検査
『廻天』
第十二話 聞いてない
門。
閉まる。
カイ。
振り返る。
「……。」
巨大な門。
完全に。
閉じた。
カイ。
「レン。」
「何だ。」
「帰れなくなった。」
「帰れるわ!」
「門閉まった。」
「開く!」
「岳さん怖い。」
「それは分かる。」
岳。
門の向こう。
「聞こえてるぞ。」
レン。
「……行くぞ。」
⸻
本部。
外から見た印象とは。
まるで。
違った。
古い。
建物。
石。
木。
長い廊下。
その間に。
普通に。
自動ドア。
監視カメラ。
端末。
白衣。
制服。
スーツ。
刀を持つ者。
何も持たない者。
カイ。
歩く。
「……。」
『変な場所だな。』
シュウ。
(お前が言う?)
『俺より変だ。』
(それは結構だね。)
⸻
受付。
女性。
「カイさんですね。」
「はい。」
「こちらへ。」
紙。
渡される。
カイ。
見る。
一枚。
二枚。
三枚。
四枚。
「……。」
レン。
「書け。」
カイ。
「多い。」
「書け。」
氏名。
年齢。
住所。
職業。
既往歴。
異能歴。
覚醒時期。
異能発現時の状況。
旧世人格との接触時期。
人格交代の有無。
人格交代後の記憶。
カイ。
止まる。
「レン。」
「何。」
「異能歴って何。」
「そのままだ。」
「ない。」
「あるだろ。」
「最近。」
「じゃあ最近って書け。」
カイ。
書く。
【最近】
レン。
「雑!!」
⸻
次。
【内部人格の名称】
カイ。
【シュウ】
【内部人格との関係】
カイ。
止まる。
「……。」
シュウ。
『何だ。』
(関係。)
『知らん。』
(友達?)
『違う。』
(同居人。)
『身体の中だぞ。』
(居候。)
『誰が居候だ。』
カイ。
書く。
【居候に近い】
レン。
横から見る。
「怒られるぞ。」
「誰に。」
『俺にだ。』
「シュウ。」
⸻
受付。
書類。
受け取る。
確認。
「……。」
一ヶ所。
止まる。
「内部人格との関係……居候。」
カイ。
「はい。」
女性。
レンを見る。
レン。
「俺に聞かないでください。」
⸻
そして。
前検査。
カイ。
「……前?」
職員。
「はい。」
「後もある?」
「あります。」
カイ。
レンを見る。
「聞いてない。」
レン。
「今言った。」
「来る前に。」
「言ったら来なかっただろ。」
「帰る。」
「だから!!」
⸻
検査室。
白い。
広い。
中央。
椅子。
機械。
カイ。
「病院?」
澪。
「似たようなものです。」
「採血ある?」
「あります。」
「帰る。」
レン。
「注射嫌いなのかよ!」
「嫌い。」
「敵に黒い針刺されてただろ!」
「あれも嫌だった。」
「そりゃそうだろ!」
⸻
身長。
体重。
血圧。
体温。
心拍。
採血。
瞳孔。
反射。
握力。
聴力。
視力。
普通。
ここまでは。
普通。
カイ。
少し。
安心。
「健康診断じゃん。」
職員。
「次、異能負荷検査です。」
カイ。
「……。」
レン。
目。
逸らす。
カイ。
「健康診断じゃないじゃん。」
⸻
腕。
センサー。
付ける。
胸。
付ける。
頭。
付ける。
指。
付ける。
カイ。
コードだらけ。
「……。」
シュウ。
『面白い姿だな。』
(代わる?)
『断る。』
(ずる。)
⸻
職員。
「まず通常状態。」
端末。
見る。
「異能反応……微弱。」
「次。」
「《感流》を。」
カイ。
「名前決定なの?」
レン。
「今そこ気にすんな。」
カイ。
目の前。
職員の腕。
触れる。
流れ。
感じる。
機械。
ピピピピ。
職員。
「上昇。」
別。
職員。
記録。
「干渉なし。」
「正常。」
カイ。
「正常なんだ。」
「現時点では。」
「現時点?」
「次。」
⸻
《観流》。
カイ。
目。
開く。
職員。
見る。
流れ。
見える。
機械。
音。
変わる。
ピ――。
職員。
「……。」
カイ。
「何。」
誰も。
答えない。
レン。
「どうした。」
検査官。
画面。
見る。
「出力は低い。」
「ただ。」
「精度が異常に高い。」
カイ。
「エステしてるから?」
検査官。
「……エステ?」
レン。
「そこ説明すると長いです。」
⸻
次。
干渉。
弱。
対象。
特殊素材。
カイ。
触れる。
何も。
感じない。
「無理。」
「次。」
植物。
触れる。
「……ちょっと分かる。」
記録。
次。
動物。
小型。
検査用。
カイ。
「かわいい。」
レン。
「検査しろ。」
「嫌がってる。」
「触るだけだ。」
カイ。
手。
伸ばす。
動物。
逃げる。
「嫌だって。」
検査官。
「……。」
レン。
「……。」
澪。
「……。」
カイ。
「本人の同意大事じゃない?」
検査官。
初めて。
困る。
⸻
そして。
最後。
検査官。
「内部人格確認。」
カイ。
「シュウ?」
「はい。」
空気。
少し。
変わる。
レン。
壁。
離れる。
澪。
姿勢。
変わる。
カイ。
「何でみんな構えるの。」
レン。
「念のため。」
「失礼じゃない?」
『失礼だな。』
「シュウも。」
「いいから。」
検査官。
「人格交代は可能ですか。」
カイ。
「できます。」
「では。」
「シュウへ交代してください。」
カイ。
「……。」
シュウ。
『嫌だ。』
カイ。
「嫌だって。」
検査官。
「……。」
レン。
「シュウ。」
カイ。
「レンが呼んでる。」
『嫌だ。』
「嫌だって。」
レン。
「本人と喋らせろ!!」
⸻
十分後。
説得。
カイ。
(出て。)
『嫌だ。』
(すぐ終わる。)
『岳がいる。』
(ここにはいない。)
『この建物にいる。』
(怖いの?)
沈黙。
カイ。
(怖いんだ。)
『違う。』
(怖いんだ。)
『黙れ。』
(出てくれたら言わない。)
『……。』
カイ。
ニヤ。
レン。
「何笑ってんだ。」
「交渉成立。」
⸻
チェンジ。
カイ。
頭。
下がる。
機械。
一瞬。
静か。
そして。
顔。
上がる。
シュウ。
「……。」
検査官。
画面。
見る。
次の瞬間。
ピーーーーー。
警告。
レン。
「……。」
澪。
「……。」
シュウ。
機械。
見る。
「壊れたか?」
検査官。
「いえ。」
端末。
操作。
「出力。」
「カイと。」
「ほぼ変わりません。」
レン。
「……え?」
シュウ。
「そうだろうな。」
レン。
「お前もっと強かっただろ。」
シュウ。
「技術の差だ。」
一拍。
「俺は別に強くない。」
静か。
カイ。
内側。
(自分で言った。)
『黙れ。』
⸻
検査官。
「ただし。」
画面。
切り替える。
「異能運用効率。」
数字。
跳ねる。
「カイの。」
一拍。
「約十一倍。」
レン。
「は?」
澪。
目。
細める。
シュウ。
「……。」
検査官。
「同じ身体。」
「同じ出力。」
「同じ異能。」
「なのに。」
「使い方だけが。」
「まるで違う。」
シュウ。
少し。
笑う。
「そりゃそうだ。」
「俺は。」
手。
見る。
「生き残るために使ってたからな。」
⸻
検査。
終了。
カイ。
戻る。
「疲れた。」
レン。
「何もしてねぇだろ。」
「採血した。」
「まだ言ってんのか。」
職員。
「では。」
書類。
見る。
「次は面談です。」
カイ。
止まる。
「……。」
「その後。」
「能力説明。」
カイ。
「……。」
「本部側からのお話。」
「……。」
「必要に応じて実技。」
「……。」
「終了後。」
一枚。
めくる。
「後検査です。」
カイ。
「レン。」
「何だ。」
「聞いてない。」
「知ってる。」
「帰る。」
「まだ本題入ってねぇよ!!」
⸻
廊下。
その様子。
少し離れた場所から。
岳。
見ている。
横。
白衣の男。
「どうです。」
岳。
缶コーヒー。
飲む。
「弱い。」
「カイが?」
「ああ。」
「シュウは。」
「ちょっとマシ。」
白衣。
「では問題なし?」
岳。
黙る。
検査室。
見る。
「いや。」
「問題は。」
「あの二人じゃない。」
白衣の男。
「……?」
岳。
目。
細める。
「前検査で拾えなかった。」
「もっと奥。」
一拍。
「後検査まで見ろ。」
そして。
カイ。
廊下。
声。
「明日の予約間に合わなかったらどうすんの!」
レン。
「まだ言ってんのか!!」
岳。
「……。」
缶コーヒー。
飲む。
「緊張感ねぇな。」
――第十二話・了




