↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
料理好きのモブなのに偶然なったドラゴンスレイヤー ~崖から落ちたらレベル87♪徒然と共に  作者: 抹茶ラテ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/6

第3話♪実家の宿屋に徒然が♪

「……はぁ。冒険者なんてやってると、いつ死ぬか分からない緊張感で、まともに息もつけないのよね……」

「わかるわ。街に戻ってきても、頭のどこかで次の依頼や魔物の影を気にしちゃってさ……」


 朝食後のテーブルで、桜子さんとアーシェスさんが遠い目をして呟く。

 過酷なダンジョン攻略と、常に死と隣り合わせの日常。

 街最強パーティと呼ばれていても、彼女たちの心は疲弊しきっていたのだ。

 だけど――と、桜子さんは柔らかく目を細めて僕を見た。


「だけど、マジで美味しいご飯を食べてると……ふっと肩の力が抜けるの。不思議ね」

「へへ、そう言ってもらえると嬉しいです! ……あぅ!」


 ふと、壁の時計を見た僕は、急激に血の気が引いていくのを感じた。


「ど、どうしたのサン? 急に真っ青になって……」

「さ、桜子さん……僕、昨日から実家に一言も連絡なしで無断外泊と、朝の準備もバックれみたいに……!」

「「「「……んぉお」」」」


 静まり返る食堂。

 そうだった。僕は昨日、釣りの途中で崖から落ちて、そのままアジトに一泊してしまったのだ。


「大変! すぐにご両親へ説明に行かなきゃ!」


 スタダダダッとBダッシュで実家へ向かった。


 ◇


「サン――っ!! 無事だったのねぇぇぇ!!」


 実家の宿屋《クロワッサンの香り》の扉を開けた瞬間、涙と鼻水でぐしゃぐしゃのお母さんに絞め殺されそうな勢いで抱きしめられた。

 奥からはお父さんも駆け出してきて、目を真っ赤にしながら拳を振り上げる。


「バカ野郎! どこ行ってたんだ! 街中探したんだぞ! ええい、ごめんなさいで済むと……!」

「待ってくださいお父様! 実はサンくん、昨日は深紅の暴竜を討伐していて……」

「そうそう、それでレベル87のドラゴンスレイヤーになっちゃって――」


 桜子さんたちが助け船を出そうと事情を説明した瞬間。


「「……は?????」」


 お父さんとお母さんは揃って綺麗に静止し、二人で見つめ合って深いため息をついた。


「大嘘つくにしてもねぇ! うちのサンが竜を倒すわけ……」

「本当よ。だからサンを狙う悪党や結界の暴走を防ぐため、私たち『徒然』がこの宿屋を『常宿(拠点)』にして24時間体制で護衛します! もちろん部屋代はきちんと!」

「いきなりっ! なっ……街最強の『徒然』様がうちに!?」

「一番良い特別室、借りてもいいかしら?」

「ほんとうにいいんですかね、ありがとうございます……!」


 こうして、無断外泊で怒られるどころか、我が家が最強パーティのホームベースになるという驚絶のスピード解決を果たしたのだった。


 からのー♪


 ◇


「よし! それじゃあサン、裏庭で『剣の基本構え』を教えるわね!」


 お昼前、宿屋の広い裏庭で桜子さんの指導が始まった。

「いい? まずはこの練習用の木刀をしっかり持って」

「は、はいっ! よろしくお願いします!」


 渡されたのは、初心者用の檜(ひのき)のそこそこ頑丈な木刀だ。

 僕は教えてもらった通り、柄をぎゅっと握りしめた。


 ――メリメリメリメリッ……バシィィンッ!


「「「「……え?」」」」


 手の中で、木刀が木屑(みじんこ)となって粉砕し、風に舞った。

 ……あ。力加減、完全にバグってる。


「ガチ!?……。握力だけで木刀を木粉にしたわ……」

「レベル87の物理腕力……おそろしい子……!」

「ごごごみなさいっ! お詫びに僕、おやつ作ってきますからー!」

「いやいいよって、ちょっ!」


 呼び止められるのも耳に入らないほどパニックになった僕は厨房へ逃げ込み、仕込んでおいた手作りのサクサクお菓子とお茶を用意して裏庭へ連れてきた。


「はいどうぞ! サン特製『焦がしバタークッキー』です!」

「クッキー……? 弓手として体型維持もしなきゃいけないのに、こんな甘いもの……あむっ。――ッ!?」


 一口食べたアーシェスさんの手が止まった。サクサクと軽い食感と、じゅわっと広がる香ばしい焦がしバターの風味が口いっぱいに弾ける。


「んんっ……! なにこれ、全然重くない! 軽くて香ばしくて、何個でも食べられる……! うぅ、美味ぇよぉ……! 食欲ガマンしなくていいなんて……!」


 実はアーシェスさん、「体型管理」と「お腹いっぱい食べたい食欲」の葛藤にずっと悩んでいたらしい。ポロポロと涙を浮かべてクッキーを頬張る彼女に、僕は微笑んだ。


「ふふ、良かったです! 手帳にあった『小麦粉とバターのゴールデン比率』を試してみたんです」

「……絶品。サンのクッキー、ポッケに入れて持ち歩きたい……」


 ディードさんも両手に抱えて幸せそうにモグモグしている。

 と、そこへ息を弾ませたギルドの伝令が走り込んできた。


「桜子! 大変だ! 東の森で大暴れする『暴れ猪(ワイルドボア)』の討伐要請だ!」

「東の森の暴れ猪……? それって、脂が乗った極上の高級肉じゃない!」


 アーシェスさんと桜子さんが同時に立ち上がり、目を爛々と輝かせた。


「決まりね! サン、東の森へ食材集め遠征よ! 暴れ猪を狩って、手帳のレシピにある『特製タレの極上野外BBQ』をやりましょう!」

「野外BBQ!? 任せてください! 特製漬け込みタレ、たっぷり作って持っていきます!」


 こうして、レベル87の僕と最強お姉さんたちの、初となる「高級食材採取(野外BBQ)遠征」が決まったのだった!

第3話までお読みいただきありがとうございます!

無事に実家の宿屋へ戻り、そこが『徒然』の賑やかな拠点になりました! 木刀を一瞬で粉砕しつつも、手作りクッキーでアーシェスさんの食欲と体型維持の悩みを溶かしたサンくん。


次回(明日19:30更新)の第4話からは、いよいよ『東の森・野外BBQ遠征編』がスタート! 襲い来る暴れ猪をサンくんがまさかの方法で一撃調理(!?)し、極上の豪快野外BBQパーティが開催されます!


「サンくんのクッキー食べたい!」「野外BBQ楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で応援していただけると最高に嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。