第47章(完結)
知るか。俺は和木坂が標準体重になるまで歌を休ませるつもりだ。それが、おまえらの所為で、見ろ。もう和木坂は人目に晒されることを想像して吐きそうになってる。
「……今は要らん。和木坂は暫く休ませる」
「ま、まあ?たっ滝本君、よおく考えて。デビューなんてことになれば、我が校の人気も」
「知るか。和木坂、ほら行くぞ。大丈夫か」俺は和木坂の手を引いて入口のほうへ向かった。
「ちょっと、待ちなさい。こ、これっ黒い人、あの二人を捕まえてっ」
呆けが。ばばあが余計なことを叫んだ所為で、大男二人が早足でこちらへ向かって来た。
「和木坂、逃げるぞ」俺は怯える和木坂を脇に抱えて走り出した。
廊下を走り、階段を駆け下りる。俺は速いが、黒服も結構本気で追ってきている。
俺は近くで屯していた学校の奴らに「おい、あの黒服を足止めしろ」と叫んだ。十人くらい「はい」「押忍」「了解」などと言いながら指示に従い黒服に向かって行ってくれた。
背後で怒声とやたら大きな音が響いていた。別に殴れとは言わなかったはずだが。
俺は走りながら、ぶら下がっている和木坂に訊いた。
「和木坂、今日は何が食いたい?」
「え?あ、あ、あのコンビニの、お弁当かな。神社で」
「またコンビニか。いつも食ってるだろ」
「だ、だって……二人きりがいいんだもん」
そうだ。この歌声は俺だけのものだ。俺は満足だ。しかし、和木坂はそれでいいのか?
「なあ、元気になったら、あいつと契約してやるか?」
「……滝本くんが、そうしたいなら。ずっと、私のそばにいてくれるなら」
下駄箱の前。辺りには誰もいない。黒服はもう追って来ないようだ。ラストエンペラーの命令は、なかなか効力があるらしい。
俺は一息ついてから、誰にも見つからないよう隅に隠れ、抱き寄せた和木坂の唇にキスをした。少し強引に。
(終)
読んでくださり、ありがとうございます!
とにかく「青春」っていう要素をごちゃ混ぜにして煮たような作品だ、と自分では思ってます。
主人公が不器用だけに、一人称の文体も荒っぽいんですが……それも楽しんでいただけたのであれば幸いです!




