廻せ
『廻天』
第十三話 本部
面談室。
机。
椅子。
三つ。
いや。
四つ。
カイ。
レン。
澪。
そして。
向かい側。
白衣の男。
さっき岳と話していた男。
細身。
眼鏡。
年齢。
四十前後。
書類。
数十枚。
机。
置く。
カイ。
見る。
「……。」
シュウ。
『多いな。』
(帰りたい。)
『それはずっと聞いている。』
白衣の男。
「改めまして。」
「本部研究管理部。」
「榊といいます。」
カイ。
「研究。」
榊。
「はい。」
「管理。」
「はい。」
「嫌な単語しかない。」
レン。
「口に出すな。」
榊。
「よく言われます。」
カイ。
「言われるんだ。」
⸻
榊。
資料。
開く。
「まず。」
「現在分かっていることだけ。」
「整理します。」
カイ。
「はい。」
「あなたは。」
一拍。
「自然発生型の異能者ではありません。」
カイ。
黙る。
レン。
澪。
表情。
変えない。
榊。
続ける。
「人工的な処置を受けています。」
「時期。」
「方法。」
「実施者。」
「目的。」
「すべて不明です。」
カイ。
「……。」
「分からないんだ。」
「はい。」
「本部なのに。」
レン。
「そこ責めんな。」
榊。
「むしろ。」
少し。
笑う。
「分からないから呼びました。」
⸻
カイ。
机。
見る。
「じゃあ。」
「俺が作られたっていうのも。」
「確定?」
榊。
「ほぼ。」
「何で。」
榊。
紙。
一枚。
出す。
「身体組織。」
「異能反応。」
「内部人格。」
「そして。」
「あなたの神経系に。」
指。
置く。
「自然には存在しない構造があります。」
カイ。
「……。」
シュウ。
内側。
『何だそれは。』
カイ。
(知らないって。)
榊。
「簡単に言えば。」
「あなたの身体には。」
「何かを。」
「通すための道が作られている。」
レン。
眉。
動く。
「道?」
澪。
「異能経路。」
榊。
「近いです。」
「ただし。」
「通常の異能者より。」
「はるかに多い。」
カイ。
「多いとどうなるの。」
榊。
「分かりません。」
カイ。
「また。」
「分からない。」
榊。
「はい。」
カイ。
「本部、意外と分かってないね。」
レン。
「お前な。」
榊。
「その通りです。」
レン。
「認めるんですか。」
榊。
「研究とはそういうものです。」
⸻
榊。
次。
資料。
「そしてシュウ。」
カイ。
少し。
姿勢。
変わる。
内側。
シュウ。
黙る。
「旧世由来。」
「少なくとも。」
「現代の人格ではない。」
「ただし。」
「本当に旧世のシュウ本人なのか。」
「再現された人格なのか。」
「記憶だけを移植された存在なのか。」
「判定できません。」
カイ。
「シュウ。」
『何だ。』
「偽物かもって。」
沈黙。
少し。
長い。
『そうか。』
カイ。
(気になる?)
『別に。』
(嘘。)
『黙れ。』
榊。
カイを見る。
「今。」
「シュウと会話を?」
「はい。」
「反応は。」
「別にって。」
榊。
メモ。
「強がる傾向。」
シュウ。
『おい。』
カイ。
笑う。
レン。
「何だ。」
「シュウ怒ってる。」
⸻
榊。
「そして。」
最後。
「あなたの能力。」
カイ。
手。
見る。
「流れ。」
「そうです。」
榊。
「現状。」
「確認できているのは。」
指。
一本。
立てる。
「感じる。」
二本。
「見る。」
三本。
「触れる。」
四本。
「流す。」
五本。
「止める。」
カイ。
「繋ぐは?」
榊。
「未確認。」
シュウ。
『だがある。』
カイ。
「シュウはあるって。」
榊。
「根拠は。」
カイ。
「編み物。」
沈黙。
榊。
「……。」
レン。
顔。
逸らす。
澪。
目。
閉じる。
榊。
「編み物。」
カイ。
「はい。」
榊。
ゆっくり。
メモ。
【根拠:編み物】
レン。
「書くんですか。」
榊。
「一応。」
⸻
カイ。
「七つあるんですよね。」
榊。
「可能性としては。」
「七つ。」
「ただ。」
「七つ目は。」
首。
振る。
「本部でも。」
「分かっていません。」
カイ。
「じゃあ。」
「七つあるって何で分かるの。」
榊。
少し。
間。
「それは。」
資料。
めくる。
「あなたの身体。」
「正確には。」
「異能経路。」
指。
図。
示す。
「七層に分かれているからです。」
カイ。
見る。
複雑。
全然。
分からない。
「……。」
榊。
「理解できました?」
「無理。」
「ですよね。」
レン。
「最初から簡単に言えよ。」
⸻
面談。
続く。
出生。
記憶。
家族。
幼少期。
初めてシュウの声を聞いた時期。
エステを始めた理由。
客への施術。
異能発現。
敵の襲撃。
美奈子。
カイ。
「美奈子さんは関係ないです。」
榊。
「念のため。」
「一般人です。」
「確認済みです。」
レン。
「めちゃくちゃ怪しかったけど。」
澪。
「一般人です。」
レン。
「まだ納得してない。」
⸻
そして。
一時間。
経過。
カイ。
机。
伏せる。
「長い。」
榊。
「まだ半分です。」
カイ。
顔。
上げる。
「帰る。」
レン。
「駄目。」
「明日仕事。」
「知ってる。」
「眠い。」
「知ってる。」
「風呂。」
「帰ったら入れ。」
「お腹空いた。」
榊。
ボタン。
押す。
「食事あります。」
カイ。
起きる。
「続けましょう。」
レン。
「現金すぎるだろ。」
⸻
十分後。
弁当。
カイ。
食べる。
シュウ。
『唐揚げか。』
(いる?)
『どうやって食う。』
(気分だけ。)
『いらん。』
カイ。
唐揚げ。
食べる。
「うま。」
榊。
「では。」
資料。
閉じる。
「ここから。」
「本題です。」
カイ。
箸。
止まる。
⸻
榊。
表情。
変わる。
少しだけ。
仕事。
ではなく。
組織。
その顔。
「カイさん。」
「はい。」
「本部に所属する意思はありますか。」
カイ。
即答。
「ないです。」
レン。
「早ぇ。」
榊。
「理由を聞いても。」
カイ。
「仕事あるから。」
榊。
「こちらを仕事にすることも。」
「嫌です。」
「何故。」
カイ。
考える。
「エステ好きなんで。」
沈黙。
榊。
少し。
カイを見る。
「……。」
「分かりました。」
レン。
「え。」
榊。
「無理に所属させません。」
レン。
「いいんですか。」
「本人の意思を無視して。」
「能力者を囲う方が。」
「後々問題になります。」
澪。
頷く。
「妥当です。」
カイ。
「じゃあ帰っていい?」
「それはまだです。」
「なんで。」
⸻
榊。
「所属は。」
「しなくていい。」
「ですが。」
「協力者登録。」
カイ。
「何それ。」
「異能事件発生時。」
「必要に応じて。」
「本部から連絡します。」
カイ。
「出れる時だけ?」
「はい。」
「仕事中は?」
「原則呼びません。」
レン。
「原則?」
榊。
「緊急時は別です。」
カイ。
「予約キャンセル料。」
レン。
「まだ言うか。」
榊。
「検討します。」
レン。
「検討するんですか!?」
カイ。
「じゃあ考える。」
レン。
「そこなんだよなぁ。」
⸻
澪。
「護衛については。」
榊。
「当面継続。」
カイ。
「え。」
レン。
「え。」
澪。
「妥当です。」
レン。
「俺また?」
榊。
「交代制です。」
レン。
「ですよね。」
カイ。
「また店の前立つの?」
レン。
「嫌そうに言うな。」
カイ。
「お客さん増える。」
「俺のせいじゃねぇ。」
⸻
榊。
「そして。」
「もう一点。」
空気。
少し。
変わる。
「敵。」
「今回死亡した男。」
カイ。
表情。
戻る。
榊。
「遺体から。」
「僅かですが。」
「情報が取れました。」
レン。
「何が。」
榊。
一枚。
写真。
出す。
黒い。
小さな。
結晶。
「体内。」
「心臓付近。」
「埋め込まれていました。」
澪。
「崩壊装置?」
榊。
「おそらく。」
カイ。
見る。
「これが殺した?」
「はい。」
シュウ。
『……。』
カイ。
手。
握る。
榊。
「そして。」
「この結晶に。」
「旧世文字。」
刻まれている。
写真。
拡大。
文字。
映る。
カイ。
読めない。
レン。
読めない。
澪。
読めない。
シュウ。
『……。』
カイ。
(シュウ?)
返事。
ない。
(読める?)
『……読める。』
カイ。
目。
開く。
「シュウ読めるって。」
全員。
止まる。
榊。
「何と。」
カイ。
(何て書いてある。)
シュウ。
沈黙。
長い。
そして。
『廻せ。』
カイ。
「……。」
レン。
「何だ。」
カイ。
写真。
見る。
「廻せ。」
榊。
表情。
消える。
澪。
「意味は。」
カイ。
「そのまま。」
シュウ。
『いや。』
カイ。
(違う?)
『続きがある。』
カイ。
「続き?」
榊。
「何です。」
シュウ。
記憶。
探す。
文字。
読む。
『廻せ。』
『七つが。』
一拍。
『一つになるまで。』
カイ。
静か。
復唱。
「七つが。」
「一つになるまで。」
部屋。
沈黙。
レン。
「……。」
澪。
「七つ。」
榊。
カイを見る。
「能力と。」
「関係がある。」
カイ。
「たぶん。」
シュウ。
『いや。』
カイ。
(何。)
『これは。』
シュウ。
声。
少し。
震える。
『俺も知っている。』
カイ。
「……。」
「シュウ。」
内側。
暗い。
その奥。
一瞬。
映像。
糸。
大量。
黒。
白。
血。
誰か。
叫ぶ声。
そして。
巨大な。
輪。
シュウ。
息。
飲む。
『……何だ。』
カイ。
(思い出した?)
『違う。』
(じゃあ。)
シュウ。
苦しそうに。
『思い出しかけた。』
⸻
その瞬間。
検査室。
遠く。
警告音。
鳴る。
ピ――。
榊。
顔。
上げる。
「何だ。」
通信。
入る。
『榊さん。』
『前検査データに異常です。』
榊。
「今?」
『はい。』
『さっきまで出ていなかった反応が。』
カイ。
レン。
澪。
見る。
榊。
「どこ。」
通信。
一拍。
『カイ本人ではありません。』
レン。
「……。」
澪。
目。
細める。
『内部人格でもありません。』
カイ。
止まる。
シュウ。
『……。』
通信。
続く。
『もっと深部です。』
榊。
「岳さんが言っていた。」
カイ。
「……何を。」
レン。
「お前ら二人じゃないって。」
カイ。
「じゃあ何。」
誰も。
答えない。
榊。
立つ。
「後検査。」
「予定を変更します。」
カイ。
嫌な顔。
「長くなる?」
レン。
「そこ気にしてる場合か!!」
榊。
真剣。
「カイさん。」
「はい。」
「もう一度。」
「あなたの中を調べます。」
カイ。
黙る。
そして。
時計。
見る。
午前三時四十八分。
「……。」
「明日の予約。」
レン。
「もう諦めろ!!」
――第十三話・了




