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第39章
「山田、スガ、頼むぞ」
「了解っ」
「滝本君、俺はさ、このスリーピースが最高だって信じてるよ」
「……おし。じゃあ二番目は俺、滝本竜だ。曲はシングトゥミー」
言い終わるが早いか、菅山がスティックで合図してイントロに入る。いつも通りの完璧なスタート。
和木坂と歌った神社の裏。
俺と和木坂は最初は全く違う生き物に思えたが、それは違った。俺と同じだった。和木坂に自分を肯定して欲しくて軽音に誘った。だけどそれも間違いだった。
俺と和木坂、二人だけでいい。一緒に歌ってるだけで幸せなんだ。俺が最初、和木坂を嫌っていたのは、和木坂がいつかの俺だったから。
この曲が終わったら、和木坂に謝ろう。もう世界中の誰にも聴かせようとしたりしない。だからこれからは俺だけの為に歌ってほしいと言おう。
最後は少し疲れたが、歌い切った。今までこの曲をやった中で最高の出来だと思えた。
客は熱狂。俺はギターを置いて手を振り引っ込む。
「和木坂」
呼びかけた時、和木坂は立っていた。背中も首も曲がってない。真っ直ぐに。
「滝本くん、私、もう大丈夫。今は、今だけは歌えると思う」




