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『廻天』


第二十六話 十三


夜。


河原。


焚き火。


川の音。


焼けた肉の匂い。


キャンピングカー。


そして。


川の向こう。


男。


一人。


首元。


数字。


13。


「楽しそうだな。」


レン。


立ち上がる。


刀。


抜く。


澪。


《銀界》。


開く。


カイ。


トング。


持ったまま。


男を見る。


「……。」


十三。


笑う。


「次は、俺の実験。」


⸻


レン。


「十三号。」


「そう。」


「十二の仲間か。」


十三。


少し。


考える。


「仲間ではない。」


「同じ場所で作られただけ。」


カイ。


「十二は?」


「逃げた。」


「追わないの?」


「追う。」


十三。


カイを見る。


「その前に。」


「お前。」


⸻


カイ。


自分。


指す。


「俺?」


「うん。」


「今日はもう休みなんだけど。」


レン。


「敵に営業時間伝えんな。」


⸻


十三。


川へ。


入る。


ゆっくり。


渡る。


レン。


「止まれ。」


十三。


止まらない。


澪。


十三。


観察。


「レン。」


「何。」


「攻撃意思。」


「薄いです。」


レン。


「じゃあ何しに来た。」


十三。


岸。


上がる。


「実験。」


「何の。」


十三。


答える。


「確認。」


⸻


レン。


刀。


向ける。


「何を確認する。」


十三。


カイを見る。


「十二を。」


「壊したのが。」


「本当にこいつなのか。」


カイ。


「壊してないよ。」


レン。


「ほぼ壊しただろ。」


「レンが殴った。」


「お前が補助したからだろ!」


澪。


「正確には。」


「レンの攻撃出力をカイが最適化しました。」


レン。


「澪。」


「はい。」


「今は俺を庇え。」


「事実なので。」


⸻


十三。


三人。


見る。


「それ。」


レン。


「何。」


「それが知りたい。」


十三。


指。


レン。


澪。


最後。


カイ。


「どうして。」


「一人じゃない。」


⸻


沈黙。


カイ。


「友達だから?」


レン。


「違う。」


カイ。


「違うの?」


レン。


「今そこ掘るな!」


⸻


十三。


右手。


上げる。


レン。


構える。


澪。


「能力反応。」


十三。


掌。


開く。


異能。


広がる。


だが。


何も。


起きない。


カイ。


《観流》。


見る。


十三の能力。


外へ。


攻撃。


していない。


周囲。


触れている。


地面。


空気。


木。


川。


焚き火。


レン。


澪。


カイ。


すべて。


薄く。


なぞる。


カイ。


「……。」


十三。


地面。


触れる。


《残響》。


⸻


瞬間。


十三。


目。


閉じる。


この河原。


少し前。


レンが。


薪。


割った。


ほんの僅か。


《穿牙》。


残っている。


澪が。


安全確認。


した時。


《銀界》。


残っている。


そして。


カイ。


焚き火。


調整。


荷物。


運ぶ。


肉。


取る。


そんな中でも。


微細。


流れ。


使っている。


残っている。


十三。


目。


開く。


「……。」


レン。


「何した。」


十三。


拳。


握る。


レンの。


残響。


拾う。


一点。


力。


集める。


地面。


殴る。


ドン。


小さな。


穴。


レン。


表情。


変わる。


「俺の。」


十三。


手。


見る。


「似てるだけ。」


「完全には使えない。」


⸻


十三号。


固有能力。


《残響》。


能力を使った。


人。


場所。


物。


そこに残る。


異能の痕跡。


それを。


拾う。


読む。


短時間だけ。


自分の中で。


再現する。


ただし。


完全なコピーではない。


出力。


精度。


持続時間。


すべて。


本物より。


低い。


複雑な能力。


本人の身体感覚に。


深く依存する能力。


そういうものは。


ほとんど。


再現できない。


その代わり。


痕跡を追える。


⸻


澪。


「追跡型。」


十三。


「そう。」


レン。


「戦闘用じゃねぇな。」


「元々は。」


十三。


笑う。


「逃げた実験体を探すため。」


⸻


カイ。


少し。


顔。


変わる。


十二。


逃げた。


その後。


十三。


来た。


つまり。


十三は。


十二を。


回収するため。


作られた。


人間。


「十二を。」


「連れ戻すの?」


十三。


「命令は。」


「そう。」


「戻ったら?」


十三。


少し。


黙る。


「知らない。」


シュウ。


内側。


『殺される。』


カイ。


(分かる?)


『俺ならそうする。』


⸻


レン。


「で。」


「何でカイに来た。」


十三。


地面。


指。


なぞる。


「十二の残響。」


「途中で。」


「変わってた。」


「変わった?」


十三。


「切れてた流れが。」


「一部。」


「戻ってた。」


カイ。


黙る。


十三。


見つめる。


「十二に。」


「誰かが。」


「何かした。」


シュウ。


『知らん。』


カイ。


(まだ何も聞いてない。)


『先に言っただけだ。』


⸻


十三。


カイ。


近づく。


レン。


前。


入る。


「近い。」


十三。


止まる。


「触りたい。」


カイ。


「嫌。」


「能力を見るだけ。」


「嫌。」


「一秒。」


「嫌。」


レン。


「断られてんだろ。」


十三。


「じゃあ。」


少し。


考える。


「戦えば残る。」


レン。


刀。


上がる。


「上等。」


カイ。


「待って。」


レン。


「何。」


カイ。


肉。


見る。


「焦げる。」


「もう燃やせ!!」


⸻


十三。


突然。


動く。


速い。


レンの残響。


《穿牙》。


脚。


一点。


集中。


本物。


ほどではない。


それでも。


一気。


距離。


詰める。


レン。


刀。


振る。


十三。


避ける。


二撃。


三撃。


十三。


攻撃。


返さない。


触れる。


地面。


木。


レンの。


刀。


避けながら。


残響。


拾う。


「……。」


レン。


「こいつ。」


澪。


「戦っていません。」


「集めています。」


⸻


十三。


レンの。


直前の。


《穿牙》。


さらに。


拾う。


拳。


作る。


レン。


「やってみろ。」


十三。


放つ。


《穿牙――残響》。


ドン!!


レン。


刀。


受ける。


後ろ。


滑る。


三メートル。


十三。


自分。


拳。


見る。


「やっぱ。」


「弱い。」


レン。


「当たり前だ。」


「それ。」


「俺のだからな。」


十三。


少し。


笑う。


「そういうの。」


「いいな。」


⸻


澪。


銀眼。


動く。


十三。


次。


自分へ。


向く。


「澪。」


十三。


名前。


呼ぶ。


澪。


「……。」


「《銀界》。」


十三。


目。


閉じる。


残響。


拾う。


そして。


開く。


世界。


一気。


情報。


流れ込む。


音。


温度。


川。


振動。


呼吸。


心拍。


光。


空気。


火。


全部。


十三。


「――っ!」


即座。


解除。


膝。


つく。


レン。


吹き出す。


「ハハッ!」


十三。


鼻血。


出る。


「……何これ。」


澪。


「私の能力です。」


「頭痛い。」


「慣れているので。」


十三。


澪を見る。


「お前も変だな。」


「よく言われます。」


⸻


カイ。


十三。


見る。


「大丈夫?」


十三。


「敵に聞く?」


「鼻血出てるし。」


レン。


「優しくすんな!!」


⸻


十三。


立つ。


血。


拭く。


そして。


最後。


カイ。


見る。


「次。」


カイ。


「嫌。」


「まだ何もしてない。」


「だから嫌。」


⸻


十三。


地面。


触れる。


カイの。


残響。


拾う。


《感流》。


薄い。


《観流》。


ある。


《触流》。


ある。


《流転》。


ある。


《結流》。


強い。


《解流》。


強い。


他。


薄い。


十三。


眉。


寄る。


「変。」


カイ。


「何が。」


「七つ。」


「あるんだろ。」


「うん。」


「なのに。」


十三。


地面。


見る。


「残り方が全然違う。」


⸻


澪。


反応。


「どう違いますか。」


「よく使うもの。」


「使わないもの。」


「差がありすぎる。」


レン。


「そりゃそうだろ。」


十三。


首。


振る。


「普通は。」


「能力って。」


「使えば。」


「全体が馴染む。」


カイ。


見る。


「こいつは。」


「違う。」


十三。


指。


二本。


地面。


なぞる。


「結ぶ。」


「ほどく。」


「流れを整える。」


「この辺。」


「異常に身体へ馴染んでる。」


⸻


シュウ。


内側。


『編み物だな。』


カイ。


(エステじゃない?)


『両方だ。』


カイ。


「エステと編み物。」


レン。


「急に何の話だよ。」


⸻


十三。


顔。


上げる。


「面白い。」


レン。


「何が。」


十三。


カイ。


見る。


「完成してない。」


カイ。


「知ってる。」


十三。


少し。


驚く。


「なのに。」


「成功作って。」


「呼ばれてる。」


カイ。


「知らない。」


「七つ全部。」


「伸ばす気は?」


カイ。


少し。


考える。


「特にない。」


十三。


「……。」


レン。


笑う。


「こいつ。」


「本気でそういう奴だぞ。」


⸻


十三。


初めて。


十二。


言っていた。


言葉。


思い出す。


『あいつは。』


『こっちの想定通りに動かない。』


その意味。


少し。


分かる。


⸻


十三。


「じゃあ。」


「最後。」


カイ。


「まだやるの?」


「触らない。」


「何。」


十三。


三人。


見る。


レン。


前。


澪。


後ろ。


カイ。


真ん中。


「俺の実験。」


異能。


開く。


この場所。


残っている。


三人の。


残響。


全部。


拾う。


レンの。


攻撃。


澪の。


観測。


カイの。


流れ。


混ぜる。


十三。


身体。


軋む。


三つ。


同時。


再現。


「……っ。」


血管。


浮く。


レン。


顔。


変わる。


「おい。」


澪。


「負荷が高すぎます。」


十三。


笑う。


「知ってる。」


⸻


レン。


《穿牙》。


澪。


《銀界》。


カイ。


《流転》。


不完全。


三つ。


十三の中。


同時。


動く。


十三。


一歩。


踏み込む。


ドン!!


速い。


レン。


受ける。


十三。


視線。


澪の残響。


レンの動き。


読む。


横。


抜ける。


そして。


カイ。


目の前。


手。


伸ばす。


カイ。


《触流》。


十三の。


腕。


触れる。


流れ。


見る。


三つ。


無理やり。


詰め込んでいる。


絡まる。


壊れ始める。


カイ。


「……。」


反射。


指。


動く。


《解流》。


⸻


スッ。


十三の中。


三つ。


残響。


ほどける。


能力。


消える。


十三。


止まる。


「……。」


カイ。


「危ないよ。」


十三。


「……。」


「混ぜすぎ。」


シュウ。


『毛糸と同じだ。』


カイ。


「毛糸と同じ。」


十三。


「何が?」


レン。


「聞くな。」


⸻


十三。


しばらく。


カイを見る。


そして。


笑う。


「分かった。」


レン。


「何が。」


十三。


「十二が。」


「負けた理由。」


カイ。


「俺が強い?」


「違う。」


即答。


カイ。


「そう。」


十三。


指。


三人。


順番。


指す。


「三人だから。」


⸻


レン。


少し。


笑う。


澪。


銀界。


閉じる。


カイ。


「だよね。」


十三。


「悔しくない?」


「何が。」


「自分一人じゃ。」


「十二にも。」


「今の俺にも。」


「勝てない。」


カイ。


少し。


考える。


そして。


「別に。」


十三。


「……。」


「レンの方が。」


「殴るの上手いし。」


レン。


「殴るじゃねぇ。」


「澪の方が。」


「見るの上手い。」


澪。


「それは。」


「そうです。」


「俺。」


カイ。


手。


見る。


「整える方が得意だから。」


⸻


十三。


黙る。


理解。


できない。


敵組織。


教えられた。


実験体。


一体。


一能力。


一人で。


完成。


しろ。


足りないものは。


埋めろ。


弱点は。


消せ。


全部。


自分で。


できるように。


しろ。


なのに。


目の前。


成功作。


呼ばれている。


男。


普通に。


言った。


得意な奴がやればいい。


⸻


十三。


「……変。」


カイ。


「よく言われる。」


レン。


「俺も言ってる。」


澪。


「私も。」


カイ。


「みんな言うじゃん。」


⸻


十三。


川。


向こう。


戻る。


レン。


「帰るのか。」


「今日は。」


「回収は?」


「十二?」


「そう。」


十三。


少し。


止まる。


「探す。」


カイ。


「見つけたら。」


十三。


振り返る。


「命令通り。」


「連れ戻す。」


カイ。


「そっか。」


十三。


「止める?」


カイ。


「その時考える。」


十三。


笑う。


「また会おう。」


レン。


「来んな。」


澪。


「恐らく来ます。」


カイ。


「次は昼がいい。」


レン。


「客みたいに扱うな!!」


⸻


十三。


消える。


河原。


静か。


焚き火。


残る。


肉。


レン。


見る。


「……。」


黒。


完全。


炭。


カイ。


固まる。


「俺の肉。」


レン。


「敵よりそっちか。」


カイ。


「高かったのに。」


シュウ。


『最悪だ。』


澪。


一枚。


皿。


差し出す。


「こちら。」


「退避させました。」


カイ。


見る。


綺麗。


焼けた。


肉。


「澪。」


「はい。」


「好き。」


レン。


「俺は!?」


「何した?」


「戦っただろ!!」


⸻


キャンピングカー。


夜。


三人。


戻る。


レン。


寝る。


澪。


端末。


十三の。


情報。


本部。


送信。


カイ。


ベッド。


横。


《廻天》。


壁。


立てかける。


棚。


奥。


黒。


白。


銀。


まだ。


完成していない。


編み物。


一瞬。


白い糸。


光る。


カイ。


気づかない。


内部。


七つ。


そのうち。


いくつか。


静かに。


反応。


残り。


眠ったまま。


それでも。


何も。


困っていない。


カイ。


目。


閉じる。


「明日。」


「どこ行く?」


レン。


奥。


「寝ろ。」


「温泉。」


「寝ろ!!」


旅。


二日目。


終わり。


そして。


この先。


レンと澪には。


敵組織とは。


何の関係もない。


ごく普通の。


異能事件の依頼も。


当然。


入ってくる。


彼らの旅は。


少しずつ。


忙しくなる。


――第二十六話・了

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