↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/39

爆発


『廻天』


第十話 呼び出し


予約爆発から。


二週間。


カイの生活は。


変わった。


午前十時。


施術。


十一時半。


施術。


十三時。


施術。


十四時半。


施術。


十六時。


施術。


十七時半。


施術。


十九時。


施術。


そして。


空いた時間。


電話。


「カイさん空いてますか?」


「来月です。」


「キャンセル待ちは?」


「十一人です。」


「十二人目お願いします。」


「はい。」


⸻


スタッフ。


受付。


電話。


取る。


「はい、ありがとうございます」


数秒。


「申し訳ありません、カイは――」


カイ。


見る。


受付。


指。


三本。


カイ。


首。


振る。


受付。


四本。


カイ。


首。


振る。


五本。


カイ。


頷く。


受付。


「最短で五週間後になります。」


電話。


『お願いします。』


受付。


切る。


カイ。


「取るんだ。」


受付。


「取るんだよ!!」


「怒らなくても。」


「誰のせいで予約表が来月まで真っ黒だと思ってるの!」


⸻


だが。


忙しくなったのは。


カイだけではない。


「カイさん無理なら誰でも!」


「今日入れる人いますか!?」


「とりあえずこの店で!」


結果。


他スタッフ。


全員。


ほぼ満席。


スタッフA。


「カイさん。」


「はい。」


「恨んでる。」


「なんで。」


「昨日九人。」


スタッフB。


「私八人。」


スタッフC。


「私、休憩十八分。」


カイ。


「それはちゃんと取って。」


「誰のせいだ!!」


⸻


シュウ。


『人気者は大変だな。』


(他人事だと思って。)


『俺は働いていない。』


(俺の身体だけど。)


『そうだった。』


(忘れんな。)


⸻


午後二時。


常連。


六十代女性。


「今日は腰お願い。」


「はい。」


カイ。


腰。


触れる。


「……。」


最近。


ここまでは。


普通。


普通ではないが。


慣れた。


触れれば。


分かる。


筋肉。


張り。


熱。


呼吸。


そして。


その奥。


流れ。


どこから来て。


どこで滞り。


どこへ抜けるのか。


今では。


かなり。


鮮明。


カイ。


「右脚もやりますね。」


「脚?」


「はい。」


「腰痛いのに?」


「たぶんこっちから。」


右脚。


触れる。


ふくらはぎ。


太腿。


股関節。


流れ。


辿る。


「……。」


シュウ。


『違う。』


(うん。)


『脚ではない。』


(分かってる。)


カイ。


手。


止める。


原因。


もっと。


奥。


でも。


今までなら。


ここまでだった。


感じる。


探す。


触れる。


それだけ。


なのに。


今日。


初めて。


その先が見えた。


「……?」


カイ。


瞬き。


する。


客の身体。


その中。


細い。


淡い。


線。


一本。


腰。


脚。


腹。


背中。


無数に。


繋がっている。


「……。」


『カイ。』


シュウ。


声。


変わる。


(見える。)


『何が。』


(流れ。)


今まで。


感覚だった。


それが。


今。


視覚になっている。


⸻


カイ。


目。


閉じる。


消える。


開く。


見える。


「……。」


客。


「どうしたの?」


「ちょっと待って。」


「何。」


「今すごい。」


「何が?」


「俺。」


「自分で言う?」


⸻


カイ。


線。


見る。


腰。


赤く。


いや。


色ではない。


そう感じる。


一本。


流れ。


途中。


妙に。


細い。


そこから。


別方向へ。


負担。


逃げている。


「……ここか。」


カイ。


腰ではなく。


腹部側。


直接ではない。


側面。


触れる。


軽く。


押す。


そして。


流す。


線。


動く。


詰まり。


抜ける。


次の瞬間。


客。


「……あ。」


カイ。


「どう?」


「ちょっと待って。」


起きる。


「まだ途中。」


「腰。」


「はい。」


身体。


捻る。


「……。」


もう一回。


「痛くない。」


カイ。


「よかった。」


「いやいやいや。」


客。


カイを見る。


「何したの?」


「……。」


カイ。


考える。


「エステ。」


『説明を諦めたな。』


(説明できない。)


⸻


施術終了。


客。


帰る。


カイ。


鏡。


見る。


「……。」


何も。


変わらない。


普通の目。


カイ。


手。


見る。


「シュウ。」


『ああ。』


「これ。」


『二つ目だ。』


カイ。


「七つの?」


『おそらく。』


一つ目。


《感流》


触れることで。


力の流れを感じる。


そして。


二つ目。


シュウ。


少し考える。


『《観流》』


カイ。


「名前ダサくない?」


『ではお前が考えろ。』


「流れが見える目。」


『俺の方がマシだ。』


「確かに。」


『腹立つな。』


⸻


夕方。


レン。


店へ。


入ってくる。


「カイ。」


受付。


「あ、予約ですか?」


レン。


「違う。」


スタッフ。


「あの肩の人だ。」


レン。


「誰が肩の人だ。」


カイ。


奥。


顔。


出す。


「レン。」


「話がある。」


「今無理。」


「重要だ。」


「あと四人。」


「……。」


レン。


時計。


見る。


十八時。


「四人?」


「うん。」


「何時に終わる。」


「二十二時くらい。」


レン。


「働きすぎだろ!」


受付。


「あなたからも言ってください!」


カイ。


「何で仲間になってんの。」


⸻


レン。


ため息。


「五分だけ。」


「三分。」


「交渉すんな。」


バックヤード。


二人。


カイ。


水。


飲む。


レン。


壁。


寄りかかる。


「本部から正式に呼び出し。」


カイ。


止まる。


「……。」


「前に話しただろ。」


「本部に連れてくか協議するって。」


「ああ。」


カイ。


「決まった?」


「決まった。」


レン。


真面目な顔。


「一度来い。」


カイ。


「嫌。」


「早ぇよ!!」


⸻


レン。


「話くらい聞け!」


「予約ある。」


「今日じゃねぇ!」


「いつ?」


「明日。」


「無理。」


「何で。」


「予約。」


「明後日。」


「予約。」


「明々後日。」


「予約。」


レン。


「いつ空いてんだよ!」


カイ。


スマホ。


予約表。


見る。


スクロール。


スクロール。


スクロール。


「……。」


レン。


「……。」


カイ。


「来月?」


レン。


「国家機関みたいな本部を一ヶ月待たせる気か!!」


「じゃあキャンセル料払って。」


「何で本部が払うんだよ!」


⸻


その時。


レン。


カイを見る。


「……。」


「何。」


「お前。」


近づく。


「目。」


カイ。


「目?」


「さっきから変だぞ。」


「どんな。」


「何か見てる。」


カイ。


「……。」


レン。


肩。


見る。


カイ。


無意識。


目。


切り替わる。


瞬間。


見える。


レンの中。


流れ。


以前より。


圧倒的に。


鮮明。


脚。


腰。


背中。


肩。


腕。


そして。


中心。


巨大な。


力。


循環。


している。


カイ。


「うわ。」


レン。


「何だ。」


「レン。」


「何。」


「めちゃくちゃ流れてる。」


「何がだよ。」


カイ。


近づく。


「ちょっと触っていい?」


「嫌だ。」


「見るだけ。」


「今見てんだろ。」


「すごい。」


「気持ち悪ぃな!」


⸻


カイ。


レンの右肩。


見る。


以前。


詰まっていた場所。


今は。


流れている。


だが。


《穿牙》を使う瞬間。


この流れが。


一ヶ所へ。


集中する。


カイ。


「……。」


レン。


「カイ?」


「これ。」


カイ。


指。


伸ばす。


触れない。


ただ。


見る。


そして。


ほんの少し。


意識。


する。


流れ。


揺れる。


レン。


「……!」


右腕。


見る。


「今何した。」


カイ。


「何も。」


「嘘つけ。」


「見てただけ。」


レン。


顔。


変わる。


「もう一回。」


「え。」


「やれ。」


カイ。


見る。


流れ。


意識。


集中。


右肩から。


腕。


少し。


押す。


触れていない。


なのに。


流れが。


僅かに。


動く。


レン。


後ろへ。


一歩。


「……。」


カイ。


「動いた。」


レン。


「お前。」


表情。


完全に。


仕事。


「これは本部に来い。」


「なんで。」


「能力が進化してる。」


「エステが上手くなった。」


「戦闘にも使えるだろ!」


「そっちはおまけ。」


「逆だろ!!」


⸻


ドア。


開く。


スタッフ。


「カイさん。」


「はい。」


「次のお客様。」


「あ。」


カイ。


立つ。


レン。


腕。


掴む。


「待て。」


「仕事。」


「今の話が先だ!」


「予約。」


「世界の話してんだぞ!」


カイ。


レンを見る。


普通に。


答える。


「こっちは待ってる人がいるから。」


レン。


「……。」


カイ。


腕。


外す。


「終わったら連絡する。」


施術室。


戻る。


レン。


一人。


残る。


「……。」


シュウ。


カイの内側。


静かに。


笑う。


『それでいい。』


(何が。)


『お前はお前でいろ。』


カイ。


次の客。


迎える。


「お待たせしました。」


⸻


午後十時十八分。


閉店。


カイ。


外。


出る。


「疲れた……。」


目の前。


車。


一台。


停まっている。


レン。


運転席。


「乗れ。」


カイ。


「……。」


助手席。


澪。


窓。


開ける。


「こんばんは。」


カイ。


「何してんの。」


澪。


「お迎えです。」


「どこへ。」


レン。


「本部。」


カイ。


「今日?」


「今日。」


「疲れた。」


「寝てろ。」


「明日十時から仕事。」


「それまでに返す。」


カイ。


「ほんと?」


レン。


「たぶん。」


「帰る。」


「待て!!」


澪。


スマホ。


確認。


「移動二時間十三分。」


カイ。


「往復?」


「片道。」


「帰る。」


レン。


「一回くらい来い!!」


カイ。


車。


見る。


レン。


見る。


澪。


見る。


ため息。


「明日の予約、遅刻したらレンのせいだから。」


「分かったよ!」


乗る。


ドア。


閉まる。


車。


走り出す。


カイ。


シート。


倒す。


「着いたら起こして。」


三十秒。


寝る。


レン。


「……。」


澪。


「寝ましたね。」


「こいつ本当に大丈夫か。」


「大物なのでは。」


「違う気がする。」


後部座席。


カイ。


熟睡。


その内側。


シュウだけが。


起きていた。


『本部、か。』


何故か。


胸の奥。


ざわつく。


知っている。


わけではない。


覚えている。


わけでもない。


それでも。


身体のどこかが。


そこへ行くことを。


嫌がっていた。


シュウ。


小さく。


呟く。


『……何だ、これは。』


車は。


夜の高速道路を。


走っていく。


カイが。


初めて。


自分を作った世界へ。


近づいていく。


――第十話・了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。