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予約

『廻天』


第九話 予約が取れない


一週間後。


午前九時五十八分。


カイ。


出勤。


「おはようございまーす。」


返事。


ない。


「……?」


店内。


異様。


電話。


鳴っている。


受付。


客。


いる。


待合。


客。


いる。


スタッフ。


走っている。


電話。


まだ。


鳴っている。


カイ。


「……。」


一歩。


入る。


店員。


カイを見る。


「来た!!」


「え。」


別の店員。


振り返る。


「カイさん来た!!」


「何。」


受付。


叫ぶ。


「電話お願い!!」


「何で!?」


「無理!!」


「何が!?」


「全部!!」


⸻


プルルルル。


電話。


カイ。


取る。


「お電話ありがとうございます――」


『カイさん今日空いてますか?』


「え。」


『六十分で。』


予約表。


見る。


「今日ですか?」


『はい。』


「……。」


朝。


十時。


予約。


十一時半。


予約。


十三時。


予約。


十四時半。


予約。


十六時。


予約。


十七時半。


予約。


十九時。


予約。


カイ。


「空いてないですね。」


『明日は?』


「明日……。」


全部。


埋まっている。


「ないですね。」


『明後日。』


「ないです。」


『いつなら空いてます?』


カイ。


予約表。


スクロール。


「……。」


止まる。


「三週間後。」


電話。


沈黙。


『……三週間?』


「はい。」


『じゃあそこお願いします。』


「取るんだ。」


『え?』


「何でもないです。」


⸻


電話。


切る。


直後。


プルルルル。


カイ。


見る。


プルルルル。


「……。」


受付。


「出て!」


「はい。」


取る。


「お電話ありがとうございます――」


『カイさんの予約を――』


カイ。


電話。


少し。


離す。


「……。」


シュウ。


『人気者だな。』


(なんで。)


『俺が知るか。』


⸻


原因。


美奈子だった。


正確には。


美奈子だけではない。


施術翌日。


美奈子。


友人へ。


「マジで一回行って。」


友人。


来店。


施術。


帰宅。


その友人が。


家族へ。


「マジで一回行って。」


家族。


来店。


さらに。


会社。


知人。


SNS。


口コミ。


広がる。


内容。


だいたい。


同じ。


『一回で身体が全然違う。』


『どこが悪いか言わなくても当てる。』


『今まで受けたのと違う。』


『とにかく一回行って。』


そして。


最悪。


いや。


店としては。


最高のことが起きた。


カイの予約が取れなくなった。


⸻


「じゃあ他の方でも大丈夫ですか?」


受付。


電話。


『今日なら誰でもいいです!』


「少々お待ちください。」


予約表。


見る。


「……。」


他スタッフ。


A。


満席。


B。


満席。


C。


残り一枠。


D。


満席。


受付。


「……。」


「店長!!」


奥。


「何!?」


「もう入らない!!」


「何が!?」


「予約!!」


「そんなことある!?」


⸻


カイ。


施術。


一人目。


「お願いします!」


「はい。」


肩。


触れる。


「……。」


分かる。


以前より。


速い。


一秒。


いや。


触れた瞬間。


どこが。


詰まっている。


どこから。


来ている。


カイ。


「腰からですね。」


客。


「え?」


「肩痛いと思うんですけど。」


「はい。」


「原因、たぶん腰。」


客。


「腰痛くないです。」


「ですよね。」


「……?」


カイ。


腰。


触れる。


流れ。


整える。


客。


肩。


動く。


「……え。」


カイ。


「どう?」


「……。」


肩。


回す。


「え?」


もう一回。


回す。


「何これ。」


カイ。


「軽い?」


「軽いとかじゃなくて。」


客。


起きそうになる。


「まだ途中です。」


「すみません。」


⸻


シュウ。


内側。


『精度が上がっている。』


(分かる。)


『昨日より速い。』


(うん。)


『何故だ。』


カイ。


次。


触れる。


(仕事してるから?)


シュウ。


『戦闘ではなく?』


(戦闘嫌いだし。)


『……。』


(エステの方がいっぱい人に触る。)


シュウ。


沈黙。


『確かに。』


⸻


昼。


休憩。


の予定。


カイ。


バックヤード。


弁当。


開ける。


一口。


食べる。


受付。


顔。


出す。


「カイさん。」


「嫌。」


「まだ何も言ってない。」


「予約でしょ。」


「急患。」


「ここ病院じゃないよ。」


「腰やっちゃったって。」


カイ。


箸。


止まる。


「……。」


シュウ。


『行くのか。』


カイ。


弁当。


閉じる。


「十五分だけ。」


受付。


「神!!」


「休憩返して。」


⸻


夕方。


他のスタッフ。


疲労。


限界。


「無理。」


「まだ三人いる。」


「無理。」


「頑張って。」


「カイさんのせいだからね!?」


カイ。


「俺?」


「口コミ!」


「俺書いてないよ。」


「カイさん目当てで来て!」


別スタッフ。


「空いてないからこっち来るの!」


「いいじゃん。」


「良くない!!」


「何で。」


「忙しい!!」


「店としてはいいじゃん。」


「身体が店じゃない!!」


「なるほど。」


⸻


午後八時四十分。


最終客。


帰る。


「ありがとうございました。」


ドア。


閉まる。


カイ。


「……。」


スタッフ。


「……。」


受付。


「……。」


全員。


立ったまま。


無言。


店長。


売上。


見る。


「……。」


もう一度。


見る。


「……。」


カイ。


「どうしたんですか。」


店長。


顔。


上げる。


「過去最高。」


全員。


「……。」


店長。


「ぶっちぎり。」


スタッフ。


「……。」


店長。


笑う。


「明日も頑張ろう!」


スタッフ全員。


「嫌です!!」


⸻


翌日。


午前九時。


カイ。


店。


到着。


入口。


見る。


「……。」


人。


いる。


開店前。


なのに。


三人。


待っている。


カイ。


「……。」


一人。


近づく。


「すみません!」


「はい。」


「予約なしでもいけますか?」


「今日はたぶん――」


後ろ。


もう一人。


「あの、カイさんですか?」


「はい。」


「キャンセル出てません?」


「……。」


さらに。


「カイさん?」


カイ。


後ろ。


下がる。


シュウ。


『敵か?』


(客。)


『多いな。』


(怖い。)


『昨日の男より?』


(こっち。)


『そうか。』


⸻


道路。


反対側。


レン。


澪。


見ている。


レン。


「……。」


澪。


「……。」


レン。


「何だあれ。」


澪。


スマホ。


見る。


「カイの予約客です。」


「敵じゃないのか。」


「一般人です。」


「三人いるぞ。」


「予約が取れないようです。」


レン。


「……。」


店。


見る。


電話。


すでに。


鳴っている。


レン。


「なんであいつ。」


「戦闘より。」


一拍。


「エステの方で覚醒してんだよ。」


澪。


「本人にとっては理想的なのでは。」


「まあそうだけどよ……。」


⸻


その日の午後。


本部。


会議。


レン。


澪。


上司。


資料。


机。


【対象:カイ】


【能力変化について】


【戦闘後、異能干渉精度の上昇を確認】


【継続観察が必要】


上司。


「現在の対象は。」


レン。


「勤務中です。」


「能力訓練は。」


「してません。」


「では何を。」


レン。


「エステです。」


「……。」


「一日。」


資料。


見る。


「七人から九人くらい揉んでます。」


上司。


「……。」


澪。


「正確には揉むだけではありません。」


上司。


「そういう問題ではない。」


レン。


「俺もそう思います。」


上司。


「それで能力が成長していると?」


澪。


「はい。」


沈黙。


上司。


頭。


抱える。


「……好きにさせろ。」


レン。


「いいんですか。」


「下手に訓練させるより伸びているんだろう。」


「まあ。」


「なら。」


上司。


資料。


閉じる。


「エステを続けさせろ。」


⸻


同時刻。


カイ。


八人目。


施術。


「カイさん。」


「はい。」


「次の予約って。」


カイ。


「四週間後ですね。」


「四週間!?」


「すみません。」


客。


悩む。


「じゃあ。」


「四週間後で。」


「はい。」


予約。


入力。


シュウ。


『カイ。』


(何。)


『また一つ分かった。』


カイ。


手。


止まる。


(何が。)


『流れは。』


シュウ。


静かに。


言う。


『触れるほど鮮明になる。』


カイ。


客の背中。


見る。


以前は。


なんとなく。


だった。


今は。


どこから。


どこへ。


どう流れているのか。


輪郭が。


少しずつ。


形になっている。


七つ。


そのうち。


まだ。


最初の扉。


カイ。


手。


置く。


そして。


思う。


(……予約。)


『何だ。』


(五週間待ちになったらどうしよう。)


『そこを心配するのか。』


(店員増やす?)


『俺に聞くな。』


カイ。


今日も。


世界の秘密より。


予約表を見ていた。


――第九話・了

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