旅
『廻天』
第二十五話 旅に出ます
翌朝。
本部。
会議室。
榊。
資料。
広げる。
「当面。」
「カイさんには。」
「本部管理下の。」
「保護施設へ――」
カイ。
「嫌。」
榊。
止まる。
「……。」
レン。
「始まった。」
澪。
「予想通りです。」
榊。
「まだ説明途中です。」
「嫌。」
「聞いてください。」
「本部でしょ。」
「はい。」
「山でしょ。」
「はい。」
「エステできない。」
「……。」
「毛糸しかない。」
シュウ。
『毛糸はあるのか。』
(そこ食いつくな。)
⸻
榊。
眼鏡。
直す。
「では。」
「警護付きの。」
「指定住宅を――」
「それも嫌。」
「なぜ。」
「また住所バレたら。」
「昨日と同じじゃん。」
榊。
止まる。
澪。
「一理あります。」
レン。
「お前はすぐこいつ側につくな。」
⸻
岳。
部屋。
隅。
缶コーヒー。
飲んでいる。
「じゃ。」
全員。
見る。
岳。
「動けば。」
カイ。
「……。」
「それだ。」
榊。
「岳さん。」
岳。
「固定されるから。」
「狙われる。」
「なら。」
「固定されなきゃいい。」
カイ。
立つ。
「キャンピングカー。」
レン。
「は?」
⸻
三時間後。
中古車販売店。
レン。
「何で。」
「こうなった。」
カイ。
キャンピングカー。
見る。
「これいい。」
澪。
スペック。
確認。
「常設ベッド。」
「冷蔵庫。」
「電子レンジ。」
「給水。」
「サブバッテリー。」
「ソーラー。」
カイ。
「風呂は?」
店員。
「シャワー付きもございます。」
「それ。」
レン。
「買う気満々じゃねぇか!!」
⸻
問題。
金。
カイ。
スマホ。
見る。
「……。」
クレジット。
利用可能額。
0円。
沈黙。
シュウ。
『……。』
カイ。
(誰のせい。)
『過去を責めても未来は変わらん。』
(お前だよ。)
⸻
結局。
本部。
安全対策。
移動拠点。
名目。
一部。
費用負担。
残り。
カイ。
「ローン。」
レン。
「世界救うかもしれない奴が。」
「キャンピングカーのローン組むなよ。」
カイ。
「世界救う予定ない。」
⸻
一週間後。
完成。
キャンピングカー。
白。
大型。
後部。
ベッド。
中央。
テーブル。
キッチン。
収納。
大量。
カイ。
満足。
「いいじゃん。」
シュウ。
『狭い。』
(十分でしょ。)
『毛糸はどこに置く。』
(……。)
⸻
積載。
開始。
毛糸。
一箱。
二箱。
五箱。
十箱。
レン。
「待て。」
さらに。
箱。
レン。
「待て待て待て。」
まだ。
出てくる。
澪。
数える。
「十八。」
「十九。」
「二十。」
レン。
カイを見る。
「お前これ全部家にあったの?」
「俺が買ったんじゃない。」
シュウ。
『共有財産だ。』
(借金も共有ね。)
『……。』
⸻
全部。
入らない。
当然。
入らない。
カイ。
「どうする。」
シュウ。
『作品を減らす。』
「捨てる?」
『殺すぞ。』
レン。
「今誰と喧嘩してんだよ。」
⸻
カイ。
完成品。
見る。
マフラー。
帽子。
手袋。
バッグ。
カーディガン。
ブランケット。
ぬいぐるみ。
大量。
「……売るか。」
シュウ。
沈黙。
『売る?』
「うん。」
『誰が買う。』
「知らない。」
「ネット。」
澪。
「既に。」
スマホ。
見せる。
「需要はあると思います。」
SNS。
【あのエステでもらえた手編み】
【販売してほしい】
【普通に欲しい】
【通販ないですか?】
カイ。
「……。」
シュウ。
『金になるのか。』
レン。
「食いついた。」
⸻
ショップ。
開設。
名前。
必要。
カイ。
「廻天。」
シュウ。
『却下。』
「なんで。」
『ダサい。』
「お前が言う?」
レン。
「毛糸屋シュウ。」
『殺すぞ。』
澪。
「THREAD。」
カイ。
「普通。」
澪。
「普通が一番です。」
⸻
結局。
ITO
糸。
それだけ。
⸻
商品。
撮影。
澪。
写真。
担当。
レン。
モデル。
「なんで俺。」
カイ。
「似合う。」
「このピンクのマフラーが!?」
「うん。」
澪。
撮影。
カシャ。
レン。
「撮るな!!」
⸻
販売開始。
五分。
通知。
ピコン。
ピコン。
ピコン。
ピコン。
カイ。
「売れた。」
シュウ。
『一つ?』
「十二。」
『……。』
十分。
「二十八。」
『……。』
三十分。
カイ。
「完売。」
沈黙。
シュウ。
『……作る。』
カイ。
「寝てる時は禁止。」
『……。』
「昼。」
『分かった。』
⸻
そして。
旅。
始まる。
⸻
海沿い。
キャンピングカー。
停める。
朝。
カイ。
コーヒー。
飲む。
海。
見る。
「いいな。」
シュウ。
『悪くない。』
助手席。
レン。
寝てる。
後部。
澪。
パソコン。
「本日の移動予定。」
「午前。」
「海岸沿い。」
「午後。」
「山間部へ。」
カイ。
「観光?」
「逃走経路です。」
「観光もしたい。」
「可能です。」
レン。
起きる。
「お前ら危機感どこ置いてきた?」
⸻
昼。
道の駅。
キャンピングカー。
横。
小さな。
テーブル。
並ぶ。
シュウ作品。
マフラー。
帽子。
小物。
手袋。
札。
『手編み作品 ITO』
カイ。
椅子。
座る。
客。
「これ作ったんですか?」
カイ。
「俺ではないです。」
「奥様?」
「違います。」
「お母様?」
「違います。」
「誰?」
カイ。
考える。
「中の人。」
客。
「?」
レン。
遠く。
「説明下手すぎんだろ!!」
⸻
売れる。
意外と。
売れる。
シュウ。
内側。
静か。
『……。』
カイ。
(嬉しい?)
『別に。』
(売上二万八千円。)
『次は帽子を増やす。』
(嬉しいじゃん。)
⸻
夕方。
河原。
カイ。
椅子。
座る。
夕日。
レン。
肉。
焼く。
澪。
野菜。
切る。
カイ。
何もしない。
レン。
「お前も働け。」
「今日運転した。」
「俺もした!」
シュウ。
『肉を焦がすな。』
レン。
「うるせぇ!」
「聞こえてないけど多分俺に言ってるだろ!」
⸻
夜。
焚き火。
静か。
カイ。
空。
見る。
「……。」
昨日まで。
店。
予約。
スタッフ。
客。
真紀。
美奈子。
毎日。
同じ場所。
今。
知らない。
土地。
キャンピングカー。
横。
毛糸。
山。
ほどけない。
問題。
いっぱい。
ある。
でも。
「これ。」
「結構好きかも。」
レン。
「何が。」
「旅。」
澪。
「逃亡生活です。」
「旅でいいじゃん。」
「警護任務です。」
「旅行。」
「任務。」
「旅行。」
「任務です。」
レン。
「どっちでもいい。」
⸻
その時。
澪。
止まる。
目。
銀。
変わる。
焚き火。
音。
川。
虫。
風。
その中。
一つ。
違う。
「……。」
レン。
即座。
立つ。
「来た?」
澪。
「はい。」
カイ。
ため息。
「今日くらい。」
「休ませてよ。」
暗闇。
声。
「楽しそうだな。」
三人。
見る。
川。
向こう。
男。
一人。
立っている。
知らない。
顔。
首。
数字。
十三。
レン。
刀。
手。
伸ばす。
澪。
《銀界》。
開く。
カイ。
立つ。
「十二は?」
十三。
笑う。
「逃げたよ。」
「お前らのおかげで。」
カイ。
「そう。」
「それで。」
十三。
一歩。
川。
踏む。
水面。
歪む。
「次は。」
「俺の実験。」
空気。
変わる。
レン。
「カイ。」
「うん。」
「今回は。」
「ちゃんと戦え。」
カイ。
「えー。」
「えーじゃねぇ!!」
⸻
キャンピングカー。
中。
テーブル。
上。
一枚。
編みかけ。
黒。
白。
銀。
シュウが。
ずっと。
隠していた。
大きな。
作品。
誰も。
気づかない。
その一本。
糸。
僅かに。
光る。
そして。
カイの内部。
五つ。
反応。
まだ。
眠る。
二つ。
何も。
起こらない。
⸻
十三。
笑う。
「見せてよ。」
「成功作。」
カイ。
首。
傾ける。
「その呼び方。」
手。
上げる。
レン。
横。
立つ。
澪。
反対。
立つ。
「嫌いなんだよね。」
旅は。
続く。
編む。
売る。
食べる。
寝る。
逃げる。
そして。
時々。
戦う。
世界で一番のんびりした逃亡生活が。
始まった。
――第二十五話・了




