第5話♪無自覚無双♪!?
「あぁ〜……食った食った! 倒した5頭だっけ!? 丸っと1頭分を贅沢にBBQで平らげちゃったな!」
「本当にね。あんなにたくさんお肉を食べたのに、胃が全然重くないのが不思議だわ……」
河原での絶品BBQを終え、アーシェスさんと桜子さんが大満足でお腹をパンスパンパンスパンと叩いて見せ、豪快なポーズでドヤ顔を決めていた。
お腹をいっぱいに満たし、僕の淹れた温かい野草茶を飲んだお姉さんたちは、すっかり元気を取り戻して頬を桜色に染めている。
「さてと、それじゃあ残った素材回収に取りかかりましょうか」
「うげ……そうだった。解体作業って血みどろになるし、肉や皮を傷つけないように剥がすの、めちゃくちゃ神経使うんだよなぁ……。4頭分となると日暮れになっちまうぞ」
桜子さんが解体用のナイフを取り出すと、アーシェスさんがうへぇと嫌そうな顔をした。
冒険者にとって、大型魔物4頭分の現場解体は時間も手間もかかる一番面倒な作業らしい。
「あの、残り4頭の解体なら僕がやりましょうか? 宿屋の仕込みで、お父さんと一緒にイノシシや鹿をさばいたことがありますし!」
「え? サンが? でも魔物の皮や肉ってすごく硬いから、プロの解体師でも一頭さばくのに三十分はかかるのよ?」
「へいきです! マイ包丁持ってきてますから!」
僕はマイリュックから、いつも愛用しているマイ出刃包丁を取り出した。
「それじゃあ、いきますね!」
てくてくと近づき、横たわる4頭の暴れ猪の前に立つ。
宿屋の料理人としての経験に、レベル87のバフがかかった腕力。
猪の骨の関節、筋の通り道を頭に浮かべ――。
「――てやんでぇばろぉちくしょーーーっ!!」
「「「「キャラ変!? 運転中ですか!? サンッ!?」」」」
僕の突然の暴走&キレモードに、お姉さんたちの悲鳴とツッコミが響き渡る。
ほんの数十秒。
僕がトンッと包丁を鞘に収めると同時に――。
パカッ♪
まるで熟した果実の皮が剥けるように、4頭すべての『暴れ猪の革』が傷一つなく剥がれ落ち、綺麗に部位分けされた『極上肉』と『魔石』が、スルスルと完璧に分離した。
「……どした?」
エリリカさんのメガネがズリ落ちた。
「な、なにサン切れてる……!? っていうか4頭分の解体が瞬殺!? 刃が肉に引っかかる音すら聞こえなかったんだけど……!?」
「怖ッ!! ガチで……!? 普通もっとさー!?」
「……キレたサンの包丁、もっとキレた……。神業……」
お姉さんたちが口をぐうの音も出ないほど開けて、目を見開いている。
「ええ? そんなに凄いですか? 骨の関節に刃を入れて、筋に沿ってすーっと刃を引いただけですよ?」
「キャラ変自覚あるっ!?!?」
桜子さんが頭を抱えて叫んだ。
夕方、買い取りのために立ち寄った冒険者ギルドの受付。
「……な、なんですかこの完璧すぎる素材はー!? 4頭分の皮にナイフの傷が一切ありませんし、肉の切り口も美しすぎて傷みが全然進んでいません! 買取価格、通常の1.2倍……いや2倍出します!!」
ギルドの査定員さんが大興奮で、ズッシリと重い金貨の袋をドサッと差し出してきた。
「ホントですか!? やったね、桜子さん!」
「ええ……やったわね(色んな意味で……)」
金貨の袋を受け取りながら、桜子さんたちが呆れたように、でも心底愛おしそうな目で僕を見つめてくる。
「戦闘は素人、料理は一流、解体はノーコメ……。サン、あなた本当に何者なのよ……?」
「ただの宿屋の息子です。宿に戻ったら今夜は冷えた果実酒と、お肉に合うおつまみ作りますね!」
「「「「!!」」」」
こうして東の森への遠征は大成功に終わり、僕とお姉さんたちの絆はさらに斜めに深まった!




