帰宅
『廻天』
第十七話 帰る
午前六時三分。
本部。
会議室。
榊。
新しい資料。
机。
置く。
【《廻天》取扱説明・安全講習】
カイ。
見る。
「……。」
榊。
「では続いて。」
カイ。
立つ。
「ありがとうございました。」
榊。
「……。」
レン。
「……。」
澪。
「……。」
カイ。
《廻天》。
持つ。
「お世話になりました。」
頭。
下げる。
ドア。
向かう。
レン。
「待て。」
カイ。
止まる。
「何。」
「どこ行く。」
「帰る。」
「何で。」
「終わったから。」
榊。
「終わってません。」
カイ。
「能力説明。」
「終わりました。」
「はい。」
「じゃあ。」
「終わり。」
レン。
「お前の中でな!!」
⸻
榊。
資料。
持つ。
「《廻天》の安全講習が。」
「次回。」
「後検査。」
「次回。」
「協力者登録。」
「LINEで。」
「無理です。」
カイ。
「じゃあメール。」
「そういう問題ではありません。」
⸻
カイ。
時計。
見る。
午前六時五分。
「レン。」
「何だ。」
「帰るよ。」
「俺は残る。」
「じゃあ鍵。」
「何の。」
「車。」
レン。
「渡すわけねぇだろ!!」
カイ。
「じゃあ電車。」
スマホ。
見る。
「駅。」
検索。
「……。」
地図。
見る。
拡大。
縮小。
「……。」
レン。
腕。
組む。
カイ。
「駅ない。」
「山だからな。」
「タクシー。」
「来ねぇぞ。」
「呼んでみる。」
「本当に帰る気だな!?」
⸻
澪。
「カイ。」
「何。」
「十一時半から予約です。」
「そう。」
「ここから店舗まで。」
「約二時間十三分。」
「うん。」
「入浴。」
「四十分。」
「長ぇな。」
レン。
「黙って。」
澪。
続ける。
「朝食。」
「二十分。」
「移動。」
「着替え。」
「準備。」
「余裕時間を含めると。」
スマホ。
見せる。
「そろそろ出るべきです。」
カイ。
「ほら。」
レン。
「澪!!」
「事実です。」
⸻
榊。
こめかみ。
押さえる。
「カイさん。」
「はい。」
「あなたは現在。」
指。
《廻天》。
指す。
「本部の第一級管理対象を持っています。」
カイ。
刀。
見る。
「これ?」
キィン。
「はい。」
「返す?」
榊。
止まる。
レン。
止まる。
澪。
刀。
見る。
カイ。
柄。
離そうとする。
キィィン。
《廻天》。
震える。
カイ。
「嫌だって。」
榊。
「だから刀の意思を通訳しないでください。」
⸻
榊。
ため息。
「返却は。」
「現状。」
「推奨しません。」
カイ。
「じゃあ持って帰る。」
「しかし。」
「安全講習が。」
カイ。
「抜かなきゃいい?」
榊。
「……。」
「基本的には。」
「じゃあ抜かない。」
「いや、それだけでは――」
「人に貸さない。」
「当然です。」
「振り回さない。」
「当然。」
「お風呂に持って入らない。」
「……当然。」
「お客さんに使わない。」
榊。
「絶対に。」
カイ。
「分かった。」
「じゃ。」
歩く。
榊。
「講習終わってません!」
⸻
廊下。
カイ。
普通に。
歩く。
レン。
追う。
「おい!」
「何。」
「止まれ!」
「予約。」
「十一時半だろ!」
「準備ある。」
「だからって!」
「あと。」
カイ。
真顔。
「眠い。」
レン。
「……。」
一瞬。
納得しかける。
「いや待て!」
⸻
曲がり角。
職員。
二人。
カイ。
会釈。
「お疲れ様です。」
職員。
「あ、お疲れ様です。」
普通に。
通る。
レン。
後ろ。
「止めろ!」
職員。
「え?」
「そいつ止めろ!」
職員。
カイを見る。
《廻天》。
見る。
カイ。
「帰るだけです。」
職員。
「あ、はい。」
通す。
レン。
「通すな!!」
⸻
エレベーター。
カイ。
乗る。
レン。
走る。
「待て!」
扉。
閉じる。
レン。
ギリギリ。
手。
入れる。
開く。
乗る。
息。
切れる。
「お前……。」
カイ。
「レン。」
「何だよ。」
「何階?」
「知らずに乗ったのかよ!!」
⸻
一階。
到着。
カイ。
歩く。
レン。
後ろ。
澪。
いつの間にか。
いる。
カイ。
「澪。」
「はい。」
「帰る?」
「私はどちらでも。」
レン。
「じゃあ残れ!」
澪。
「カイの護衛があります。」
レン。
「……。」
カイ。
「じゃあ帰ろ。」
澪。
「はい。」
レン。
「何で俺が少数派なんだよ。」
⸻
外門。
朝。
空。
少し。
明るい。
岳。
椅子。
座っている。
缶コーヒー。
飲んでいる。
カイ。
歩いてくる。
岳。
時計。
見る。
「早いな。」
カイ。
「帰ります。」
岳。
「検査終わったのか。」
「だいたい。」
レン。
後ろから。
「終わってません!!」
岳。
「……。」
カイ。
「能力説明は終わりました。」
レン。
「安全講習!」
「次回。」
「後検査!」
「次回。」
「登録!」
「オンライン。」
岳。
カイ。
見る。
数秒。
「帰れば。」
レン。
「岳さん!?」
⸻
カイ。
「いいんですか。」
「帰りたいんだろ。」
「はい。」
「じゃあ帰れ。」
カイ。
「ありがとうございます。」
レン。
「門番が通すなよ!!」
岳。
「門番だから通すんだよ。」
「そういう意味じゃない!」
⸻
岳。
立つ。
カイ。
横。
通る。
その時。
岳。
《廻天》。
見る。
「抜くなよ。」
カイ。
「抜きません。」
「人に触らせるな。」
「はい。」
「寝る時。」
カイ。
「はい。」
「抱いて寝るな。」
カイ。
「しないです。」
レン。
「そこまで言わないと駄目そうなの何なんだよ。」
岳。
そして。
カイを見る。
「もう一つ。」
「何。」
岳。
表情。
少しだけ。
真面目。
「お前の七つ。」
カイ。
「はい。」
「技だと思うな。」
カイ。
止まる。
レン。
澪。
岳を見る。
「技にした瞬間。」
「使い方が狭くなる。」
「感じる。」
「見る。」
「触る。」
「流す。」
「止める。」
「繋ぐ。」
「ほどく。」
岳。
指。
《廻天》。
「全部ただの動作だ。」
「だから。」
「好きに使え。」
カイ。
「エステでも?」
岳。
「知らん。」
レン。
「許可すんなよ!」
岳。
「ただし。」
カイを見る。
「客を斬るな。」
「斬りません。」
「ならいい。」
⸻
門。
開く。
朝日。
差す。
カイ。
外。
出る。
深く。
息。
吸う。
「……。」
「帰れる。」
レン。
「そこまで嬉しいか。」
「うん。」
シュウ。
『俺も嬉しい。』
カイ。
「シュウも。」
レン。
「お前ら本当に似てきたな。」
⸻
駐車場。
カイ。
助手席。
乗る。
レン。
運転席。
「結局俺が運転かよ。」
澪。
後ろ。
乗る。
カイ。
シート。
倒す。
《廻天》。
横。
置く。
レン。
エンジン。
かける。
「おい。」
「何。」
「寝るなよ。」
「なんで。」
「話ある。」
「帰ってから。」
「お前絶対聞かねぇだろ。」
「聞く。」
「いつ。」
カイ。
目。
閉じる。
「今度。」
「今度っていつだよ。」
返事。
ない。
三秒。
レン。
「……。」
澪。
「寝ました。」
レン。
「早ぇよ!!」
⸻
二時間後。
車。
店の近く。
カイ。
目。
開く。
「……。」
レン。
「起きたか。」
カイ。
時計。
見る。
午前八時二十七分。
「間に合う。」
レン。
「よかったな。」
カイ。
「風呂入れる。」
「そこか。」
⸻
カイ。
自宅前。
降りる。
《廻天》。
持つ。
レン。
窓。
開ける。
「カイ。」
「何。」
「今日。」
「絶対。」
「刀を店に持ってくなよ。」
カイ。
「持ってかないよ。」
「絶対だぞ。」
「うん。」
レン。
「フリじゃねぇからな。」
「分かってる。」
車。
走る。
カイ。
家。
入る。
《廻天》。
置く。
シャワー。
浴びる。
着替える。
朝食。
食べる。
そして。
午前十時四十八分。
店。
到着。
受付。
カイを見る。
「カイさん!!」
「おはよう。」
「大変!」
「何。」
「今日。」
予約表。
見せる。
「全部埋まった!!」
カイ。
「……。」
スタッフ。
奥から。
叫ぶ。
「カイさん来た!?」
別スタッフ。
「助けて!!」
電話。
鳴る。
プルルルル。
カイ。
店内。
見る。
昨日まで。
旧世。
本部。
人工異能。
七つ。
廻天。
全部。
忘れる。
エプロン。
着ける。
「じゃ。」
腕。
まくる。
「仕事するか。」
シュウ。
内側。
『……楽しそうだな。』
カイ。
少し。
笑う。
(こっちの方が好き。)
そして。
十一時半。
最初の客。
来店。
「カイさん、お願いします。」
「はい。」
カイ。
手。
伸ばす。
七つ。
全部。
開いた。
初めての。
本業。
が。
始まった。
――第十七話・了




