【番外編】 第66.5話 困惑のダンスホール
66話のあとがきに書こうとしたのですが、ちょっと長くなったのとふざけてしまっていたので番外編に。
作者、たまにこういうネタをぶっ込みます。
アロがクロスと踊っている様子を、ボウガが離れた所からハラハラした気持ちで見守っていた。
しかし、その背後。
「……どうしましょう……困りました」
「えぇ、実は私も…………」
「皆さま……仰りたいことがあるのなら、どうぞお話になって…………」
ダリアの友人王女たちが集まって、アロたちをチラチラと見ながら顔に困惑の色を浮かべている。
「私……こんなことを言ってしまったら、皆さんに嫌われるかも……と思っているのです」
「そんな! どうぞ、お話になって!」
「そうよ。溜め込んではいけない!」
仲間ひとりが涙を零しながら告白する。
「実は、私………………アロ様とクロス様が踊っているのを見て『素敵』と、正直うっとりしてしまいましたのっ!!」
「「「っっっ……!?」」」
「だ、だって! お二人とも顔が良いのですものっ!! 見目の良い殿方同士が手を取って、お互いに見つめ合いながらステップを踏む…………こんな、普段なら見られない禁断の園のような光景…………我が身が喜びに打ち震えておりますわっっっ!!」
「「「っっっ!!!!」」」
一言漏らせば、言葉は怒涛の如く流れてくる。
他の王女たちは、ただただその言葉に気圧され、心から叫びを吐露した彼女を見詰めて立ち尽くす。
その視線に気付いて、彼女は一気に赤面した。
「はっ……!! 嫌ですわ……私ったら……ど、どうかお忘れくださいまし!! 本当に申し訳ございません!!」
「な、何を仰るの!? お泣きにならないで!」
「そうですわ! 謝る必要はございませんわ!」
「それを言われてしまうと…………私もです!」
「ええ!! 私も、殿方同士のダンスに胸を熱くさせてしまっていますわ!!」
「み、皆さまっ……私のこと嫌いになりませんの!?」
「まさか!? 私たち友人ではありませんか!!」
「「「そうです!!」」」
ひとりを囲んで、王女たちががっしりと肩を抱き合う。そこには一体感しかない。
「で、ですが……こんなこと、アロ様をお慕いするダリア様がお聞きになったら…………」
「それは…………黙っておきましょう?」
「ダリア様とも、ご友人でありたいですもの……」
「仕方なし、ですわ……」
ダリアにはこの状況での気持ちは黙っておこう。
そう誓って、この話を終わりにしようとした時だった。
「あら? 皆さま、どうなさいました?」
「「「っ!?」」」
「……アロ様? あら、いらっしゃらない?」
思っていたよりも早く、ダリアが化粧を直して戻ってきたのだ。きっと、アロが休んでここにいるだろうと急いだのだろう。
「ど、どうしましょう……」
「ここは正直に……」
「事実だけ……」
「…………あの、ダリア様……」
アロがいないことに気付いたダリアに、王女たちはそっとホールの中央を指差す。
「え? まぁ!! アロ様が『魔人』と!?」
「「「………………」」」
ダリアは両手で口元を押さえ、踊っているアロたちを見ながらふるふると肩を震わせた。
「そんな……『魔人』の殿方と踊るなんて……アロ様には耐え難いことですのに…………」
ダリアの台詞に王女一同ハッとする。
見た目の良さで歓喜して、皆で盛り上がってしまったことに罪悪感が湧いてきた。
「わたくしはっ……どうすれば……!?」
「「「ダリア様!?」」」
ダリアがその場に崩れ落ちる。胸を押えて苦しそうに顔を歪める様に、王女たちは慌ててダリアを囲んだ。
「大丈夫ですか!?」
「お医者様をっ……!?」
「だ、大丈夫ですわ。違うのです……わたくし……」
慌てる王女たちにダリアは苦悶の表情で言った。
「アロ様が殿方と踊っていらしてる姿……『ちょっと良いのでは?』とトキメイてしまったのです!!」
「「「えっっっ!?」」」
ダリアの思わぬ言葉に王女たちは硬直する。
「もしアロ様が他の女性と踊っていたら嫌なのに…………いざ、殿方と一緒にいるのを見たら『あら、これは目の保養だわ』みたいに考えてしまいましたのっ!!!!」
「「「〜〜〜〜っっっ!!!!」」」
「わたくし……わたくしは、なんて考えを……!!」
がしぃいいいんっ!!
友人王女たちが、しゃがんでいるダリアにまるでスクラムを組むように抱きついた。
「えっ!? み、皆さま!?」
「ダリア様、私たちもお考えに賛同致します!!」
「ダリア様!! 私たちにもぜひ語らせてください!!」
「一緒にチェリ様をお支え致します!!」
「ダリア様の友だということ、誇りに思います!!」
「一生、あなた様と共におります!!」
「皆さま……そこまで、わたくしのことを……!!」
ダリアと王女たちは、お互いにしっかりと友情を深めることとなった。
………………
――――う〜ん、どうしよう……この状況。
ホールにいるアロのことも心配だが、自分の背後で起きた出来事を一部始終聞いてしまったボウガはいたたまれない気持ちになっていた。
そばに居た護衛の騎士も、額にびっしり汗をかいて絶対に振り向かないように務めているようだった。
――――女子特有の行動なのかな…………これ、絶対にアロに言っちゃダメな話だよね?
後でチェリに意見を聞いてみようかと思ったが、この話をチェリが当たり前のことだと疑問に思わなかったら怖い気がしてきた。
――――よし、聞かなかったことにしよう。
ボウガはもうこの話題は忘れようと決めた。
この後、ホールでの異常事態に本当に忘れたが、王女たちが今まで以上に仲良くなったことは事実として残っていた。
淑女たちは腐ネタに敏感。
護衛騎士はたまにネタにされていたのかも。
ボウガだけよくわかっていません。




