、俺はクラリスお嬢様に尋ねる。

 TE○Aのエリ○ンみたいな、幼女でいながらも独特の(あで)やかさを持つこの子に、俺の胸の高鳴りは抑えられない。


「えっと……あのね、おそーじ、したほうが、いい……ですか……?」

「え、手伝ってくれるの?」


 コクコク、と、その細い首が折れてしまうんじゃないかと心配になるくらいの勢いでうなずいた。

 顔が真っ赤になっているところを見ると、今も緊張でいっぱいなのだろう。


「そうか、じゃあお願いしようかな。一緒に教室を綺麗にしようか!」

「!……、はい!」


 満面の笑みで、クラリスは微笑んだ。

 その笑顔に、俺の心臓はノックアウトされた。

 もうね、うん、隣にシャーロットが居なかったら鼻血を噴き出してるレベル。


「……なんか、納得いかないです。私にはあんな顔も見せてくれないくせに……、声も……」


 隣のシャーロットがブツブツと呟いているが、俺にはまったく気にならなかった。

 うぷぷ、希望の学園が始まっちゃうぞ!


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